なぜApple Watchは最大7倍もの高速化が可能なのか

Appleが6月に開催したWWDC 2016では、Apple WatchのOSをwatchOS 3にアップデートするだけで、アプリの起動が最大7倍も高速化すると発表されました。なぜそんなことが可能だったのか、取材して分かったことを紹介します。

» 2016年08月07日 09時00分 公開
[園部修ITmedia]
Apple Watch

 次期「iPhone」のうわさやリーク情報が続々とメディアに現れるようになってきました。例年通りであれば、9月には新しいiPhoneが発表になる見通しです。もしかしたら、2年前と同様、新しい「Apple Watch」も、新型iPhoneと同じ発表会でお披露目になるかもしれません。

 現行モデルのApple Watchユーザーにとって、Apple Watchのモデルチェンジがどうなるかは非常に気になるところですが、もう1つ、この秋には注目のイベントが控えています。それはwatchOS 3のアップデートです。

 Apple主催の開発者向けイベント、WWDC 2016では、Mac、iPhone/iPad、Apple Watch、Apple TVそれぞれに対応したOSの、新しい機能や改善点の一部が公開されて話題になりました。Apple Watch向けのwatchOS 3は、なんと最大7倍もの高速化を果たすことが予告されています。当時、「もともとかなりの伸び代が用意されていたのではないか」と予想しましたが、取材を通してその秘密が分かってきました。

watchOS 3の配信はこの2016年秋の予定

最大の違いはメモリの使い方の変更

 現在のApple Watchのアプリは、「グランス」というウィジェットのようなものを使って情報を一時的に確認できますが、情報の更新には若干の時間がかかります。そこからさらにApple Watchアプリを起動すると、また長時間待たされます。

 watchOS 3では、メモリの使い方を変え、「ドック」と呼ばれる場所に最大10個のアプリを入れておけるようになります。ドックに入っているアプリはメモリに常駐する形になり、瞬時に起動できるようになるとのこと。これによって動作の高速化が実現しているわけです。

バックグラウンドでの情報更新もサポート

 さらに、watchOS 3ではバックグラウンドでの情報更新もサポート。アプリを呼び出してからiPhoneと通信して、情報をアップデートするのではなく、あらかじめアプリが最新情報を持っているために、起動後必要な情報がすぐ表示でき、体感速度が上がるのです。

 バックグラウンドでアプリが動作して、ただでさえ1日ちょっとしか持たないApple Watchのバッテリーは大丈夫なのか、と心配になるかもしれませんが、バッテリーの駆動時間への影響はあまりないといいます。

ユーザーインタフェースも最適化

 メモリの使い方の部分で、新たにドックという機能が用意されることに触れましたが、このドックは、現在はよく使う連絡先を呼び出す機能が割り当てられているサイドボタンから立ち上げます。サイドボタンを押して、アプリを選び、起動すると必要な情報がすぐに表示されるわけです。

 ちなみに画面を下から上にスワイプすると、よりiPhoneに近い、「コントロールセンター」が表示されるようになります。

 ドックの登場によって、グランスは役目を終えます。画面を下から上にスワイプし、グランスを選ぶと情報更新にしばらく待たされ、その後アプリを起動するのにさらに時間がかかる状態から、大きく操作方法が変わるわけです。これによっても、より動作が速く感じられるようになります。

 つまり、Apple Watchの高速化は、アプリがメモリに常駐すること、バックグラウンドでの情報更新ができるようになること、そしてユーザーインタフェースの変更という、3つの組み合わせによって実現されるわけです。

Apple Watchはやはり余裕を持たせた作りだった

 Apple Watchは、Appleにとっても初めての、人々が24時間365日身に着けるデバイスでした。そのため、開発者がどのようなアプリを作ってくれるか、ユーザーがそれをどう使うか、バッテリーへの影響はどれくらいあるか、といったことを事前に予測することが非常に難しかったといいます。発売から1年以上かけて、慎重にApple Watchの使われ方を学んできたそうです。

 そして分かったのは、アプリにどれくらいのメモリを割くのが最適か、という予想が、保守的すぎたということ。watchOS 3では、メモリをアプリにもっと割いても大丈夫で、バッテリーへの影響もそれほど大きくない、という確証が持てたことから、大幅な高速化に至ったのです。

 もともとApple Watchのハードウェアは、将来のこうした変更にも耐えうる、余裕を持った作りになっていたのは、予想した通りでした。

 現在のApple Watchアプリの動作は、非常に遅く、ストレスを感じるレベルのものですが、これが快適に動くようになれば、さらに活用の幅は広がりそうです。Apple Watchがサクサク動くようになるなら、新型Apple Watchが発表されても、しばらくは我慢できるかもしれません。

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