Apple WatchはwatchOS 3で完全に生まれ変わるスマートウォッチショック

AppleがWWDC16で明らかにしたApple Watch用の次期OS、watchOS 3のデモを見て、操作体系が大きく変わっていることに気付いただろうか。秋にアップデートが始まったら、Apple Watchは別物と言っていいほどの変化を遂げることになりそうだ。

» 2016年06月16日 00時00分 公開
[松村太郎ITmedia]

 Appleが米国時間6月13日から、年次開発者会議WWDC16を開催中だ。初日の基調講演では、iPhone・iPad向けの「iOS 10」、Mac向けの「macOS Sierra」、Apple TV向けの「tvOS 10」、そして、Apple Watch向けの「watchOS 3」の4つの新OSが披露された。

 本連載のテーマであるウェアラブルデバイス向けのOS、watchOS 3は、既存のApple Watchを、「生まれ変わる」と言ってもいいほどに劇的に変化させるアップデートとなるだろう。

 今までのApple Watchを全否定するとまでは言わないが、まだ世の中でApple以外のメーカーの製品も普及していない中、ユーザーからのフィードバックや体験をより円滑に設計するための変更を、思い切って実施するタイミングに差し掛かっている。

操作方法が全く変わった

 WWDC16のステージで、watchOS 3に関するデモが行われた。そこで分かったことは、今までのApple Watchの使い方は、一旦忘れたほうが良い、ということだ。加えて言うなら、Apple WatchはiPhoneのように使るようになる。

 Apple Watchにはインタフェースとして、マルチタッチをサポートする感圧タッチパネルと、デジタルクラウン、そしてボタンが用意されている。これまで、アプリを開く際にはデジタルクラウンを押し込んでアプリアイコンが並ぶ画面を呼び出さなければならなかった。

 もちろんこの方法も残されているが、デジタルクラウンの下のサイドボタンを押すことで「ドック」(Dock)が現れ、起動したことがあるアプリに簡単にアクセスできるようになった。

WWDC16 watchOS 3 デジタルクラウンの下のサイドボタンを押すと、連絡先の「よく使う項目」ではなく「ドック」が表示される

 画面の上端から下へスワイプすると「通知センター」(Notification Center)が表示されるのは今まで通りだが、画面を下から上にスワイプすると現れるのは、アプリの情報を確認できる「グランス」(Glance)ではなく、iPhoneと同じ「コントロールセンター」に改められる。

WWDC16 watchOS 3 画面を下から上になぞると、「グランス」ではなく「コントロールセンター」が呼び出される。Apple Watchの操作は大きく変わる

 また、文字盤の画面でディスプレイを左右にスワイプすることで、文字盤を切り替えられるようになった。今までは、画面を押し込んで文字盤の設定画面に入る必要があったため、これも非常に簡単な作業へと改められた。

 普段Apple Watchに対して行う操作だけを見ても、今までとは使い勝手が全く異なることが分かるはずだ。

アクティビティを強調した文字盤の追加

 Appleは、1年間のApple Watchの活用やユーザーからのフィードバックによって、最もよく使われている機能がアクティビティであると知った。加えて、ユーザーはオンタイムやオフタイム、ウィークデーや休日などで、文字盤の変更を頻繁に行っていることもつかんだという。

 そこでAppleは、アクティビティの経過を大きく扱った文字盤を追加し、前述のように、文字盤の切り替えをより簡単に行えるように操作方法を変更した。

 アクティビティがテーマの文字盤にも、文字盤全体がアクティビティのリングになっているアナログタイプや、数字で表示するデジタルタイプなどを追加し、ユーザーの好みに応えられるように配慮している。

WWDC16 watchOS 3 アクティビティリングをテーマにした文字盤が3つ追加される。左右のスワイプで複数の文字盤を使い分けるのも簡単になる

 余談だが、現在サードパーティーの開発者が文字盤を開発し配布することはできないが、Apple Watch向けのオリジナルバンドをリリースしている日本のファッションブランドsacaiのように、バンドのデザインに合わせて、文字盤の背景に設定するための画像を配布するようなケースが出てきている。写真の文字盤として選択することで、バンドから文字盤までを含めたコーディーネートも提案できるわけだ。

アプリの高速化と、インターフェイスの自由化

 watchOS 3で、開発者にとっての朗報は、アプリの起動が7倍高速化されたことだ。これまでのApple Watchアプリは、タップしてから数秒以上待たされることが常だったが、watchOS 3では、一瞬で立ち上がるようになる。

WWDC16 watchOS 3 WWDC16でwatchOS 3について解説するケビン・リンチ氏(watchOS エンジニアリング担当バイスプレジデント)

 また、開発者によると、アプリやコンプリケーションズの更新間隔が短くなったことから、よりリアルタイムな情報を、コンプリケーションズや新たに追加されたタスク画面で見ることができる。グランスについての話が出なくなったが、前述の更新頻度の向上から、インタフェースとして必要なくなったのかもしれない。

 インタフェースについても、開発者に対してオープン化されたのはニュースと言える。今まで、アプリの操作は画面へのタッチ以外に許可されてこなかった。

 しかしwatchOS 3からは、デジタルクラウンやサイドボタンを、アプリの操作に利用できるようになる。例えば、デジタルクラウンを釣竿のリールに見立てて、回転させることで釣り糸を垂らす深さを決めて、腕の振り上げを釣竿の動きに見立てて遊ぶゲームを開発しているデベロッパーもいた。

WWDC16 watchOS 3 デジタルクラウンやサイドボタンといったインターフェイスを、アプリの操作に活用できるようになる

 手首に常に装着している、振動や音、画面のフィードバックが可能なインターフェイスとして、さまざまな活用アイデアが広がって行くのではないだろうか。

 watchOS 3とこれに対応するアプリによって、ただ眺めるだけのスマートウォッチから、よりアクティブに活用する利用シーンの広がりを、Apple Watchに期待することができるようになるはずだ。

リッチ通知はApple Watchの可能性を広げる

 さて、watchOS 3のハイライトとして最後に触れておきたいのが、リッチ通知だ。この機能iOS 10にも採用されている、新たなAppleのモバイル体験の「単位」にもなる機能だ。

 今までの通知では、届いた通知内容を知らせたり、ボタン操作や1行返信など簡単なフィードバックしか行うことができなかった。リッチ通知では、例えばメッセージアプリであれば、通知画面から返信する際、前後のやり取りを確認したり、開きっぱなしにしておけば、その通知以降の相手からのメッセージもリアルタイムで表示してくれる。

 こうしたインタラクティブな通知カードが、Apple Watchでも利用できるようになる。WWDC16では、HomeKitに対応したドアホンのカメラのリアルタイム映像を、Apple Watchの通知内で確認する、という様子を見せていた。

 iOS 10の通知がよりインタラクティブな表現になればなるほど、Apple Watchに届く通知も同様にリッチになっていくことが予測でき、小さな画面の中で映像やアニメーションを見ることができるようになると、Apple Watchで通知を受けることがより楽しくなっていくのではないか、と予測している。

 watchOS 3は、6月13日の発表で開発者向けプレビューが始まっており、アプリ開発や対応がスタートした。一般のユーザー向けには、秋に無料で配信される予定だ。

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