二次創作に励む艦これ提督に勧めたいウォーゲーム2016年版:あのトムクランシーも使っていたんですって
戦闘場面を“それっぽく”書くのにこれが意外と役に立つんですよ。
「戦闘場面の設定がそれっぽくならなくて」と悩む二次創作提督さんに朗報
相変わらずユーザーの数を増やしている艦これですが、これも、幅広い付き合い方ができるからこそ。そんな、幅広い付き合い方の1つに「二次創作」があります。艦娘たちそれぞれが抱える史実的なエピソードを盛り込んだ艦これ二次創作には、私のようなウォーゲーマーおじさんも「うぉおお!」となるような興味深い作品が多々あります。
艦これ二次創作では「史実的な関係をベースにした艦娘たちの交友関係」が主要なテーマとなっていますが、それとともに“フレーバー”として重要なのが「戦闘場面」です。この戦闘に関するプロットを“それっぽく”するのに意外と役立つのが「ボードウォーゲーム」だったりします。「レッド・オクトーバーを探せ」などのミリタリー小説作家として有名なトム・クランシーが「レッド・ストーム作戦発動」の執筆でウォーゲームの「ハープーン」を使って戦闘場面の考証を行ったのは有名な逸話です。
というわけで、艦これ二次創作で軍事的作戦的戦闘的なプロットを“それっぽく”してくれるボードウォーゲームをルールが分かりやすくてゲーム時間も比較的短いタイトルを中心にリストアップしてみましょう(いつものようにむりやりな導入)。
資源を溶かしながら太平洋戦争を艦娘たちと戦いたいなら「太平洋戦史」
太平洋戦争を1941年12月8日の真珠湾攻撃から大勢が決まった1944年前半まで戦う「太平洋戦史」は、駒として空母、戦艦、重巡洋艦が1隻ずつ登場します(コマンドマガジン124号付録では水雷戦隊が登場するオプションのユニットとルールを用意)。太平洋戦史には軍艦の駒のほかに、「日本軍の慢心」や「飛行場砲撃」といった艦これ提督さんもよく知るエピソードを反映したイベントカードも登場します。
ただ、このイベントカードは軍艦の駒を動かす「資源カード」としても使わなければなりません。このイベント/資源カードを日本軍は半年に2枚だけ、それも、産油エリアのボルネオを占領している場合だけ追加できるのに対して、連合軍は3枚、4枚、8枚、10枚と圧倒的な資源で反撃してきます。「緒戦は連戦連勝なのに最後はわずかな資源と戦力で苦戦する娘たち」を太平洋戦史は描き出してくれるのです。
「いい?瑞鶴、行くわよ!機動部隊、出撃!」と戦いたいなら「激突南太平洋」
「敵より早く発見して! 敵より早く攻撃隊を発艦させて! 敵より早く空母を撃沈する!」というスリルに満ちた空母戦を再現する「激突南太平洋」は、艦これイベントのベースとなった第二次ソロモン海戦や南太平洋沖海戦、そして、史実のMO作戦で起きた珊瑚海海戦、さらには、インド洋作戦で可能性があった日英機動部隊の海戦などのシナリオを用意しています。
登場するのは、日米英の空母や戦艦、重巡洋艦、軽巡洋艦などが1隻単位、そして、駆逐艦と輸送船、さらに、珊瑚海海戦で空母と誤認した油槽船が登場します。残念ながら有名なミッドウェー海戦のシナリオは収録していませんが、「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」のユニットはあるので、シナリオを自作して登場させることも可能です。
この空母戦ウォーゲームでは、3回の空母戦を連続して戦って勝敗を争うソロモンキャンペーンシナリオもあります。自分で機動部隊を編成して出撃するので、史実とは違う、自分だけの「決戦!鉄底海峡を抜けて!」の世界を作り出すことができるのです。
「絶対夜戦してよね、約束よ!」と言われたからには「アイアンボトムサウンドIII」
「いきなり目の前に現れた敵艦に必殺の酸素魚雷をぶち当てる!」とエキサイトする夜戦を再現するのが「アイアンボトムサウンドIII」です。登場するのは戦艦から重巡洋艦、軽巡洋艦は当然として、他のウォーゲームでは「複数で1駒」「1隻1駒だけど名前なし」の駆逐艦も艦名入りで登場します。
1隻の艦艇は、艦橋や射撃指揮所、砲塔1基単位で再現し、装甲値も舷側と甲板、砲塔のそれぞれで備えています。このように細かく艦船データを設定することで、軍艦の戦い特有の、「射撃指揮所被弾!火災発生」「第二主砲被弾!装甲貫通して沈黙!」「敵艦魚雷命中!舷側装甲貫通して浸水!速度低下!」というような“じわじわと傷ついていく”娘、ではなく艦の姿を描写します。不運な娘、じゃなくて、艦になると「弾薬庫被弾!装甲貫通して誘爆!」と豪沈してしまうこともあるのです。
「大和型戦艦、一番艦、大和。推して参ります!」というなら「聯合(れんごう)艦隊」
「聯合(れんごう)艦隊」は、アイアンボトムサウンドIIIと同じく、水上砲雷撃戦を再現するボードウォーゲームです。艦船データはアイアンボトムサウンドIIIのような「砲塔1基単位」という細かさではありませんが、その分、たくさんの艦船を容易に指揮することが可能になっています。
「聯合(れんごう)艦隊」では、太平洋戦争に参戦した数多くの主要国海軍艦船が登場するのも特徴です。日米英はもちろん、「ビスマルク」「リットリオ」などの独伊の枢軸国海軍からソ連海軍、そして、トルコ、ルーマニア、ポーランドといったマイナー国の海軍まで膨大な数の艦艇が登場。シナリオは太平洋戦争から北海、地中海、大西洋まで、実際に起きたものから北方領土における日ソ海軍の仮想戦まで41本を収録しています。もちろん、ボードウォーゲームなので自作シナリオを自由に作成できます。
12月8日は太平洋戦争が始まった日です。終戦から70年、開戦から74年たった日本では、国際関係でけっこうややこしく難しい問題がいろいろと表面化するようになってきました。技術や考え方が進化して70年前とは同じように考えることはできませんが、それでも、太平洋戦争でどんなことがあったのかを知ることは意味のあることだと思います。
艦これで日本海軍がどのように戦ったのかを知る人も増えました。ただ、艦娘、いや、日本海軍の艨艟(もうどう)はどんな戦いでも一方的に勝つことはなかったのです。実際の海戦ではどのように戦っても数多くの艦船が(乗っている将兵とともに)傷ついて沈んでいくことを、ボードウォーゲームを通して体感してもらえれば、とウォーゲーマーおじさんとしては切に思うのであります。
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