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いま密やかに注目のスポット「廃道」ってなんだ?観光にオススメはできない

好きな人にはたまらないスポットとして廃墟、廃線があります。そして、いま注目なのが「廃道」らしいということで、廃道家にお話を聞いてきました。激レア「廃道」写真も紹介します。

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子供の頃の好奇心から、プロ廃道家に!

―― 肩書は「廃道家」でよろしいですか? 簡単な自己紹介をお願いします。

平沼氏 僕は子供のころから、「行ったことのない道路の先がどうなっているのか見たい!」といったように好奇心が旺盛で、MTBで走り回ったりしていたんですが、その好奇心が大人になってからも衰えなかったんです。

 それで秋田で会社勤めをしながら、東北を中心に「廃道」を探索して、その成果を「山さ行がねが」というホームページで発表していました。

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 「山さ行がねが」に一定のアクセスがあるようになって、「廃道」に関する同人誌やCD-ROMを制作、通信販売したりするようになったんですが、それに一定のファンが付いてくれたことと、書籍やムックなどの企画に参加できたことで手応えを感じて、「廃道」探索に専念するようになったのが2007年です。

 現在は活動拠点を東京に移し、日本全国にフィールドを広げて、専業のプロ廃道家として活動しています。

石井氏 私は以前とある企業で工場見学の案内係をしていたのですが、今は家業が忙しくなったため退職してそちらを手伝っています。その合間に「廃道」探索の日々ですね。

 平沼さんは、詳細なリポートが当たり前なんですけど、私はそうでもなくて、記録よりも体験派かもしれません。自分が実際に行き、歩き、感じて、自分の中に刻み込むことで満足してしまうというか……。

平沼氏 いやー、もったいないよね(笑)。僕はやはり、記録して報告してというのありきだから、デジカメは必ず複数台持って行くし、もしもデジカメが全部壊れたら、その日は引き返して違う日に出直しちゃうよね。

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石井氏 でも、私も「廃道」への想いは負けません。人生は迷い道の連続ですけど、「廃道」にだけはいつも全力で行ってますから!

廃道家の平沼義之氏(右)と石井あつこ氏(左)。平沼氏いわく、「廃道」探索スタイルのポイントは、上下ともに重ね着することと熊鈴だそう。重ね着することで、いばらなどが刺さるのを防ぎ、熊鈴で日本の山行で最大の脅威といえる熊との遭遇を回避する。石井氏は自身が着付けの資格を持っていることもあって、正装といえば和服。「廃道」関連イベントでも、最初に和服で登場し、その後、「廃道」探索スタイルになるというようにお召し替えするのが常だという

―― 「廃道」をテーマとした書籍をはじめ、DVD、アプリまであるということですが、すごい広がりですね。

平沼氏 「廃道」というのは、舗装された道路の大切さ、ありがたさを気付かせてくれるし、秘められた歴史を紐解いてもくれます。そして、人間が多大なる時間と労力を使って作ったものを自然が飲み込んで行くという課程、思いもよらない風景を見せてくれもするんです。

 でも、険しい山の中にあったり、危険な場所だったりして、すばらしいから「さあ、皆さんも行ってみてください!」とおすすめすることはできないものなんですね。だから、皆さんの代わりに僕らが行って、発見したものを報告するという意味もあって、記録することにこだわっているというのもあります。

 その成果を発表する場として、ホームページや書籍、イベントやテレビ番組への出演、DVD撮影、アプリ展開など、お話をいただいたものに可能な限り対応していたら、こうなったという状態ですね。

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廃道関連のDVD「廃道クエスト」も発売されている(iOS用アプリ版もあり)。もちろん、DVD撮影の際には地方自治体や関連団体の許可を取っているということだ
秋田県仙北市「田沢スーパー林道」(2009年7月撮影)。秋田県内では有名な廃道である「田沢スーパー林道」の難所を突破し、下山している平沼氏。「廃道」探索では、明治時代以降の道路を中心にタイヤ付きの乗り物で走り、路面を味わうことを大事にしているそうだ
静岡県伊豆市「旧伊東街道」(2013年3月)。石井氏は、廃道とはいえ道路なので、山登りなどではなく、「あくまでも道路として歩く」という姿勢を大事に探索するのを心がけているそうだ
山形県小国町「宇津トンネル」(2009年5月撮影)。「宇津トンネル」は、国道113号の廃止された旧道にある。舗装道路がそのまま丸ごと放置されているという、いかにも廃道らしい廃道だ
秋田県仙北市「黒崎森トンネル」(2009年7月撮影)。「黒崎森トンネル」は、廃道化した「田沢スーパー林道」の峠にある。コンクリートと植物が濃厚に入り混じった風景も、廃道ならではの醍醐味といえる
福島県南会津町「駒止峠の馬車道」(2009年6月撮影)。明治20年代に南会津郡、全戸の負担で建設された馬車道には、オート三輪の廃車体が眠っていた
静岡県川根本町「無想吊橋」(2010年4月撮影)。林業用として架設され、登山用などとして使用されていた吊橋。テレビ番組で、日本最長最高最恐の吊橋として紹介されたこともある。撮影当時はまだ渡ることができたが(もちろん自己責任である)、現在はさらに荒廃が進んで正式に通行が禁止されている
千葉県君津市「工事用仮設橋」(2011年2月撮影)。房総半島の山間に残された、建設途中で放棄されたゴルフ場へと通じる仮設橋だ
宮城県仙台市青葉区「巨大な木橋」(2009年11月撮影)。「定義林道」の跡にある木橋。昭和30年代まで木材を満載したトロッコがこの橋を行き来していたが、もはやいつ崩れ落ちても不思議ではない状態に。この木橋のように、廃道では使われなくなった土木技術を垣間見ることもできる
栃木県那須塩原市、日光市「塩那山岳道路開設の経過の碑」(2011年9月撮影)。塩那道路は、自衛隊(104建設大隊)が峻険な山中のため殉職者まで出したという難工事の末に開通させた道路だった。リポートを公開した平沼氏に、作業に従事した隊員の息子さんから、碑に父親の名前を見つけることができたと感謝のメールがあったそうだ
山形県米沢市「栗子隧道」(2003年5月撮影)。平沼氏が廃道に没入するきっかけとなった廃道「万世大路」の頂上にある隧道(トンネル)。到着したときは、喜びのあまりレンズ付着の水滴を拭うのも忘れて撮影したという。DVD「廃道クエスト」でも訪れている
群馬県沼田市「数坂隧道」(2010年9月撮影)。石井氏が、ネットで下調べした際にいっさい情報が得られず、資料からヒントを得て探索したという隧道。見つけた瞬間、「生きててよかった!」とまで感じたという思い出の廃道だ

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