彼女の恋は気づかれない 「聲の形」もう一人のヒロイン・植野直花:あのキャラに花束を
正直すぎた乙女はいつも空回り。
大今良時のマンガ「聲の形」が、京都アニメーション制作、山田尚子監督で劇場アニメ化されます。
小学生の頃、聴覚障害者の西宮硝子(にしみやしょうこ)をいじめていた石田将也(いしだしょうや)。高校になった石田は、西宮に対して罪を償わねばいけないと感じます。しかし西宮は彼を恨んでいなかった。2人は、コミュニケーションの難しさの中で、もがき苦しみます。
嵐のような少女
2人の物語が中心。しかしもう一人のヒロイン、植野直花(うえのなおか)にも注目してほしい! 黒髪ロング。スレンダー。ものすごく気が強い子です。
石田が小学生の時、もっともつるむことが多かった女子の植野。西宮硝子を石田と一緒にいじめていました。しかしいじめによる被害が発覚してからは、すっかり疎遠に。
時間が経ち、高校に入ってから。石田は植野と町で偶然植野とすれ違います。
植野がつけた、唐突な猫耳に猫しっぽ。実はバイト先の猫カフェの店員のチラシ配りのため、というオチがつくのですが、いやいやそれにしても、町中で猫耳つけ始める女子高生いたら、ぎょっとするよ!?
嵐のような彼女。唐突に現れては、色んな物(例・石田と西宮の時間とか)をめちゃくちゃにして去っていきます。
植野は、基本的に西宮硝子のことが、小学校の頃からずっと嫌い。理由は「石田が好きだから」。ところが石田は、高校に入ってからは西宮といつも一緒に居る。そりゃあ西宮に嫉妬もするでしょうよ。石田と一緒にいたい。石田と仲良くやっていた小学校時代を取り戻したい。なのに。
楽しい小学校時代取り戻し作戦には、大きなリスクを伴います。間違いなく誰かに嫌われる。でも構わない。後ろを振り向かない覚悟を決めて、ひたすら思いついたら即実行。時には色んな人のデリケートな部分を踏み潰します。決していじめていいわけじゃないし、人を傷つけていいわけない。わかってる、でも進むしか無いじゃん、と。
絶対に嘘はつかない生き方
植野は、もーのすごく口が悪い。「嫌い」「うざい」「キモい」。言われたら傷つく言葉をバンバン言います。人間誰しも、嫌いな人、苦手な人がいるのは、仕方ない。それを言わないことで、コミュニケーションは円滑なものになります。ところが植野は好きなこと嫌いなこと、全部正直に言っちゃいます。
植野が本音をバンバン言う時、彼女の本心をある程度わかっていないと、しんどい。一部の人たちからは、どうしても植野は距離を置かれます。傷つけてるのは事実です。
何もかも正直に言って、時に自分も嫌われて、それでも次の行動に一歩踏み出すのは、相当に体力を使います。無論、大失敗も多い。後悔することは山ほどに。
「私がやること全部裏目に出るね……ホント……自分がやんなる……!」(5巻133ページ)
彼女の長い脚
植野は、全部のシーン(バイト中と、ラスト以外)で自分の脚が目立つ服装をしています。ミニスカート、ホットパンツ、短パン、あとパンツ。生脚度100%。活発に動きまくる+時に手が出る足が出る彼女らしい服装です。
ぼくには、彼女が心をむき出しにしている表現に見えました。しっかり脚が描かれているコマは、大体彼女の言いたいことがズバンと書かれている。
石田は今、西宮をいじめていた自分を殺したいくらい後悔しています。でも植野は、迷わずガンガン進んで、好きなものを好き、嫌いなものを嫌いと言える、自分に正直だった彼が好きだった。だから彼女は今、迷わずガンガン進む。失敗して後悔しても、とにかく進む。
悲しいかな、そこまで自分をさらけだしても、石田は全然振り向いてくれないし、西宮を好きになれない。
走っただけ傷ついて、好きだって気持ちは全然伝わらなくて。これでいいのかなと迷うこともある。「私……さあ ダメな奴なんだァ……」(7巻157ページ)
ただ、石田はちゃんと彼女のことを見ていました。「植野は今のままでいいと思うよ」「好き嫌いだけが全てじゃない 何より時間はたっぷりあるんだ 俺も頑張るからさ」(7巻159ページ)
植野がどうしても石田を諦められない気持ち、ちょっとわかるよ。彼女はいじめっこ。でも悪役ではない。不器用で傷だらけな、一人の女の子です。
(たまごまご)
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