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「時代の顔をアーカイブする」――Google、被災地を走ったストリートビュー撮影秘話(3/3 ページ)

Googleのストリートビュー撮影車が昨夏から約半年間、東北を駆け抜けた。住民感情に配慮しつつも「今でなければ」と撮影をスタート。ハンドルは地元出身のドライバーたちが握った。

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 実際に今回のストリートビューを見てみると、地震と津波の爪あとの大きさ、広さに息をのむ。例えば宮城県南三陸町のとある交差点。以前は角に木造の家が建っていたが、新しい写真ではがれきが転がる空き地となっている。電柱はなぎ倒されており、そこにあったはずの信号は見当たらない。その奥には、町の防災対策庁舎の鉄筋が残っている程度で、建物はほとんどなく一面が見渡せてしまう。

震災前
震災後

 宮城県石巻市では、大きなドラム缶のようなものが放置されている場所が映っている。その脇を車が通り過ぎていく様子もとらえている。「『ドライバーがこういうところも走ってくれたんだ』という驚きがあった。生々しさは新聞の写真やテレビで見るよりも伝わるかなあと思う」(大倉さん)


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 被害が大きかった沿岸部だけでなく、比較的被害の少なかった地域も撮影し、公開している。海外では東日本大震災で日本全体がダメになってしまったかのような受け取り方をされる場合があるが、以前と変わらず営業している商店や行き交う人々などを含め街並みを映すことで、そのような悲観的な見方を減らしていく狙いだ。

 今回のストリートビューへの反響は大きく、世界中からアクセスがあった。ページビューなどの具体的な数字は明かにしていないが「発表した日から次の日にかけてすごくたくさん見ていただけた。“すごく多く、ほんとに多く”です」と村井さん。CNNからも取材され、全米で放映された。

時代の顔がアーカイブされていくかつてないプロダクトに

 村井さんは被災地に立った時の思いをこう語る。「気仙沼、女川、石巻とさまざまな所へ伺ったが、瓦礫の山というのはショックそのものだった」。自然の脅威を前に「Googleにできることは少なくて、もしかしたら無いのかもしれない」とも感じた。だが「我々は頭脳で生きていく人間だと思っているので、Googleとして考え続けていくことが重要だと思っている」と、使命感をにじませる。

 東日本大震災から3月で1年を迎える。Googleは震災直後から、人の消息情報を登録・検索できる「Person Finder」や「自動車・通行実績情報マップ」など関連サービスを矢継ぎ早にリリースしてきた。ほかにも社食で被災地の野菜を使ったり、被災地の商店や企業の情報を発信するサイトを立ち上げたりと、支援の中身は多彩で手厚かった。

 村井さんの言葉「頭脳で生きていく人間」だけを聞くとやたらスマートな印象を受けるかもしれないが、その陰にはこの1年、手と足を動かして泥臭く、自分たちの役割を模索するGoogleの姿があったように記者は思う。村井さんによればCrisis Responseのチームは今もミーティングを欠かさず、「やるべきことを議論し続けている」そうだ。

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 被災地のストリートビューは「10年後に価値が出ているかもしれない」と村井さんは見る。写真の更新頻度は「コミットできない」が「時代時代の顔がアーカイブされていくかつてないプロダクト」になると話す。ほかの国で同じような災害が起こった場合に被災状況を比べるといった使い方もできそうだ。1枚、1枚の写真がまさに貴重な「未来へのキオク」となっていく。

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