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2ちゃんねるでは「和田が来たからクリエイターが辞めた」とディスられた―― 元スクエニ社長・和田洋一氏がFacebookで過去ぶっちゃける

5月31日の「黒川塾」で語られた内容を補足して公開。

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 2000年より旧スクウェアの取締役に就任して以来辣腕(らつわん)を振るい、2003~2013年までスクウェア・エニックスの代表取締役社長を勤め上げた和田洋一さん。5月31日に催されたエンターテイメントの勉強会イベント「黒川塾」に登壇し、過去に手掛けた事業について語りました。そして7月7日、その談話を自身で補足しつつまとめ、「そろそろ語ろうか(其の壱)」と題したノートをFaceBookで公開しました。

5月31日に開催された黒川塾の概要。なお、和田さんは経済界への貢献から、4月28日に藍綬褒章」を受章しています

 ノートにはイベント主催者、黒川文雄さんとの対談が掲載。話題は黒川さんが取締役を務めていたスクウェアの関連会社、デジキューブに始まり、エニックスとの合併やCESA(社団法人コンピュータエンターテインメント協会)の会長就任時のエピソードに至るまで、たっぷりと語られています。以下、要点を抜粋して紹介します。

ネット時代まで保てばデジキューブは化けたはず

 デジキューブは、1996年にスクウェアが設立した企業。ゲームソフトのコンビニ流通や、サントラCDや攻略本の出版を手掛け、脚光を浴びていました。しかしデジキューブが一度メーカーから仕入れたゲームは返品できないにもかかわらず、卸先であるコンビニからの返品は100%受けつける契約だったため、市況が悪いとデジキューブ側に在庫が積み上がる構造。その他の要因も積み重なり、2003年に自己破産を申請することになりました。

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 それでも和田さんは、同社がゲームのプロモーション番組を制作し、CS放送経由でコンビニの端末で流していたことを、現在のYouTubeやniconicoにも通ずる先進的なサービスと評価。2005~2006年ごろまで粘り、そのアイデアをネットに持ち込めば化けたはずと述べています。「仮に、ネット屋の誰かがあのアイデアを拾っていたら、TwitchやSteamは日本から出ていたと思います」と、その後に生かせなかったことを悔やむ場面も。

当時のデジキューブのCM。黒川さんは、コンビニでゲームを販売するインフラを残したことは、のちのエンターテイメント界にはプラスになったと指摘している

混乱期に入社しMMORPG「FFXI」への注力を選択

 和田さんが入社した2000年ごろ、スクウェアは新規事業に苦戦し、混乱期を迎えていました。和田さんによると、このころスクウェアの内情はボロボロで、クリエイターはもちろん、部長クラスの人材でさえ続々と脱走しはじめていたそう。当時2ちゃんねるでは「和田が来たからクリエイターが辞めた」などとディスられていましたが、2000年時点ですでに相当な数のクリエイターが辞めており、まったくの「事実無根」とのことです。

 同社が当時注力していた新規事業は、デジキューブと映画、ネットワークサービスのPlayOnline(POL)。しかし、本業のゲーム事業で大きな収益が見込めるタイトルが、FF(ファイナルファンタジー)シリーズしかない状態で、本業と新規事業のバランスがとれていませんでした。そこで和田さんはPOL内で運営されるMMORPG「FFXI」への集中を選択。そして着任から3年で創業以来最高益を記録したことは、自身にとっての第一期の完了だったと振り返っています。

POLは現在も「FFXI」の窓口として稼働中

エニックスとの合併後もM&Aで発展

 2001年に社長を拝命した和田さんは、第2の段階として成長戦略の立案へ重点を移動。ソニー製ハード以外へのプラットフォーム拡大や、グローバル展開を行いました。さらにM&Aによる発展を模索していたところ、2002年にエニックスから合併の打診が。同社が当時まだ新興市場であった中国に展開していることや、携帯電話につきプレゼンスを持っていることに着目し、合併を決定。会社としての核を作ってからは、業務用の地盤を持つタイトーや、欧米で浸透していたEidosを傘下に収めています。

「新しい挑戦には新規IPを」

 成長戦略が終盤に入ってからは第3段階として構造改革に専念。事業セグメントをビジネスモデルごとに再構築しました。MMORPG、F2P(フリートゥープレイ。従量課金制度)、コンシューマーの3階建てです。一度は「FFXIV」が失敗するなど、紆余曲折はありましたが、今日のスクウェア・エニックスの根幹を作っています。

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 和田さんは就任当時、スクウェアの重鎮であった坂口博信さんから、「新しいチャレンジにはFFを使うべき」とアドバイスを受けたそうです。実際スクウェアのオンラインゲーム第1号は「FFXI」になりましたが、2005年ごろから考え方が変化。ゲームは動作環境によってコンテンツとしては別物になり、客層もまったく変わることから、スマホアプリなど新規の挑戦は新規IPで行うべきと考えました。「パズドラ」や「モンスト」も、新たな環境に合わせることで化けた成功例と分析しています。

CESAの会長としてゾーニングに尽力

 和田さんは2006年から2012年まで、CESAの会長に就任。当初はゲームにおける暴力表現問題の解決を掲げていたそうです。それまでCESAが主張していた表現の自由と、「何を作ってもいいわけはない」という反論がぶつかっていたこともあり、ヒアリングを進めていると、警察庁から「和田さん、こんなの娘に見せられますか!」との声が。そこから論点を表現の自由から青少年の健全育成へ方針転換します。子どもと大人、双方の市場を生かすため、成人向けゲームの隔離を決定。レーティング機構のCEROやゲームメーカーと三位一体となって、ソフトのゾーニングを徹底していきました。

 さらに和田さんは、未成年が課金に走ることと、極端に射倖性を煽ることはよくないと、ソーシャルゲームにおける「ガチャ」の問題にも言及。何が問題かを明確にし、業界から先手を打って規制していくべきだと説いています。

 最後に、AR、VR、IoT、クラウド、AIといった新しい潮流について、和田さんはこれらの分野の知見を蓄積することが重要とコメント。ゲーム業界において、ハードとソフト両方の能力と実験市場を持つ国は日本だけと指摘し、新技術に真面目に打ち込めば成功する可能性があると述べています。

(沓澤真二)

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