LINEはFacebookを超えるか プラットフォームへ進化する2年目、1億ユーザーへの道
KDDIとの業務提携、新プラットフォームサービス「LINE Channel」……LINEのビジネスカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2012」は盛りだくさんの内容でした。基本機能とあわせて総ざらいしましょう。
NHN Japanは7月3日、無料通話アプリ「LINE」のビジネスカンファレンス「Hello, Friends in Tokyo 2012」を開催しました。昨年6月に生まれたLINEは、ユーザー数が1カ月に500万人以上のペースで増え続け、世界4500万人、国内2000万人までに急成長しました。約1年という短い期間で築き上げたとは思えないほどの実績です。今回のカンファレンスはLINEが「次のステージ」に進むためのもの。「Facebookを超えたい」という強気な言葉とともに飛び出した新機能・サービスをチェックしましょう。
2カ月で3億5000万円売り上げたスタンプショップ
まずは現状の確認から。LINEは世界230カ国で利用されています。2000万会員突破までにかかった期間は、Twitterが1035日、Facebookが1152日なのに対し、LINEは256日。急成長ぶりを物語る数字です。今回のカンファレンスには海外のメディアも取材にかけつけ、内容は英語、韓国語、中国語、タイ語に同時通訳されていました。国内のユーザー数は2000万人で、これは日本のスマホユーザーの44%が使っている計算。「最近ではLINEを使うためにスマホを買う人もいると聞いている」と、同社の森川亮社長は得意げに語ります。
基本機能は無料の通話とメッセージ。スマートフォンからの利用が中心ですが、フィーチャーフォンにも対応しているほか、PC向けのデスクトップバージョン、タブレット向けのブラウザバージョンも用意されています。売りは、メッセージを彩るスタンプの数々。4月にスタートした「スタンプショップ」は絶好調で、6月末までの約2カ月間で3億5000万円を売り上げました。グリーティングカードアプリ「LINE Card」、カメラアプリ「LINE camera」といった連携サービスも人気となっています。
LINE cameraは、写真を簡単に編集・装飾し、LINEでつながっている友人やグループに直接送ることができるiPhone/Androidアプリ。4月にリリースし、公開から約1カ月で500万ダウンロードを突破。世界16カ国のGoogle Play「写真」カテゴリで1位に、世界13カ国のApp Store無料総合ランキングで1位になりました。LINE cameraを出した狙いは、ほとんどアプリをプロモーションすることなく、“LINEと連携する”という1点だけでどこまでユーザーを伸ばせるかの検証だったそうです。
同社の舛田淳執行役員・CSMOは、価値あるプラットフォームの条件として(1)大規模なユーザーベース、(2)サービスが効果的につながっている、(3)収益化の可能性があることを挙げます。4500万人を抱え、LINE cameraなどの連携サービスにもそのユーザーベースを生かす一方、スタンプショップで収益面での成果を出しつつあるLINE。「プラットフォームに進む準備ができた。コミュニケーションツールからプラットフォームへ進化します」と、舛田CSMOは宣言します。
プラットフォームへの進化
人と人をつなぐLINEが、コンテンツ・サービス・ビジネスをつなぐプラットフォームに――既報の通り、新プラットフォームサービス「LINE Channel」が近日中にスタートします。LINEの友人と一緒に楽しめる連携アプリやサービスを集約したもので、第1弾として、ゲームや占い、クーポンなどのアプリ、サービスを7月上旬より順次投入。当初はNHN Japanによる自社開発アプリのみとなりますが、今後は外部パートナー向けにAPIを公開し、パートナーとの連携アプリを中心に拡充していく予定です。
なかでも注目は7月上旬開始予定の「LINE Game」でしょう。LINEでつながっている友人と共同で楽しむことができるネイティブアプリ形式のゲームサービス。プッシュ機能を使って友人をゲームに誘ったり、ゲームユーザー限定のスタンプをもらえたりもします。初期参加企業にはKONAMI、サンリオ、スクウェア・エニックス、Rovio Entertainmentなど。ハンゲームを展開する同社も、今後スマホ向けゲームは基本的にLINEブランドで提供する計画であると明らかにしました。
8月には、講談社などがコンテンツを提供する「LINE トークノベル」、マガジンハウスと共同で開発した「an・an占い」など200種類以上の鑑定メニューを提供する「LINE 占い」、リクリートの「ホットペッパーグルメ」と連携した「LINE クーポン」が登場、9月にはレコチョクとの連携による音楽コンテンツ販売サービス「LINE サウンドショップ」がスタートします。さらにはLINE Channel内の有料コンテンツを購入するためのモバイル決済サービス「LINE コイン」も。
一方でLINE自身は、ソーシャル・ネットワーク性を強化します。テキスト・写真・動画・位置情報などを使って自分の近況をアップデートできるマイページ「ホーム」と、LINEでつながっている友人の近況がリアルタイムに分かる「タイムライン」を新設。ホーム、タイムラインでは、スタンプを使って感情表現することが可能で、LINE Channelの利用履歴も通知・共有されるようになります。その上で「シンプルであること」は大切にしていきたいと、舛田CSMOは強調していました。
マーケティングプラットフォームとしてのLINEに企業も注意
マーケティングプラットフォームとしてのLINEに企業も注目しています。6月にスタートした企業向けの「LINE公式アカウント」は、企業がLINEで情報発信でき、ブランドキャラクターを活かしたオリジナルの「スポンサードスタンプ」を展開できるというもの。現在は日本コカ・コーラ、ローソン、ゼンショー、日本テレビなどが参加。映画「アメイジング・スパイダーマン」のスポンサードスタンプは2週間で200万回ダウンロードされ、1700回使われたと言います。
会ったことのない専門家の意見よりも友だちのクチコミを信じるように、信頼されたネットワークであるリアルグラフは、バーチャルグラフに比べ、情報を取得した後の行動への影響力が強くなるもの。マーケティングプラットフォームとして重要なのは「感情の共有をどれだけ演出できるか」であり、電話帳をベースにしたリアルグラフが売りのLINEはこれを受け止めると、同社の出澤剛取締役ウェブサービス本部長は説明しました。
LINEの“One more thing”
Appleの発表会でおなじみ“One more thing”が、今回のカンファレンスにも用意されていました。それがKDDIとの業務提携です。auスマートパス限定バージョンの「LINE for auスマートパス」を2012年9月に配信予定。オリジナルキャラクターを使った限定スタンプを無料で提供するほか、LINE公式アカウントとしてauスマートパスの最新情報を発信していくなど、両者の利用促進に向け連携をはかり、未成年保護やネットワーク負荷対策への対応でも連携していくそうです。
今年度内に1億ユーザー突破を目指しているLINE。舛田CSMOは「日本のコンテンツが世界に流通する、世界のコンテンツが日本で流通する、エコシステムを築きたい」とコメント。一方、森川社長は、サービスとしての競合ではないものの、規模では9億人もの利用者を抱える「Facebookを超えたい」と強気に語りました。日本発のWebサービスの飛躍、LINEの2年目に注目です。
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