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企画展「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」を国立新美術館が開催 没・手塚治虫以降の作品から日本社会を読み取る

1989年以降のマンガ・アニメ・ゲーム作品から時代との関連性をみつける展覧会。

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 企画展「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム(仮称)」を国立新美術館(東京都港区)が6月24日~8月31日に開催する。手塚治虫さんが亡くなった1989年以降に制作されたマンガ、アニメ、ゲーム作品に焦点を当て、作品同士の関係性、同時代の社会やテクノロジーとの関係をみていこうとするものだ。 9月19日~11月23日には兵庫県立美術館(兵庫県神戸市)でも巡回展が行われる。

 展覧会の概要によると1989年以降の社会では、インターネットやスマートフォンの普及をはじめとするテクノロジーの進化、震災やテロ事件などによって、人々の意識やライフスタイルがめまぐるしく変化してきた。複合的メディア表現として私たちの日常に入り込んでいる日本のマンガ、アニメ、ゲームに触れることは、その時々の日本社会の重層的な側面を見ることにつながるという。

 展示は8つの章で構成。第1章「プロローグ:現代のヒーロー&ヒロイン」、第2章「テクノロジーが描く『リアリティー』―作品世界と視覚表現」、第3章「ネット社会が生み出したもの」、第4章「出会う、集まる―『場』としてのゲーム」、第5章「キャラクターが生きる=『世界』」、第6章「交差する『日常』と『非日常』」第7章「現実とのリンク」、第8章「エピローグ:作り手の『手業』」という順で作品を解説していく。

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 例えば第3章では、個人・同人制作や二次創作など、ネット社会を背景に新しいプロセスで生み出された作品を展示。第4章では、ゲームプレイヤーが実演者となって周りの観衆を巻き込むなど、「コミュニケーションの場」と呼ぶべく進化したゲーム作品を紹介する。各章の詳細は文末に記載。

国立新美術館では2月4日に開催発表会も実施

 2月4日には国立新美術館で、開催発表会とシンポジウム「日本から世界へ―マンガ、アニメ、ゲームによる文化発信と交流」も開かれる。シンポジウムでは国内外から各ジャンルの専門家を招き、日本の作品が海外でいかに受容されているかや、美術館での状況などについて議論を展開する。開催時間は午後1時から4時30分まで(開場午後12時30分)、定員220人(先着順)。

 さらに開催に先立って、展覧会公式書籍「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム(仮称)」も発売される予定だ。1989年以降3つのジャンルの流れについての論考、時代を象徴する作品の解説、年表などが盛り込まれる。執筆陣は、中野晴行さん、氷川竜介さん、さやわかさんなど。

展示内容の詳細

第1章「プロローグ:現代のヒーロー&ヒロイン」

 友情、正義の心、そして冒険・・・。第1章では展覧会のプロローグとして、1989年以降に誕生したヒーロー、ヒロインたちを紹介しつつ、マンガ、アニメ、ゲームが持ち続けてきた「王道」たる熱気あふれるテーマの作品を紹介します。

第2章「テクノロジーが描く『リアリティー』―作品世界と視覚表現」

 1990年代以降の情報通信技術の発達やインターネットの広がりは私たちのコミュニケーションの形を、そして情報の伝達速度や共有の仕方を大きく変化させました。また、デジタル映像技術の進歩は私たちに視覚表現の新たな可能性を提示し続けています。第2章では仮想現実や拡張現実、ロボットといったテクノロジーやネットワーク社会を背景とした世界観を持つ作品や制作技法として3次元CGなどのデジタル映像技術を駆使した作品を紹介します。

第3章「ネット社会が生み出したもの」

 デジタル技術を駆使した制作技術とインターネット社会の広がりによって、マンガ、アニメ、ゲームを作り、共有する構造は変化してきました。作品の共有は、作り手と作品の受け手(読者や視聴者、プレーヤー)を直接つなぎ、その関係性は、次なる創作にフィードバックしていくサイクルとなっています。インターネット上での情報共有やコミュニケーションが新たな作品を生み出す土壌となっているといえるでしょう。第3章では個人/同人制作や二次創作など、ネット社会を背景とした、新たな創作プロセスの中で生み出された作品を紹介します。

第4章「出会う、集まる―『場』としてのゲーム」

 ゲームはひとり部屋にこもって遊ぶもの…、それは今や古い見方です。キャラクターの身体を借り(コントローラー越しに)「拳」で語り合いながら対戦すること、そして、インターネット上の「仲間」と共同しながらミッションをクリアすることなど、ゲームの世界では他者とのコミュニケーションが必須のものとなっています。

 また、音楽ゲームでは、プレイすること自体が一つのパフォーマンスと言ってもよい作品も多く作られてきました。プレーヤーは自身が遊ぶだけに留まらず、作品の実演者としての役割を持ち、作品の「完成形」を押し広げる役割を担うようになっています。そして、そのことはゲーム作品をプレーヤーとその周りの観衆を巻き込んだ体験の共有へと導きます。第4章では、「コミュニケーションの場」と呼ぶべく進化したゲーム作品を紹介します。

第5章「キャラクターが生きる=『世界』」

 「プロ野球チームの監督になってみたい」、「アイドルをプロデュースしてみたい」・・・、現実ではかなわない夢も、マンガ、アニメ、ゲームの作品の上では体験できます。特に表現や技術の進歩によってキャラクターが歌い、踊れるようになったことで、音楽はキャラクターが持つ重要な「個性」となっています。今ではボーカロイド・ソフトウェア「初音ミク」を文字通り「プロデュース」し、楽曲をインターネットに公開することで、真の意味で「プロデューサー」になれるのです。

 また、90年代以降、キャラクターは物語のストーリーに必ずしも従属した存在ではなくなりました。さまざまな「個性」を持ったキャラクターが集まることで、キャラクターが生きる空間としての「世界」が生まれ、そこに群像劇として物語が生まれていきます。作品の受け手はその「世界」に時に入り込み、時に俯瞰しながら、作品を受容します。第5章では、アイドルの卵、プロ野球選手、競走馬、歴史上の人物、さまざまな「キャラクター」たちの生きる「世界」を表現した作品を紹介します。

第6章「交差する『日常』と『非日常』」

 第6章では日常性と非日常性がさまざまな物語構造で入り混じった作品を紹介します。物語の中の非日常性と共に描かれている日常的な生活や風景は、見る者と作品世界との距離を縮め、身近なものとしてある種のリアリティーを与えます。

 また、日常的な描写の中に織り込まれた非日常性は、私たちの現実世界と物語世界の一体性を問うてきます。人間関係という最も日常的な要素が非日常性と深く関わりあうという不可思議な関係性を提示する作品など、「日常」と「非日常」がさまざまに交差した作品を紹介します。

第7章「現実とのリンク」

 マンガ、アニメ、ゲームは時に現実の社会から強く影響を受けた作品を生み出します。特に幾度かの震災は、強い影響を与えました。3つのジャンルのなかでもマンガは世相に素早く反応し、その時々に応じた多彩な題材を作品として描いてきました。働くこと、作ること、日本の伝統文化を継承すること・・・、90年代以降のマンガはこれまでに数多く描かれてきた学校や恋愛、スポーツといったテーマに加え、より多彩で、実社会との接点を持った題材の作品を生み出し続けています。第7章では、現実とリンクした多様なテーマを持つマンガを中心に紹介します。

第8章「エピローグ:作り手の『手業』」

 マンガの描線やコマ割り、アニメの動きや色彩設計、ゲームにおけるリアルな映像表現、これらはITや映像技術の進化だけで実現できるわけではありません。技術を使う作り手の「ワザ」や「思い」が込められてこそ、世界に類を見ない映像表現が生まれ、見る者に感動をもたらすのです。展覧会の最終章では、作品の作り手に注目し、その「手業」を、作品を通して紹介します。

黒木貴啓

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