“きのこたけのこ戦争”を描いた襖絵「明治物語」が悠久の時を感じる 「平治物語絵詞」からオマージュ
きのことたけのこの争いを描いた傑作について作者に聞いてみた。
札幌市の地下鉄大通駅と地下鉄東西線バスセンター前駅間の地下コンコース内にある500M美術館に展示されている一枚の襖絵が注目を集めている。歴史的な戦乱を描いた作品かと思い目をこらすと、そこにはきのことたけのこたちのチョコでチョコを洗う壮絶な戦乱絵巻が展開していた……。思わずネットで拡散されるのもうなずける。
作者は古典作品をオマージュし、現代の要素を掛け合わせることで生まれる面白みや違和感に焦点を当てた作品を手掛ける葛西由香さん。現在展示中の二作品で「札幌大谷大学卒業制作展2016」にて芸術優秀賞を受賞している。
作品は、鎌倉時代に描かれた「平治物語絵詞」に、平成の代表的な戦いである「きのこたけのこ戦争」をやつした。そして、たけのこの里ときのこの山の製造元である明治製菓から名を拝借した「明治物語」と名付けた。子どもから大人まで本気で「遊ぶ」ことを考えてみたくなる展覧会「いつかきたみち、こどもみち」内で展示されている(会期は2016年7月9日~10月12日まで)。
「明治物語」は卒業制作として作った。「決まったサイズにただ絵を描くだけではつまらなくて襖にしました。思いっきりやりたいことをやって、楽しい作品を作りたかったのです」と葛西さん。平治物語絵詞の「三条殿夜討巻」の一場面をオマージュ、構想段階を踏まえて約1年かけて仕上げた。
作品について投稿したあるツイートは、3万5000近いリツイートと2万7000を超えるいいねを獲得し、きのこの里陣営もたけのこの里陣営も、誰が書いているのか、どんな作品なのか、そしてどちらが勝っているのかなど興味を引いた。一見、きのこ勢が優勢のように見えるが、たけのこ勢も援軍がかけつけているようにも見える……。気になる!
「(たけのこが劣勢のように)一見そう見えるかもしれません。ですが、本作は明治製菓さんが数年前に行った人気投票の結果を参考に民意を反映しています。人気投票ではたけのこの里に軍配が上がっていました。よく見ると、きのこ本城は燃やされていますが一方の竹林は無傷、倒れている数もたけのこよりきのこの方が実は多いのです」と葛西さん。8月11日が日本記念日協会により「きのこの山の日」に(山の日に便乗する形で本当に)認定されたのになんてことだ……。
ネットでの反響は友人づてに聞いて驚いているとか。「少しでも立ち止まり、作品を見て楽しんでくれた人たちがいることをうれしく思っています。励みになります」と答えてくれた。葛西さんは現在、札幌市内で働きながら制作活動を続けている。ちなみに……
―― きのこの山派ですか? それともたけのこの里派ですか?
葛西さん 物心ついた頃からずっとたけのこ派です。
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