電王戦第2局は炎上を経てどうなったか ネタキャラ対決は「カツラ落ち」のガチンコ勝負に
対局前の炎上が話題となった第2局は、誰もが認める大熱戦の将棋に。
プロ棋士と将棋ソフトによる5対5の団体戦「第3回将棋電王戦」の第2局が、両国国技館で行われました。
対局者は伝説のプログラマー磯崎元洋さんの「やねうら王」と「光ってる方のサトシン」こと佐藤紳哉六段。開幕前から両対局者のコミカルなキャラクターで「ネタキャラ対決」と言われていた本局ですが、直前の「やねうら王ソフト改変問題」が炎上する事態となり、当日はかなりシリアスな雰囲気に。カツラをかぶるパフォーマンスが期待された佐藤六段も和服を着用しての戦闘態勢で登場し、コメントでも将棋用語の駒落ちになぞらえて「桂(カツラ)落ち」と書かれるガチンコ勝負となりました。
衝撃の初手
将棋の初手は角道や飛車道を開ける手がほとんどですが、先手のやねうら王が選んだのは、そのどちらでもない1六歩の端歩突き。初手をランダムで選ぶやねうら王の中でも、この手を選ぶのは1000分の1の確率だということで、プロの対局でも実例の少ない珍しい幕開けとなりました。長考派の佐藤六段は序盤から慎重に時間を使い、コンピュータの振り飛車対人間の居飛車穴熊という電王戦初登場の戦型に。ゆっくりした展開のまま昼食休憩を迎えます。
この1局を通して印象的だったのが、佐藤六段の険しすぎるほど険しい表情。終始、泣いているような怒っているような表情で考え続けており、普段の「スベり芸」を披露している陽気なイメージとはまるで別人です。先崎学八段は、第1局で菅井五段を完全に押さえ込んで勝利した習甦を「習甦は、なにげなく鬼であった」と表現しましたが、サトシンは露骨に鬼でした。顔が。
ニコ生も盛況
ニコファーレでの大盤解説や現地中継にも多数のゲストが登場。現地には「SSF(佐藤紳哉ファミリー)」のメンバーが多数来場し、ポーカー世界チャンピオンの木原直哉さんなどもニコ生に出演。応援に駆けつけたメンバーの中には棋士以外の著名人も多く、誰からも愛される佐藤六段の人柄がうかがえました。ただ、隣のSSF控え室からドンドンと床を踏み鳴らしながらの応援歌の大合唱が聞こえてきた時にはちょっと怖かったです。
また、視聴者の棋力アンケートでネタ項目の「竜王・名人」が17.9%と発表された直後に、本物の森内俊之竜王・名人が中継で登場するといった神展開も見られました。
大熱戦の終盤戦
夕食休憩明けには、局面もいよいよ佳境に。やねうら王が桂馬を損する手順に踏み込んだ辺りでは佐藤六段有利の見方が強かったものの、その後佐藤六段に見落としが出て評価値はやねうら王に大きく傾いていきます。
圧倒的な計算力で終盤に無類の強さを誇るというのがコンピュータ将棋の通説。しかし、ここでやねうら王にまさかの疑問手が出て大きく差がついた評価値が再び接戦に揺り返します。普段は土俵がある場所に設置された対局場で、佐藤六段はまさに土俵際の粘りで観客を沸かせます。ニコ生視聴者の形勢アンケートでも、判断がころころと変わり熱い手のひら返しが繰り返されました。
終局
しかし、序盤の長考が響いた佐藤六段はここで持ち時間を使いきり1分将棋に。最後はきわどい局面でも「震えない」コンピュータの強さを見せつけたやねうら王がしっかりと佐藤玉を寄せきり、95手で佐藤六段の投了となりました。
佐藤六段は終局後、「プロなら勝たなければいけない展開だった。プロが弱いのではなく、自分が弱いので負けたことが悔しい」とコメント。磯崎さんも「多分、練習対局では佐藤先生が勝ち越していると思う。やねうら王の弱点を突くのではなく、正面から堂々とぶつかっていただいたことに感謝したい」と対局者をたたえました。
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