「カロリー制限はサルの寿命を延ばす」 米2機関が双方の研究を照合し結論
人間でも同様の可能性が高いとのこと。
ウィスコンシン大学(UW)とアメリカ国立老化研究所(NIA)が協力し、「カロリー制限はサルの寿命を延ばす」との研究成果を発表しました。概要はUWの公式サイト、詳細な報告書はネイチャーコミュニケーションズで公開されています。
両研究チームは1980年代からアカゲザルを実験体に、個別に研究を進めてきました。カロリー制限を課したサルと、自由に食事を与えたサルとで、ガンや糖尿病といった病気や老化の状況を比較するものです。
2009年にUWは、カロリー制限を受けたサルにガンや心血管障害などの低下がみられ、生存率が向上したと報告。カロリー制限の有効性が示されましたが、2012年にNIAが、健康改善効果こそみられたものの生存率への影響はなかったと発表。両者の異なる結果が論争を呼んだ経緯があります。
今回両者は初めて協力し、長年の研究データを持ち寄り分析しました。その結果、生まれていた差は、実験体の年齢や性別などの差違から生まれたものと判明。実験方法も異なり、NIAの実験ではサルへのカロリー制限がUWより厳しいうえ、自然食品が与えられていました。一方、UWの実験では糖度の高い加工食品が与えられており、NIAのそれより太っていたそうです。つまりUWのサルは太りやすい環境にあったため、カロリー制限の効果が大きかったことになります。
こうした食い違いこそあったものの、両者はカロリー制限が老化の抑制と健康改善に有効と結論。データを照合したことで、少食の効果は高齢者ほど高いこと、食事の質によっても変わることなどが分かりました。また、肥満やインスリン感受性などがもたらす悪影響において、男性は女性より脆弱との性差も確認されています。
実験体のアカゲザルは、ゲノム組成が人間にごく近く、実験結果は人間にも適用される可能性が高いと目されます。「食べすぎはよくない」とまで単純化すると当たり前のことになってしまいますが、公的研究機関に立証されると、食事には注意せざるを得ませんね。
(沓澤真二)
関連記事
トラフザメ、オスがいなくなると無性生殖する事例が確認 有性生殖からシフトするのは世界初
豪大学が発見。オスのパートナーから分離された数年後に、無性生殖で産卵しました。「スター・ウォーズ」ファンの科学者ら、新種のテナガザルを「スカイウォーカー」と命名 中国南西部で発見
ルーク・スカイウォーカー役の俳優「いろいろなキャラグッズが出たけど、今度はテナガザルだぞ!」オウム「あーらよっと」 最新の研究でオウムが道具を自作できることが判明
オウム「もっとダンボールをくれ」つらい記憶を無意識のうちに消せる技術が開発 PTSDの治療に役立つ可能性に期待
恐怖対象を繰り返し見せる従来手法とは異なり、患者へのストレスを与えないとのこと。ネット情報の信頼性、10代の多くが判断できず 米大学のメディアリテラシー調査
うそはうそであると見抜ける人でないと……。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.