ニュース

「将棋界の1番長い日」をニコ生はどう伝えたのか A級順位戦ネット配信の楽しみ方

アンケート機能で次の一手を予想したり、棋士の食事メニューに盛り上がったりと、ニコ生流の楽しみ方が定着しつつある。

advertisement

 将棋の第71期名人戦・A級順位戦の最終局が1日から2日未明にかけて、将棋会館(東京都渋谷区)で行われ、対局の様子はテレビとネットで生中継された。


午前10時 対局開始

 順位戦(毎日新聞社、朝日新聞社主催)とは、将棋棋士によるリーグ戦。A~C級2組までの5クラスがあり、毎年の成績に応じて所属クラスと順位が決まる。トップ10人しか在籍できない“A級”は、プロ棋士の栄誉であり、総当たり戦で首位になると名人への挑戦権を得られる。下位2人は降級となる。

 A級順位戦の最終局は10人が一斉に対局し、長時間かかることや、数々のドラマが生まれることから「将棋界の1番長い日」と称される。第71期ではこの日を、挑戦権を争う2人、残留を巡る4人と、緊迫した状況で迎え、最後の一局まで順位決定がもつれこむなど、ドラマチックな展開となった。

advertisement
羽生善治三冠。最終局では驚異の勝率を誇る
橋本崇載八段(愛称:ハッシー)。ネットで話題になることが多い
郷田真隆棋王。対局室にはカメラが多数
三浦弘行八段(愛称:みうみう)。来月の電王戦でGPS将棋と対戦する
将棋会館の解説会。入場料は指定席3000円、立ち見2500円。
第2会場

 「スカパー!」と「囲碁・将棋チャンネル」は全5対局を7チャンネルで、「ニコニコ生放送」は1つの番組で、午前9時半から対局終了までを生中継。10人を超える棋士が解説・聞き手役として参加した。現地の将棋会館では午後7時から大盤解説会が開催され、多くの観客で賑わった。また、主催の毎日新聞による棋譜速報サイト(有料)もあり、将棋ファンには盛り沢山の1日となった。

ニコ生は“斬新なレイアウト”で

 ニコニコ生放送は当初、大盤解説のメイン番組と各局5つのサブ番組の予定だったが、変更して解説番組のみを配信。そのため、同時に複数の局面を中継する「挑戦的な画面」となった。解説役に、中村修九段、豊川孝弘七段、佐藤紳哉六段、長岡裕也五段のベテラン・中堅が登場し、各々の持ち味を披露した。


5画面の分割放送

斬新なレイアウト

タブレット長岡登場、名解説に盛り上がる

 中村九段と豊川七段は、ダジャレあり漫才あり(?)の面白解説で、小ネタがでてくると「エンジンかかってきた」「あたたまってきた」と視聴者コメントが盛り上がった。佐藤六段はNHK杯で話題になった“ハッシーインタビュー”の元ネタを再現し、長岡五段はタブレットを操作しながら解説して“タブレット長岡”の称号を得た。プロが4人いることから鋭い指摘も生じ、「現地の検討会みたいで面白い」といったコメントが寄せられていた。


何でも知ってるタブレット長岡!

お馴染みのアンケート機能

佐藤六段はNHK杯で話題になった“ハッシーインタビュー”の元ネタを再現

ニコ生流のお約束

 番組では、ニコ生のアンケート機能で「次の一手」を予想したり、棋士が注文した食事メニューがコメントで共有されるなど、“お約束の楽しみ方”が生まれてきている。勝負が動く中盤から終盤にかけては、形勢判断ボードで各局の状況を確認しながら進行した。


ハッシーは昼食に握り特上、夕飯にうな重を注文

形勢判断ボード

勝負の行方

 最終局は、トップを争う羽生善治三冠と三浦弘行八段、負ければ降級の高橋道雄九段と橋本崇載八段、勝てば残留確定の谷川浩司九段と深浦康市九段――という状況にあった。名人への挑戦権もさることながら、永世名人の資格を持ち、昨年12月に将棋連盟会長に就任した谷川九段の行方に、多くのファンが注目していた。首位、残留、降級、全てがこの日に決定する……。

advertisement

 午後10時11分、羽生三冠が橋本八段に勝利して名人への挑戦権を獲得した。同時に橋本八段の降級が決まった。2011年のB級2組昇級から続いた快進撃がストップしたことになる。日付けが変わって午前0時12分、谷川九段が投了。2勝7敗で瀬戸際に立たされ、三浦八段-高橋九段戦に委ねられた。直後、渡辺明竜王-郷田真隆棋王戦が終了。郷田棋王が勝利した。一時は劣勢に見えたが、3時間を超える長考の末、竜王の攻めをさばききった。

 間もなく佐藤康光王将が深浦康市九段に勝ち、残すは1局。三浦-高橋戦は、形勢ボードが行き来し、両者が持ち時間を使い切る展開で、最後は三浦八段が詰め切った。これにより、高橋九段の降級と谷川九段の残留が決まった。時間は午前0時55分。中継開始からおよそ15時間半経過していた。番組は延べ34万人が視聴し、白熱した勝負を見守った。


谷川九段(愛称:タニー)が敗北を認める

午前0時55分 全5局が終了

「とても良かった:95.4%」 高い評価を獲得した  

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  2. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  3. 海で“謎の白い漂流物”を発見、すくいあげてみると…… 2億1000万再生された結末に「本当によかった」「ありがとう」【チュニジア】
  4. スーパーで売っていた半額のひん死カニを水槽に入れて半年後…… 愛情を感じる結末に「不覚にも泣いてしまいました」
  5. 難問の積分計算をホワイトボードに書き置きしておいたら……? 理系大学での出来事に「かっこいい」「数字でつながる感じいいな」の声 投稿者にその後を聞いた
  6. 「うおおおおお懐かしい!!」 ハードオフに3300円で売っていた“驚きの商品”が140万表示 「ガチのレアモンや……」
  7. 夫妻が41年ぶりに東京ディズニーランドへ→“同じ場所”での写真撮影時に「キャストの粋なサポート」明かす
  8. 「大企業の本気を見た」 明治のアイスにSNSで“改善点”指摘→8カ月後まさかの展開に “神対応”の理由を聞いた
  9. カマキリを操る寄生虫「ハリガネムシ」食べてみた 未知すぎる“衝撃的な内容”に震撼 「正気を疑う」「鳥肌立ったわ」
  10. ワゴンに積まれていた“980円の激安デジカメ”→使ってみると…… まさかの仕上がりに「お得感がすごい」