今年もいくよー! 「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい! 2015:虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第37回(3/3 ページ)
昨年に続き、2014年を振り返る特別企画として、虚構新聞社主・UKによるお気に入りマンガベスト10を発表します!
第6位「薄花少女」(三浦靖冬)
次は「サンデーGX」(小学館)にて連載中、三浦靖冬(みうら・やすと)先生の「薄花少女」(~2巻、以下続刊)。残念ながら昨年休刊した「IKKI」から移籍連載ですが、昨夏金田一先生に「何かおすすめのマンガありますか?」と尋ねたときに、「おもしろいよ!」と勧めていただいたのが本作を手に取ったきっかけ。
一人暮らしの青年・古糸史のもとに、実家で家政婦をしてくれていた数えで80の「ハッカばあや」が幼女になって史を訪ねてくるというお話。中身はれっきとしったハッカばあやなのだけど、ご飯の支度など家事全般の世話を焼いてくれるという幾ばくか背徳的な感じが本当に魅力的で、これがきっかけで自分の中の新しい扉が開いてしまったらどうしようかと不安を覚えるレベル。読んでもらえば分かるのですが、ばあやの何気ないしぐさの端々から得も言われぬフェティシズムがあふれているのも見どころです。
7・8位「恋命」シリーズ(三月薫)/「キスしてもいいころ」(菅田うり)
続いては少女マンガから2作品を紹介。
まずは「ザ・デザート」(講談社)にて連載、三月薫先生の「恋命(こいのみこと)」シリーズ(~2巻)です。街のはずれにある小さな神社におわす2人の神様少年・結(むすび)と縁(えにし)。縁結びの神社として参拝者の恋の悩みを解決するため、ときに勇み足になりながらも、最後の一押しを与えるのが2人の役割。
1話完結でとても読みやすく、結と縁の2人は浅野りん先生の名作「CHOKOビースト!!」(全4巻/マッグガーデン)に出てきた天狗の双子・飛鳥と羽鳥みたいだなあ、などと、割とほのぼの読んでいたのです。
が! 今年発売された第2巻で明らかになった、2人が神様に“なる”、その過去を知って「これは少女マンガの枠としてではなく、もっと広く読まれるべき!」と思い、今回取り上げました。上から目線で恐縮ですが、今年最も「化けた」印象の強い作品で、特に特に2巻の最終エピソードは猫を飼ったことのある人なら必読のガチ泣きエピソード。まだ新人さんということで、社主が今後の活躍を注目している作家さんの一人です。
もう1冊は先日まで「デザート」(講談社)にて「とにかくキミが。」(全2巻)を連載しておられた菅田うり先生の短編集「キスしてもいいころ」(全1巻)。
少女マンガの魅力の一つは女子読者が主人公と同じくキュンキュンできるかどうかなのだろうと思うのですが、残念ながら社主は野郎なので、そういう意味で本作に登場する怖そうだけど実は……な先輩や担任教師にキュンキュンするのは難しいです。
それでもこれをおすすめするのは、登場する女の子のかわいらしさです。ちゃんとキュンキュンしている女子読者から「なに邪(よこしま)な目で見てんだ、こら!」と背後から蹴り倒されそうですが、どの子も見た目・性格ともに事実かわいいから仕方ない。本連載の記念すべき第1回「となりの怪物くん」で、世間の夏目さん推しの声に抗い、メガネ委員長大島さんを全力で推した社主ですが、第4話「眠れる男」に登場するメガネ委員長・土田さんも同じくらいかわいいです。なので大島さん推しの男子にはぜひ読んでいただきたい。
第9位「ひとよひとよに乙女ごろ」(今村陽子)
次は今村陽子先生の「ひとよひとよに乙女ごろ」(全1巻/少年画報社)です。
帝国軍人の青年・黒崎数馬は軍の強化兵士を作る実験の過程で「乙女化」してしまい、元に戻るまでの間上官・櫻小路中尉の元に居候することに。「女など好かん!」と、ガチガチの陸軍青年だった黒崎が櫻小路中尉の妹・日向子とともに女学校に通い、日向子との触れ合いを通して男の心と女の体の間で揺れ動く心理は「TS(transsexual)」と呼ばれる性転換ものならでは。
TSとしては昨年、少女マンガの方面から小椋アカネ先生の「彼女になる日」を紹介しましたが、今回は青年マンガの方面から本作をチョイスしました。青年マンガということでエロな描写もありますが、エロが苦手な社主的にもギリギリ許容範囲内。それまで女性というものに興味のかけらも持たなかった黒崎が乙女化の経験を通じて、このまま女で居続けるのか、それとも男に戻ろうとするのか、彼の最後の決断も含め「彼女になる日」との併読をおすすめしたいです。
第10位「なめよん」(河合真吾)
さていよいよ最後になりました。最後は原作・ダンボールなめこさん、作画・河合真吾さんの「なめこタイムDX4コマ集 なめよん」(KADOKAWA)です。人気アプリ「なめこ栽培キット」でおなじみのキャラクター・なめこの公式サイト「なめこぱらだいす(なめぱら)」にて連載されてきた4コママンガに描き下ろしを加えた1冊。
社主は数十匹のなめこぬいぐるみが部屋にあふれるほどのなめこファンなのですが、そんなファンにとってこの「なめよん」は数あるなめこ関連書籍の中でも特にすばらしい1冊なのです。
まず何より実際にまんがを描いているのが、なめこのキャラクターデザインを手掛けている河合真吾さん。普段はイラストとしてしか見ることのできないなめこたちが表情豊かに動き回ります。「河合先生のなめこマンガが読めるのはなめよんだけ!」かどうかは定かでないですが、なめこ好きにとって河合さんご本人の絵で読めるというのはそれだけですごい価値なのです。
また、なめこの広報として日々忙しくする「ダンなめ」ことダンボールなめこさんによる原作も時事やネットの流行をしっかりネタに織り込んであって面白い!
「まだ梅雨明けないんですよね?」「やったーーー!」「明けてるじゃないですか!」「やだーーー!」(第153話「梅雨明け」より)みたいに、なめこのことを詳しく知らなくても、日々「ねとらぼ」を読んでいるようなネット文脈に敏感な人がくすっと笑えるネタが多いです。
それに加え、収穫されたなめこたちが荷台に載せられて斜陽の彼方へと消えていくドナドナオチや、「1コマ目に戻る」的な無限ループオチが少し目立つあたり、「これ、子どもに読ませる気ないだろ」と。何ともブラックな解説文が印象的な「なめこ図鑑」同様、お子さま相手だけでない、こういう懐の広さがなめこの魅力なのだろうなと「なめよん」を読みながら、あらためて感じ入った次第です。
2015年もよろしくお願いいたします
さて、昨年より手短に済まそうと思ったはずなのに、やはり今年も長文になってしまいました。今回特におすすめした「ハクメイとミコチ」、「メイドインアビス」の両作はマンガ好きのみならず、漠然と「久しぶりにマンガ読んでみようかなあ」と思っている人にもぜひ読んでほしい作品です。
また完結作については、最後まで尻すぼみせず魅力を維持し続けたという点で、その良さを保証できます。それ以外の作品でも、もしこの紹介を読んで心の片隅で「ん?」とどこか引っかかりを覚えたなら、それは良い作品と出会うきっかけかもしれません。その縁を結ぶ端緒になれれば、社主として、いやそれ以前に1人のマンガ好きとしてこれほどうれしいことはありません。
昨年1年間、ねとらぼ読者のみなさまのおかげで1度も休むことなく連載を続けることができました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。メガネ女子好きと百合人口の拡大をもくろみつつ、今年もおもしろいマンガを1冊でも多くご紹介できればと考えております。
それでは本年もよろしくお願いいたします。
「このマンガがすごい!」にランクインしなかったけどすごい! 2015 結果
- 【第1位】「ハクメイとミコチ」(樫木祐人)
- 【第1位】「メイドインアビス」(つくしあきひと)
- 【第3位】「夏の前日」(吉田基已)
- 【第4位】「まんがの作り方」(平尾アウリ)
- 【第5位】「めくりめくる」(拓)
- 【第6位】「薄花少女」(三浦靖冬)
- 【第7位】「恋命シリーズ」(三月薫)
- 【第8位】「キスしてもいいころ」(菅田うり)
- 【第9位】「ひとよひとよに乙女ごろ」(今村陽子)
- 【第10位】「なめよん」(河合真吾)
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