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ロマサガじゃないよロムサガだよ RPGを“サブキャラ”視点で描いた異色ファンタジー「Romsen Saga」が伝えるメッセージ虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!第62回

今回はゴツボ☆マサル先生のファンタジー作品「Romsen Saga(ロムセン・サーガ)」をご紹介。

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※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。長らく積みゲーになっていたニンテンドー3DSの「ゼノブレイド」を再開したら、寝食忘れるほどドハマりして、この2週間で4キロ痩せた虚構新聞の社主UKです。図らずもダイエットがはかどりました。

 さて、今回紹介するマンガは「月刊ビッグガンガン」(スクウェア・エニックス)にて連載中、ゴツボ☆マサル先生のファンタジー作品「Romsen Saga(ロムセン・サーガ)」(~3巻、以下続刊)。どこかで見たことのある雰囲気のタイトルだったりロゴデザインだったり、帯に「サガ」シリーズプロデューサーの河津秋敏さんがコメントを寄せたりしていますが、全くのオリジナル作品です。

「Romsen Saga(ロムセン・サーガ)」(~3巻、以下続刊)→ 試し読みページ

メインではなくサブクエストに焦点を当てた物語

 勇者ブレイヴ・バンディエラとその仲間たちが、世界を恐怖で包んだ「魔王」を討ち、封じてから500年。その魔王に復活の兆しありとの神託を受けた予言者ノストーラ・ダマスの進言により、第22代国王ケイオス・バンディエラは、第2王子ハンサム・バンディエラら選ばれし4人の勇者を北の地へと派遣する――。

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魔王が封じられたと伝えられる北の地へと旅立つ勇者ハンサム一行

 まさに王道RPGのような壮大な幕開けから始まる本作。「勇者一行、悪徳領主を成敗!」「勇者一行、ドラゴンを撃破!」と、これまた王道RPGのように順調にストーリーが進むのかと思いきや、王都では「関連グッズも売り上げ好調!」「宮廷漫画家による『勇者シリーズ』連載開始!」と、何だかおかしな展開に。

 そんな本作第1話は、北に向かった勇者一行ではなく、勇者ブームに沸く王都の防備を固める門番たちのお話。圧倒的な破壊力で騎士団をなぎ倒し、突如王都に迫ってきた3体の巨大なサイクロプス。しかし、このモンスターをたった1人、槍一本で瞬殺する男が現れます。

 男の名は「最強の門番」こと、ジミィ・モンバーン。勇者一行を上回るほどの実力を備えながら、その不憫な名前と地味な外見のせいか、自ら門番を志願し、「魔王が門番にさえぎられて王都に入れなかったら失笑ものですよねぇ」と、少々性格をこじらせてしまったジミィ。どうして彼が勇者一行に加わっていないのか――。誰もがそう思うことでしょう。

 勇者を選んだ国王ケイオス曰く、

「あの子ちょっと… 地味じゃん?」(売れないよ? グッズ)

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 …………。さて、そんなわき道にそれたエピソードから始まった本作ですが、次に登場するのは勇者一行にこっそりとついて回り、彼らが戦っている隙にダンジョンのお宝を頂戴したり、倒したモンスターから爪や角などを剥ぎ取っていったりするトレジャーハンター女子「ハイエナ・ボブ」こと、ジリアン・ノーマッドのお話。そして物語は「関わると世界に災厄をもたらす」と言い伝えられてきた2つの種族、エルフとドワーフの少年少女ショーター&ローリーの禁断の愛の逃避行、さらに王都に残る第1王子スマイル・バンディエラの話へと続きます。

 そう、もうお気付きのように、本作「ロムセン」はメインストーリーであるはずの勇者ハンサム一行の活躍について、ほとんど語られないのです。RPGで言えば、サイドストーリー、サブクエストばかり続いていて、肝心の勇者たちが今どこでどんなふうに戦っているのかは、あまりよく分かりません。これ全然王道じゃない!

「ハイエナ・ボブ」こと、ジリアンを襲うゴブリン(?)

 本当に世界に魔王の脅威が迫ってるんだかないんだか、本作はそんな緊張感の薄い、もっと言えば、ゴツボ☆マサル先生らしさがよく出た娯楽作なのですが、今回社主が「先生の作品の中でも、特に読んでほしい!」と本作を推す理由は、そんな楽しさだけではありません。

 本作は、単なるサブキャラたちの群像劇ではなかったのです。

本作が「ロムセン・サーガ」である理由

 それが分かるのは第5話、この作品の語り部であるという男、ミッテル=ダーク・E・ロムセンの登場によってです。神与の力によって、生まれたときから世界の大体の姿が見えているという彼が語る、「ここはアイーデ村だよ…」としか言わない老人の過去。RPGなら必ず町や村のどこかにいる、おなじみの人物ですが、なぜ老人は実はそこが「レカワ村」であるにもかかわらず、村人から「ウソばっか教えてんじゃねーよ!」と殴られるにもかかわらず、頑なにこの地をアイーデだと言い続けるのか。

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 そして、この老人の哀しい真実をただ1人知るロムセンは言います。

「『勇者』や『魔王』 この世界の主人公たちのことは どこかの誰かが描いてくれる」

「ならば私は そうではないもの そうではないこと」

「私にしか それが見えていないのならば」

本作の語り部、ミッテル=ダーク・E・ロムセン

 後の世に「歴史」として伝わらないこと、時の流れと共に皆の記憶から消えてしまうことを記録して伝える――、これこそ本作が「傍観者ロムセンによる歴史物語=ロムセン・サーガ」である理由なのです。

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 それまでライトなオムニバスだと思って読んでいた作品が、このように想像を上回る大きなメッセージを持っていたことに、社主は感動で鳥肌が立ちました(ちなみに、これだけ良いこと言ったあとのオチもおもしろいのでぜひご一読を)。

どんどんリンクしていく伏線

 さて、今ここまで内容紹介を読んでしまった読者なら、「もう作品を読まなくてはいいのでは?」と思ってしまうのではないでしょうか。だとしたら、それは大きな間違いです。本作が格段におもしろくなっていくのは、むしろこの「ロムセン」の仕組みが分かる第5話以降の2巻、3巻になってから。各話が積み重なっていくにつれ、それまで登場してきたキャラ1人1人の何気ない言動に込められていた伏線がどんどんリンクしていきます。

 例えば、最初に引用した第1話、国王ケイオスの「売れないよ? グッズ」という言葉。単なるギャグだと思っていたら、これもまた王国の歴史と深く関連しているのです。

 一見コメディ色が強いエンタメ作品ながら、何度も読み返すと、小ネタにしか見えなかったことまで実は意味を持っていたという、やられた感と空恐ろしさ。羊の皮をかぶったなんちゃらみたいな、読みやすさと読みごたえを両立させた良作であり、なかなか味わうことのできないマンガ体験だと思います。それにしてもこの作品、最初の段階で一体どこまで練り上げていたんだろうか……。

 ストーリーが気になりすぎて、サブクエをスキップしまくってクリアした「ゼノブレイド」ですが、そうやって無視してしまった小さな事件の積み重ねの中にこそ、実は物語の真実が隠れているのかもしれません。本作を読んで、2周目はサブクエもじっくりがんばってみようかなと思った次第です。

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  今回も最後までお読みくださりありがとうございました。

(C)Masaru Gotsubo/SQUARE ENIX

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