第10回:スコアアップ&劣勢挽回のチャンス! ゲームがますます楽しくなるボーナスステージ:なぜ、人はゲームにハマルのか?(4/4 ページ)
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の10回目は、「ボーナスステージ」の演出の妙について。
お次は、1987年にUPLが発売したアーケードゲームの「忍者くん 阿修羅ノ章」。こちらは決まったステージごとに、マップが極端に狭くてなおかつ敵がほとんど出現しないボーナスステージが登場するようになっています。ここで制限時間内にゴール地点に到達すると、ボーナス得点に加えて主人公の忍者くんに新しい武器がプレゼントされる嬉しいご褒美があるので、プレイヤーのモチベーションをさらに高める効果があります。
また、プレイヤーがもしクリアするのが難しいなと判断した場合は、スタート地点のすぐ近くにある鳥居に入って「あきらめる」を選択すると、ボーナス面をパスして次のステージと進めるという救済措置も用意されています。また途中で敵の攻撃を受けたり、制限時間がゼロになった場合は前述の「アイスクライマー」などとは違ってミスとみなされ、忍者くんのストックが減ってしまいます(このへんのシビアさはやはりアーケードゲームならではですね……)。
また、SNK(現:SNKプレイモア)が1992年に発売した対戦格闘ゲーム「龍虎の拳」には、主人公のリョウ・サカザキが超必殺技をマスターするためのボーナスステージ(その名もズバリの「超必殺技伝授」)が存在します。ここで指示されたとおりに複雑なコマンド入力に繰り返し成功すれば、ボーナス点とともに次のステージから強力な奥義を使って攻撃できる特典が得られます。
※Wiiバーチャルコンソール版を使用
(C)2008 SNK PLAYMORE CORPORATION All rights reserved.
(C) D4 Enterprise,inc.
このように、数多くのバリエーションが存在してプレイヤーを楽しませてくれるボーナスステージですが、時代が経過するごとにアーケードゲームを筆頭として目にする機会がどんどん減っていった感があります。理由は前述したように、プレイヤーがどんなに操作を誤ってもミスにならないサービスを提供すると、プレイ時間が必然的に延びて商売上の問題が生じるからです。また、家庭用ではRPGやMMO、あるいはソーシャルゲームのようにスコア表示が最初から存在しない作品が、昔に比べてはるかに多くなっていることも大きな要因でしょう。
1991年にカプコンが発売した、対戦格闘ゲームの代名詞的な存在である「ストリートファイターII」シリーズは、シリーズの途中からボーナスステージが登場しなくなった好例です。「ストII」シリーズ初期の作品では、CPU戦において決まった人数を倒すごとにボーナスステージが登場するようになっていましたが、1993年に発売されたシリーズ第5弾の「スーパーストリートファイターIIX」からはボーナス面が姿を消してしまいました(※)。これはアーケードゲームであるがゆえのプレイ時間対策であることと、プレイヤーがハイスコアよりもプレイヤー同士で対戦したときの勝敗をより重要視するようになったため、その結果ボーナス面を入れておく必然性がなくなったことが原因ではないかと考えられます。
※PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」を使用
(C)CAPCOM CO., LTD. 2005,2006
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.
それでは、今回はここまで。また次回もお楽しみに!
今回登場したソフトはココで遊べます!
- 「マリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール
- 「ギャラガ」:PS用ソフト「ナムコミュージアムvol.1」、Wiiバーチャルコンソール
- 「ジャイラス」:PS用ソフト「コナミ80'sアーケードギャラリー」
- 「エクセリオン」:Wiiバーチャルコンソール
- 「アイスクライマー」:Wiiバーチャルコンソール
- 「アーガス」:PS用ソフト「ジャレココレクション vol.1」
- 「ムーンクレスタ」:PS2用ソフト「オレたちゲーセン族 ムーンクレスタ」
- 「忍者くん 阿修羅ノ章」:Wiiバーチャルコンソール(※ファミコン版)
- 「龍虎の拳」:Wiiバーチャルコンソール
- 「ストリートファイターII」:PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」、PS用ソフト「カプコン ジェネレーション 〜第5集 格闘家たち〜」
著者プロフィール
鴫原 盛之 Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
Twitterは「@m_shigihara」です。
(著者近況)
3月の大地震以来もろもろ計画が狂いっ放しの日常が続きましたが、最近になって身辺がやっとこさで落ち着いてきました。仕事のほうも当コラムをはじめ、雑誌記事の執筆やゲーム開発のお手伝い等々、幸いにもほぼいつもどおりのスケジュールに戻りつつあります。
もっとも、多くの親類や友人が被災地に住んでいる身としては、まだまだ心配の種は尽きないのですが。また何かチャリティ企画を考えてみようかな……。
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