過度の接近は人間にも野生動物にも脅威 アメリカ海洋大気庁がアザラシ類との自撮りを控えるよう注意
子アザラシに人間が接近すると、母アザラシが子どもを放棄してしまう恐れが。
アメリカのニューイングランドでは、アザラシの出産シーズンを迎えつつあります。これに際してNOAA(アメリカ海洋大気庁)が、アザラシと一緒に撮影することを控えるよう、注意を喚起しています。
かわいらしい動物の赤ちゃんを見たら、一緒に写真を撮りたくなるのが人情というものですが、アザラシは強力なアゴと鋭い歯を持っています。噛みつかれてケガをした報告が同庁に寄せられたことも少なくなく、過度の接近は危険です。
撮影のための接近は、アザラシにも脅威を与えます。母アザラシは通常、子どものために沖合へエサを獲りに出て、浜を長時間留守にします。その間、もし人間が子どもに近寄っているところを海から見た場合、浜に戻ることに危険を感じて子どもを放棄してしまうそうです。ちょっとした撮影のために人間がとった行動が、子どもから母親の庇護を奪うことになってしまいます。
同庁が2月に公開した記事によると、アザラシの子は人間の赤ちゃんのように高い声で泣くそうです。母親はエサ獲りから戻るとき、この声を頼りに子どもを探します。これは正常な行動であり、泣いているからといって近寄るのは禁物。前述のように母親に脅威を与えるため、仮に親切心だったとしても、アザラシには迷惑になってしまいます。
NOAAはアザラシから最低でも50ヤード(約46メートル)離れ、もし異変を感じた場合は同庁へ連絡するよう呼びかけています。日本では、野生のアザラシにはそうそう遭遇しませんが、これに限ったことではありません。野生動物は噛むこともあれば、病原菌を媒介することもあります。そして、人間のささいな行動が、相手にどんな被害をもたらすとも知れません。野生動物に接する際は互いの安全のため、一定の距離をとることが大切でしょう。
(沓澤真二)
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