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「年収500万円の人を1万人生む」 クラウドソーシングの老舗ランサーズが挑む“クリエイターたたき売り”の回避策Web業界の仕事探し事情(2)

クラウドソーシングという仕事探しのやり方はクリエイターの報酬を下げているのか? 老舗であるランサーズに聞いた。

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 ねとらぼで先に、Webクリエイター向けリクルーティングサービス「スキルプル」を取り上げた「『Web制作の現場で起きているのは、クリエイターのたたき売り』 元フリーランスの開発部長が描く『Webの仕事探し』の理想形」という記事を掲載した。その記事の中で、クリエイターの報酬低下につながる“逆オークション”状態を引き起こしやすいクラウドソーシングの弊害について言及した。

 この記事を受けて、クラウドソーシングの老舗であるランサーズから、これまでの背景について説明したいとの申し出があった。クリエイターはたたき売られてはいなかったのか、クラウドソーシングの価値とは何なのか、ランサーズ代表取締役の秋好陽介さんに話を聞いた。


クラウドソーシングサービスのはしり「ランサーズ」

ランサーズ代表取締役の秋好陽介さん

クラウドソーシングとは何か? “たたき売り”に関する秋好さんの認識

 クラウドソーシングとは、不特定多数の人に業務を委託する雇用形態のことで、委託者と受託者をマッチングするWebサービスが数多く存在する。例えば、Webサイト制作を委託したい企業がその詳細を、報酬などの条件面と併せてWebサービス上で公開する。すると、その条件に見合ったサイト制作者が案件に応募し、その中から受託者が決定するという形態だ。

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 先日の記事で弊害としたのは、現行のクラウドソーシングは、企業の案件に対して複数のクリエイターが集まるため、逆オークション状態を引き起こしやすい。中には(ものすごく低いという意味で)法外な価格を提示する人もあらわれるため、結果としてクリエイターのたたき売りを引き起こすこともあるというものだった。

 秋好さんは、クリエイターに対する報酬単価が低くなることがある現状を認めた。同社は大きく分けて3つのスタイルで委託者と受託者をマッチングしている。1つは、案件に対する制作物を制作・提出してもらい、その中から委託者が満足したものを選択する「コンペ」。ひとつは、案件開始前に候補者から相見積もりを取る「プロジェクト」(特定の個人に直接発注する場合もある)。そして、簡単な作業を人数が許す限り多人数で同時に作業する「タスク」。報酬単価が低くなる事態が発生するのは、「プロジェクト」において相見積もりを取る場合だ。また、「コンペ」においては報酬の有無にかかわらず実稼働が発生する、という意味ではそれに当たるかもしれない。

左からコンペ案件の例、プロジェクト案件の例、タスク案件の例

 「課題はひとつ飛ばしではいけない」――秋好さんはこの状況を決して肯定しているわけではない。報酬の低下に関する課題はサービス開始当初から感じていたという。しかしこれまでは企業とクリエイターが直接出会い、Web上で仕事を発注する場を作るという課題の解決に注力してきた。これからの課題は報酬額だという。

ランサーズが取り組む、法外単価の回避策は

 それでは、ランサーズはどのようにして報酬を適正なレベルにしていくのか。秋好さんは「報酬額はスキルへの期待値と安心感で決まる」と話す。委託者からすると、受託者に実際にスキルがどれぐらいあるのか、そしてそれはどれほどの価値があるのか計りづらいため、実際に見える化しないといけない。そのため、委託者がクリエイターの過去の制作実績とその実績に対する評価を閲覧できるようにしている。また直近では、ITスキル格付け会社、エキスパートレーティングと契約を結び、スキルテストを導入した。


ITスキル判定機能を導入

オンラインのみでクリエイターのスキルを「見える化」する狙いがある

 また安心感については、ランサーズに登録している過去案件でパフォーマンスの高かったクリエイターに直接電話して、スキルレベルのチェックをする「ランサーズエクスパート」というサービスを始めている。チェックを通ったクリエイターには「認定ランサーズ」という称号が与えられ、委託者の安心感を醸成させるという。そのほかにも、当初は設けていなかった委託の最低金額を案件種別に設けることにより、法外な価格設定を回避しようとしている。

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 ランサーズは「年収500万円の人を1万人生む」ことを目標に掲げている。すでに高いスキルを備えているクリエイターはプロジェクトを通じて、企業から直接指名を受け、まだスキルが足りないクリエイターはコンペやスキルテストを活用し、スキル向上や制作実績の蓄積に努め、次のステージへ羽ばたいていけばいい。ランサーズは、そんなフリーランスクリエイターのインフラを目指している。同社の努力が、企業とクリエイターの適切なパートナーシップ作りの一助となることを期待したい。


ビジネス開発部の山口豪志さん(左)と秋好さん(右)

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