初音ミクの「メルト」を人形浄瑠璃で――「世界ボーカロイド大会」リポート(2/2 ページ)
ネギを振る文楽人形、ボカロ列車、ファンによるボカロライブ……ファン主催によるイベント「世界ボーカロイド大会」は盛りだくさんな内容だった。
ボカコンのスタッフはこれまでにも台湾、メキシコ、ドイツなど世界各地でボーカロイドのファンイベントを開催してきており、今回のボカコンではドイツ・フランクフルトのコスプレショップ“コスチュームシュピール”(ドイツ語でコスプレの意味)を結んで日独交流会が開催された。ドイツ側のスクリーンに日本側の鏡音レンのコスプレが現れると、ドイツ側のテンションもMAXに。
この日独交流会にはドイツ側からボカロPも参加しており、日本語で作曲した曲を披露した。ボカロPのニコラス・ゼロヨン氏は「処女友情↑↑(上上)0608-0835(ボカコンver.)」を披露(soundcloudでも公開)。
また日本語で自己紹介を行ったKENTAIP(ケンタイP)氏には日本側から「どこで日本語を学んだのか?」とのドイツ語での質問があり、これに対して日本語で「もともと日本の文化に興味があり、大学でも日本語を学んだ」と答えた。自分のハンドル名も武道が好きなので「剣体(KENTAI)P」と名乗っているという。
日独の国際交流らしくお互い相手の言葉での質疑応答だった。日本側ではドイツ語での質問の意味が分からず、「日本語でおk」などとやじが飛んでいた。
夕食後、この日のハイライトとなった「人形浄瑠璃の方法論 - 初音ミクに連なる系譜」が披露された。「初音ミクは人形浄瑠璃である」との説を唱えるアスキー・メディアワークスの福岡俊弘氏の招きで、大阪の人形浄瑠璃(文楽)の人形遣い吉田幸助氏らが登壇、文楽の解説および実演が行われた。
吉田氏は今回のボカコンの予習として、初音ミクの3DソフトMikuMikuDanceによって制作された動画を観て「あまりの動きの凄さに敗北感を感じた」とのことであったが、文楽での人形遣いの説明の後、文楽で人気ボカロ曲「メルト」を舞う実演が行われた。
普段初音ミクを始めとするボーカロイドのPVを見慣れた参加者にも、文楽の「どうやって人形に感情を表現させるか?」というプロの凄さを見せつけられ、終演後拍手の嵐となった。また観客の反応に感極まった吉田氏も目に光るものをにじませ、日本に古くから伝わる大衆芸能と現代世界各地の若者を魅了するボーカロイドとの見事な融合を実感した。
今回のボカコンは本大会を運営するための準備大会という位置づけであったが、数十人から始まったSF大会が現在参加者1000人を越す大会として毎年開催されたり、SF大会から生まれたGAINAXが今や日本のアニメ業界で重要な位置を占め、同じくSF大会から派生したコミックマーケットが日本のコンテンツの苗床として機能していることを考えると、ボカコンの今後にも期待が高まる準備大会だった。
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