中村悠一×杉田智和がダラダラとゲームで遊ぶだけの番組「東京エンカウント」がなぜこんなに面白いのか:ねとらぼレビュー
薄い本が出せるくらい濃い絡みを堪能!
その昔、といってもそんなに遠い昔ではない話。いかなアニメおたくといえども声優さんのお姿をテレビで見ることなんて、めったになかったのですよ。それが今や、アイドルアニメの中の人たちがNHK総合で歌い踊り、紅白にも出ちゃいそうな勢い。フツーの視聴者の皆様からの「キツイ」なんてドストレートな感想にも「渕上舞でぐぐると、HKTより声優が先に出るんだぞ」と涙目で言い返せるくらいにはなったいい時代です。
そして、もっと自慢してもいいのならば、「アニメ好きご用達のCSチャンネルの番組にだってとんでもなく面白い番組があるんだぞ」と『バンゲリングベイ』起動中のファミコンのIIコンマイクに絶叫したいくらいなんですよ!
そう! 「東京エンカウント」は面白いのだ!!
「頭の中は俺らまんまじゃん」感が面白い
「東京エンカウント」は、AT‐Xで放映中のゲーム番組。レギュラーMCの中村悠一さんと杉田智和さん(+ゲスト)が、ダラダラと新旧ごった煮のゲームで遊ぶという内容です。年8回の放送で、現在は第2シーズンの「東京エンカウント弐」となって、第37回(スペシャル回含む)までが放送されています。
エンディングを目指すとかノルマをクリアするなどのハードルは一切なし。ホントにゆるーくゲームをするだけ。「もうやめちゃっていいよね」となるときもあれば、ゲームによっては「これ、ずっとやってることになるんだけど」ということも。それくらいの自由さです。「ダンシングアイ」(※)の軍服娘を一発で脱がせるくらいのプレイはありますが、超絶プレイが披露されるわけでもない……なのに、面白い。なぜか?
それは、MC二人の芸達者さに加えての「頭の中は俺らまんまじゃん」感ではないでしょうか。格ゲー(特に3D)好きで「ラブプラス」では寧々さんと付き合う前に終わってしまった中村さんと、愛花をツインテールメガネ姿にしていることから“その筋”であることを容易に想像できる「ギャルゲー大好き」杉田さんの嗜好(しこう)のバランスが絶妙で、自分がその場にいたら思わずツッコミを入れるであろうセリフを両氏のどちらかが言ってくれるわけです。
ゲーム番組の大家「ゲームセンターCX」は、有野課長のボヤキによる“友達の家でプレイを見ているような感覚”が面白さの大きな要因になっていると思いますが、「東京エンカウント」は“友達の家感”に加えて“俺がそこにいる感”をプラス。
そりゃ、「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド2」の1面ボス(名前がジャッジメント。首がない巨体が本体に思われがちだけど、倒すには一緒にいる小さい悪魔を撃つ必要がある)の登場で「ジャッジメントですの(※)」って言われたら笑ってしまうし、「“新井(里美)さん=首なし巨体”じゃなくて、あっち(悪魔)撃って」なんて言葉には「新井さんじゃねーよ!」ってツッコみたくなるんです。そして、そのツッコミをしっかりどちらか(このケースでは中村さん)がやってくれるわけだから、もうスッキリだし笑えるってものです。古くからのゲーム+アニメファンなら「タイムギャル」のミス後のシーンをみると“薄い本”を……と思っちゃいますよね。現最新回では、その展開も見られますよ。
さまざまな声優情報(という名の風評被害案件)も
そして、MC二人の芸達者ぶりにも触れておかないといけません。ゲーム内に登場するセリフテキストは、簡易アフレコ現場となり、時にはキャラ設定によって声色を変えてくれる至れり尽くせりっぷり。さらには、ピンポイントで投入される人気声優さんの声マネの数々。第1シーズンでは、若本規夫さんや古谷徹さんなど。第2シーズンでは、増岡弘さんや安元洋貴さんなどの声マネを聞くことができます。特に、増岡弘さん(マスオさん)の声マネは秀逸で、トカレフを持って20人やってしまうマスオさんの武勇伝(穴子さんがリボルバー派)も聞くことができますよ。ゲームに対するスタンスと細かい芸が絶妙にブレンドされたトークはゲーム好き・アニメ好きならばどストライクな内容になっています。
あと一つだけ。声優さんの番組ですから、さまざまな声優情報も出てきます。「江口拓也さんが『(アイドルマスター)シンデレラガールズ』のトレーナーさんのスパッツをモグモグしたいと言っていた」とか、「岡本信彦さんが、悠木碧さんの高校時代に“ぜひ制服でアフレコに来てほしい”と懇願していた」などなど。主に男性声優さんに対する熱い情報(風評被害案件?)が飛び交っていることもお伝えしておきます。
ここまでは「東京エンカウント」の面白さを紹介してみましたが、ダメな点を挙げるとするのならば、どうしても内輪ネタに見えることもありますし、好きな声優の「スパッツモグモグ発言」なんて情報は聞きたくなかった――といったこともあるかもしれません。ですが、そこはCS番組。取捨選択はユーザー次第です。
私としては、この面白さで、その影響力が「だれもいなかった『いっき おんらいん』に数名ログインする」程度なのは悲しすぎます。ここまでで少しでも「面白そう」と思った方は、ハードルは高いですがAT-Xで視聴してみてはいかがでしょうか。11月は最新作の#37・38が放送中で、もしかすると年末年始に一挙放送があるかもしれませんよ。
(小川哲弥)
初掲載時、杉田さんの名前が智一となっておりましたが正しくは智和でした。お詫びして訂正いたします
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