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「米長会長の英断に応えたい」――ニコニコ生放送、将棋配信にかける本気コメントが生むミニドラマに熱視線(2/2 ページ)

1つの芸に秀で、そこに人生をかける人間の姿、背景にあるドラマをもっと伝えたい。ニコ生の担当者の思いは熱い。

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ドワンゴ「米長会長の英断に応えなければならない」


ニコ生の将棋担当・武田同史さん

 ニコ生の将棋コンテンツを担当するのは、ドワンゴ武田同史さん。企画の立ち上げから、交渉、現地でのセッティングなど、一手に引き受ける要の人物だ。武田さんがドワンゴに入社したのは2010年10月のこと。ちょうどニコ生の公式番組が充実してきた時期だった。はじめは、川上会長の好きな囲碁の番組の担当者として声がかかり、同年12月の「小沢一郎×与謝野馨囲碁対局」(参考:与謝野トライアスロン)に関わった。

 一方で武田さんはドワンゴ出社初日から偶然にも将棋連盟に赴く機会が発生するなど、将棋との縁も深く、先方と話し合うたびにネットへの熱意を感じていたという。米長会長は、かねてからネット中継の必要性を訴えており、5年かけてコンテンツホルダー(タイトル戦を主催する新聞各社)から配信許可を得た。「将棋が好きで世に広めたい」――全員に共通した思いがあってこその出来事だった。

 ニコ生はタイトル戦の中継先として直々に指名が入り、2011年2月の棋王戦(主催:共同通信)で中継デビューを果たした。配信前には「人気が出るのか?」と社内からも心配する声が上がったというが、いざフタをあけてみると大盛り上がり。将棋のペースはニコニコ向きなことが明らかになった。例え、指手に時間がかかろうとも、コメントが流れることで次々とミニドラマが発生する。連盟の後押しによりタイトル戦中継が実現したことで、武田さんは「会長の英断に応えなければならない」と気が引き締まったと語る。

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ニコ生の中継クルーたち(大盤解説の現場より)

 ところで、ニコ生の将棋中継は5人前後のチームで運営している。地上波中継と比較すると、ネット配信は必要な機材は少ないものの、撮影クルーの人数は数分の1の規模。タイトル戦が始まると、武田さんは現地入りしてカメラ・照明・配線等、さまざまな準備に取りかかる。これにより、月の大半は社内にいないのだ。2012年に「電王戦」「名人戦」「超会議」とビッグイベントが立て続けに開催された時は、疲労困ぱいになったそうだ。それでも、現場ならではのヒリヒリした雰囲気は格別だという。

 「ニコ生で将棋のルール覚えた。」――こうした手紙がニコ生あてに数多く寄せられている。ニコ生ではこれまで将棋のタイトル戦をすべて無料で配信しており、現状では有料化は考えていない。ニコニコのユーザーの中心は20代の若者だが、最近は40代、50代も増加し、将棋中継が潜在的なファンへのアプローチになっていると手応えを見せる。

 武田さんは将棋中継に関わったことで、棋士たちに魅了され将棋がより好きになったと断言する。1つの芸に秀で、そこに人生をかける人間の姿、背景にあるドラマをもっと伝えたい――この時、大きな武器になりうるのが映像作家・佐藤大輔さんのプロモーションビデオだ。総合格闘技イベント「PRIDE」の選手紹介映像で有名な“あおりVアーティスト”が実はニコ生でも暴れまわっている。「電王戦」第2回のPVは自信作だ。

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 A級棋士も参戦することになった“人間vsコンピュータの5対5マッチ”は、現場の覚悟を間近で感じている分、「必ず満足してもらえる内容になる」と武田さんは自信を隠さない。ニコ生の将棋中継は10万単位の来場者を記録しているが「もう一桁違う数字を目指したい」という。「既存の将棋ファン、いまだ知らないファン、どちらにも突き刺さるポテンシャルは間違いなくあります」――来年もネットで進化する“将棋”の面白さから目が離せない。

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