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自称「一部の人に理解される」という怪しすぎるカレー屋「サリサリカリー」に行ってみたら激ウマだった!

お店のWebサイトには、「一部の人に理解される」「千年前から変わらぬレシピ」「最高の美味は消え味」「ものすごく惚れた人に口の中を撫で回される感じ」「皿の上に母がいる」などと書かれています。うん、よくわからん。

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 まずはこちらの画像をご覧いただきたい。これは、神奈川県にあるカレー屋のWebサイトである。

一部の人に理解される……

 「一部の人に理解されるサリサリカリー 千年前から変わらぬレシピ 水を一切使わない味付け塩のみ」という文言が書かれているが、この時点ですでにツッコミが間に合わない。「一部の人」とは? そもそも、なぜこのフォントにしてしまったのか……。

 さらにスクロールすると、ますます謎が深まってしまった。

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皿の上に母がいるとは……?

 「最高の美味は消え味(消え味 消え味 消え味 消え味) ものすごく惚れた人に口の中を撫で回される感じ 皿の上に母がいる」。……はい。

なんなの?

 “スーパーデザート”の「ハニートラップ」(500円)を食べると、食べた人同士は必ず目を合わせる、ということと、「あなたが来ないと潰れちゃう」と訴えかけてきていることは伝わった。何から何まで、何も分からないので、現地に行って確かめてみることにした。

 「一部の人に理解される」とは? 「皿の上に母」とは? 「消え味」とは? 「ものすごく惚れた人に口の中を撫で回される」ような味なの? 「スーパーデザートは食べた人同士は必ず目を合わせる」の? 問いただしたいことはたくさんある。

 横浜の白楽駅を降りて徒歩10分弱。Webサイトにあった文言をここでも主張している外観が、存在感を放っていた。

怪しさ満点
ベッキーが絶賛していらっしゃる

 店内に入ると、北欧あたりでスープを煮込んでいそうな、柔らかいクッキーを焼いていそうな、そんな風貌のおばあさんが切り盛りしていた。メニューはカレーのセットとデザートのみ。注文の品が出てくるまで、Webサイトを見てつのらせた疑問の数々をぶつけてみることに。

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―― Webサイトがすごくて……その、気になって来てみたんです。

お店のおばあさん 「ホームページはね、思いつきだね」

―― えっ。思いつき。

お店のおばあさん 「思いつき」

―― はあ……。

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エイプリルフール用のWebサイト。6月現在も戻すのを忘れてこのままになっている

―― 「一部の人に理解される」、とはどういうことでしょうか?

お店のおばあさん 「みんながみんな同じ理由で食べに来るわけじゃないでしょう? だから全員ではなくて、一部」

―― ???

お店のおばあさん 「みんなに理解されたら、お店に入りきらないから。このお店に入れるだけの人が理解してほしいって意味なの」

―― なるほど……。じゃあ、「あなたが来ないと潰れちゃうお店」、とは?

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お店のおばあさん 「平日はね、週末よりもお客さんが少ないの。だから来てくれないと潰れちゃうの……」

 と言いながらも、札幌にある第一号店は16年前から、この横浜のお店は8年前から続いている上、2014年に、ガチでうまい横浜の商店街カレーNo.1決定戦「ガチカレー!」で金賞を受賞しているという。味には期待できそうである。

紙ナプキンもなんか変

 なお、「皿の上に母がいる」のフレーズは、卓上に置いてある紙ナプキンにまでプリントされていた。この紙ナプキンは名刺代わりに作っているそうで、「思いついたフレーズをプリントしてみた」のだという。Webサイトのみならず、これも思いつきでしたか、そうですか。

 さて、そうこうしているうちに、カレーのお出ましである。

もろもろっとした感じ

 ほろほろしたチキンが、お米に絡みつく。

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 ひと口食べると、旨味の詰まったエキスが口の中に広がった。と思ったら、口の上でスッと味が消える。これは……確かに“消え味”という表現がしっくりくる。しつこすぎず、あっさりとしているわけでもなく、ひと口、またひと口食べたくなる不思議な食べ心地である。

 このカレーは、パキスタンのパンジャーブ地方の一般家庭で食べられているもの。鶏肉から皮などの脂っぽい部分を取り、玉葱を甘みが出るまで煮て、ニンニク、ショウガ、鶏、塩、ターメリック、カイエンペッパー、トマトなどを入れて、素材から味を出すために7~8時間弱火で煮込んでいるのだそう。

 あいにく私が1人で行った日の店内には、“目を合わせる”相手はいなかったが、せっかくなのでスーパーデザートも注文してみることに。

店内の掲示物では、目を合わせることをやたらと強調している
スーパーデザート「ハニートラップ」(500円)

 クリームチーズに蜂蜜がかかっているのかと思いきや、なんとこれは市販のブルガリアヨーグルト。だが、クリームチーズのような固さで、カスピ海ヨーグルトに近いもったり感。こっくりと甘くて止まらなくなる味。これは、“スーパー”なだけある……! お店のおばあさんが「これを誰かと一緒に食べたら、本当にみんな目を合わせるよ」としきりに言うのを聞きながらたいらげる。市販のブルガリアヨーグルトがどうやったらこんな食感になるのかは企業秘密と言われてしまった。

 「新規のお客さんは少なくてね。リピーターが多いの。リピーターさんのおかげでうちの店は続いているようなものよ」とお店のおばあさんは言う。そりゃあ、あのWebサイトと外観だったら、そうでしょうよ! と叫びたいのをこらえて、お店を後にした。おばあさんはこうも言っていた。「一度食べると、体が味を覚えてクセになっちゃうのよ」。帰りの電車の中で私は、すでにまた食べたい気持ちになっていたのだった。私も「理解する一部の人」の仲間入りである。

朝井麻由美(@moyomoyomoyo)。フリーライター・編集者・コラムニスト。ジャンルは、女子カルチャー/サブカルチャーなど。ROLa、日刊サイゾー、マイナビ、COLOR、ぐるなび、等コラム連載多数。一風変わったスポットに潜入&体験する体当たり取材が得意。近著に『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。構成書籍に『女子校ルール』(中経出版)。ゲーム音楽と人狼とコスプレが好き。

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