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富士急ハイランドに使徒、襲来。エヴァの活動限界までに「使徒」の包囲から脱出せよリアル脱出ゲーム「ある使徒からの脱出」リポート(2/2 ページ)

11月2日から19日にかけ、富士急ハイランドで開催されていたリアル脱出ゲーム「ある使徒からの脱出」のネタバレ全開リポートをお届けします。で、「使徒からの脱出」って結局どういうことだったの?

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瞬間、ヒント、重ねて

 Aの「ええじゃないか」とBの「最恐戦慄迷宮」でも同じようにカンバンにヒントが書かれていたが、こっちは加藤さんがすぐに解いてくれた。「α=いちじ、β=か、γ=せ」と「α<β<γ」だから、そのまま代入すれば「いちじ<か<せ(イチジク隠せ)」だ。エヴァでイチジクと言えば、ネルフのロゴマークに書かれた「イチジクの葉」しかない。最初に渡された茶封筒にも「ネルフのロゴマークはイチジクの葉」という説明があった。ええと、でも、どこのイチジクを隠せばいいんだ?

Aの「ええじゃないか」で見つけたヒント看板
Bの「最恐戦慄迷宮」では「α<β<γ」というヒントを発見

 ここで園内に響き渡る「残り10分です」のアナウンス。まわりを見ると、どうやらみんな「EVANGLION:WORLD」へ再び集結しつつあるらしい。ついていってみると、さっきまで開いていたアトラクションの入り口にスタッフが立っている。もしかしたら! と思い、職員証のネルフロゴに書かれたイチジクの葉を手で隠し、「これで入れますか?」と聞いてみる。結果は……「残念、違います」。ぐああああああ!

 しかし大ハズレというわけでもなかったのか、スタッフがこっそりヒントを教えてくれた。「その職員証、中を見てみましたか?」。なん……だと……?

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 職員証をパスケースから出してみると、なんと職員証は2つ折になっていた。こんな単純なことに気付かなかったなんて! で、出てきたのが、意味不明の詩のような文章。これを解かないかぎり中へは入れないらしい。残り5分!

実は2つ折りになっていた職員証。一度ケースから出してはいたのに、折り方がキレイすぎて気付かなかった!
中に書かれていた文章。これが最後の謎……であってほしい

「混沌の風」? 「声を上げよ」? 「漏れ聞こえる忌み歌が道しるべ」? どれも意味ありげではあるんだけど、具体的にどうすればいいのかはさっぱりわからない。

 まわりを見ると、同じところでみんな詰まっているのか、続々と「EVANGLION:WORLD」前に人が集まってくる。

 残り、1分。

 誰か通過できた人はいるのか?

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 残り、30秒。

 横を見ると、加藤さんも頭を抱えてうんうん唸っている。こりゃダメだ。

 残り、20秒。

 ……もしかしてまだ行っていない場所があった?

 残り、10秒。

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 あああああああわからん!

 5、4、3、2、1……

 タイムアップ。

脱出の価値は

 その後は再び全員、最初のホールに集められて答え合わせ。進行はやはりSCRAPの加藤社長だ。どうやら今回はかなり難しかったらしく、当初制限時間60分だったのを、途中でこっそり70分に変更していたらしい。「えええー!」という声があちこちから漏れる。

「イチジク隠せ」とは「イチジクの葉が隠れるように折れ」という意味だった。これも一度試してたのに!

 で、答えを聞いて驚愕。僕らは職員証のアレが最後の謎だと思っていたのだが、実はまだ全然だったことが発覚! 「イチジク隠せ」の“イチジク”とはやはり社員証のイチジクの葉のことで、“隠せ”とは「隠れるように折れ」ということだった。加藤社長が言うとおりに折ってみると……うわああああ!

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 中に書かれた「TEXT IS MAIN」という文字と、表の「NERV」の文字が重なり、「NEXT IS RW(RWへ向かえ)」という文になった。RW……地図の座標かあああああ!

 同時に、ここにはもうひとつのヒントもあった。葉が隠れるように職員証を折ると、さっきの意味不明な文章の一部が下からペロッと見える形になる。「ベ、ロ、だ、せ(ベロ出せ)」……やられた! 「スタッフにベロを出すと通してくれる」は「夜の遊園地からの脱出」で一度経験済みだ。

 加藤社長の説明をまとめると、あのあと僕らがやるべきだったことは以下のとおり。まず「NEXT IS RW」に従って、地図のRW――すなわち「高飛車」へ行く。そこでスタッフにベロを出して見せ、新たなIDカードをもらう。さらにそれを持って「EVANGLION:WORLD」へ向かい、IDカードに隠された最後のパスワードをスタッフに伝える……。

 ここまでやって、ようやく脱出成功である。とっ、解けるかー! 会場からも「えー!」「全然惜しくなかったじゃん!」といった声があがっている。

 結局、制限時間をこっそり10分伸ばしたにもかかわらず、脱出できたのは300~400人のうちわずか7人だけ(それでも脱出できた人がいたのがスゴい)。加藤社長によれば、今回はデバッグ公演ということで「制限時間が短すぎた」「茶封筒の文字が薄すぎて、イチジクの葉のヒントを読めなかった人が続出」「最後の謎が難しすぎた」など反省点も多く、「一般公演ではここは改善したいと思います」とのことだった。なるほど、こうやっていつもバランス調整してるんだなあ。

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 ちなみに、あとから本公演に参加した人のブログなどを見てみると、どうやら本公演では制限時間が80分になり、AとBのIDも「リンゴとスイカ」から「リンゴとアダム」に変えられるなど、謎解きやヒントもよりエヴァの世界観に合ったものに変更されたらしい。こういうちょっとした違いにニヤニヤできるのはデバッグ公演参加者の特権ですな。これで脱出できていればもっと良かったんだが……。

茶封筒に書かれた「イチジクの葉」のヒント……って、読めねー!
脱出できなかった脱力感で、このへんから写真を撮るのをすっかり忘れてました。代わりに夜の遊園地の写真をお楽しみください

謎のかたち、脱出ゲームのかたち

 さて、実際参加してみて、当初僕が感じていた「不安」と「期待」についてはどうだっただろう。正直に言うと、不安がそのまま的中してしまった部分もあるし、見事に裏切ってくれた部分もあった。

 残念だったのは、最初のミサトさんの説明以外、「エヴァ」らしさを感じられる要素があまりなかったことだ。結局、謎解きが始まってしまえば中身はいつものリアル脱出ゲームで、外でエヴァと使徒が戦っていることなどすっかり忘れていた。謎解きもヱヴァに関係あったのが「イチジク」だけで、スピーカーから流れるBGMもいつものリアル脱出ゲームのもの。どうせなら要所要所で原作のサウンドを使ったりはできなかったのだろうか。

 一方で、最初にスピーカーからミサトさんの声が流れた時はやはり感動した。それまでただのイベントホールだったのが、あの声だけでネルフ富士急支部に変わってしまった。参加者を世界観に引き込むストーリーテリングもすばらしく、あの瞬間、確かに僕らはネルフの新人研修職員になりきっていた。「キャラクターになりきり、放り込まれた世界観や物語を楽しむ」という要素は、今までのリアル脱出ゲームにはなかったものだ。

せっかく「EVANGLION:WORLD」というアトラクションがあるのに、ただの通過点になってしまっていたのもちょっと残念

 最近はリアル脱出ゲームもすっかりメジャーになってきたようで、こうした大規模なタイアップ企画もずいぶん増えてきた。12月にはコーエーテクモゲームズとのコラボ企画「終わらない合戦からの脱出」が控えているし、2012年には漫画「宇宙兄弟」とコラボした「月面基地からの脱出」も開催予定だ。

 こうしたコラボレーションについて、昔からのリアル脱出ゲーム好きの中には難色を示す人もいることだろう。参加人数が増え、舞台が広くなれば、それだけ「密室に閉じ込められた」という臨場感・緊張感はどうしても薄らいでしまう。昔のように、部屋中をひっくり返して手がかりのアイテムを探させるわけにもいかず、最近の謎解きはもっぱら「触れない・動かさない」が主流だ。そもそも「使徒」や「合戦」からの脱出って、それ密室か!?

 リアル脱出ゲーム自体が大きくなったことで、初期のコンセプトから少しずつズレはじめているのは確かだろう。7月にオープンした、「アジトオブスクラップ」という常設型のリアル脱出ゲームは、そうした現状に対するSCRAPのひとつの解答なのだと思う。

12月に開催される「終わらない合戦からの脱出」。神宮球場を舞台に、戦国武将たちが野球で勝負!?
「宇宙兄弟」とコラボした「月面基地からの脱出」。こちらは2012年に開催される予定
初の常設型リアル脱出ゲームとなる「アジトオブスクラップ」。小規模ながら、「本当の密室」を舞台にした濃密な謎解きが楽しめる

 今回参加した「ある使徒からの脱出」は、若干の不満もあったとは言え、こうした“大規模多人数参加型”、“大規模コラボ型”のリアル脱出ゲームの、ひとつの可能性を示してくれた。単に与えられた謎解きを楽しむだけでなく、参加者自身が登場人物の1人になりきり、濃密なストーリーや世界観を楽しむ。来年開催予定の「月面基地」なんかは、リアル脱出ゲームのシチュエーションにもぴったりだし、うまく料理すればきっとすばらしいものになるだろう。「合戦」の方は……「どこまではっちゃけてくれるか」という点で一応期待してはいます(笑)。

 最後に、私事で恐縮だが、今回脱出に失敗したせいで、ついに脱出成績が「4勝5敗」と負け越しになってしまった。加藤社長はいつも最後にこう言ってイベントを締めくくる。

「今回脱出できなかった皆さん、さぞ悔しかったことでしょう。リアル脱出ゲームの悔しさは、リアル脱出ゲームでしか晴らすことはできません。ぜひ次回の参加もお待ちしています!」

 まったくもってその通りである。ちくしょう、次は脱出してやるからおぼえとけよー!

全然関係ないですが、開演までの待ち時間でなぜか、7月にオープンしたばかりの新アトラクション「高飛車」に乗せられることに。ジェットコースター大嫌いなので「いや! 今日はリアル脱出ゲームに集中したいので!」と断固拒否するつもりだったのに……
「高飛車」の全景。ギネス記録にも認定されている、文字どおり「世界最恐」のジェットコースターである。どこらへんがギネス級なのかというと……
ここです! 最大落下角度は121度。直角を超えた、究極の落下体験が搭乗者を恐怖へと突き落とします。ていうか、ジェットコースター自体久々なのにいきなりギネス級とかマジで勘弁してください!
なぜか地獄のミサワとコラボしたイラストも展示中。いくら「あれぇ~? 乗らないんスかぁ~?」と挑発されようが恐いもんは恐い!
結局、乗りました。死ぬかと思った……
(c)カラー
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