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アニメショップの1つもない田舎のオタク少年事情インターネットを守る翼竜

新鋭・にゃるらのねとらぼ連載がスタート!

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 初めまして、にゃるらです。

田舎のオタク事情

 記念すべき第1回は「田舎のオタク事情」なる、沖縄生まれの僕とその仲間たちが、アニメイトなどのオタクショップが一軒もない土地でどう暮らしたかを赤裸々にさらしていく、半ば自分語りのような記事です。

 本来、僕が書きたかったテーマは「アダルトゲーム」についてなのですが、ねとらぼではアダルト要素はできるだけ排する必要があるとのことなのでやめました。Webメディアのこういう気取った部分腹立ちますね。

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小学生時代編(00年代前半ごろ)~幻の深夜アニメを求めて~

 軽く先述した通り、沖縄にはオタク文化の波及が非常に遅く、特に深夜アニメ関係は皆無と言っていい程でした。その深夜アニメの虚無っぷり沖縄県のアニメ視聴・アニラジ聴取事情として、ニコニコ大百科に記事が作られているレベル。

ニコニコ大百科より

 この記事によりますと、99年~00年の間にあの新條まゆ先生の傑作「KAIKANフレーズ」が火曜深夜に放送されて以来は、07年に「コードギアス」が深夜に1年遅れで放送されるまでは、深夜アニメが全く無いという状態です。

 恐らくギアスだけ遅れて深夜に始まった理由として、日曜夕方5時枠での2期の放送が沖縄でも始まる(沖縄でも日5枠はあります)ためだと思われます。と言っても深夜3時からの放送だったので、子どもに見せる気ゼロですが。ギアスだけに。そもそも深夜アニメという概念が薄いため、僕含めて放送されている事すら気付かず全力で見逃したオタクも多いでしょう。

 そんな沖縄において「小学生のころからちょっとオタク寄り」なキッズたちは、沖縄でも放送されている番組に全力を注ぐため、ニチアサやガンダムなどに依存します。戦隊モノや仮面ライダーなどの特撮、ガンダムなどのロボットアニメの歴史は深く、オタクの基礎教養的な部分もあるので、このあたりの話を本来周りが卒業している歳でも、平然とできる環境は特異ではないでしょうか。例に漏れず、僕も十数年ニチアサを追っている立派なニチアサキッズです。

 それでも「深夜アニメ」なる概念があることを、田舎のオタク少年でもレンタルビデオ屋などを通して知っていきます。「内地の人間だけズルい、自分も深夜の大人向けアニメが観たい!」そう思ったオタク少年がたどり着いたのが「キッズステーション」。24時間過去の名作アニメを垂れ流しているチャンネルですね。

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当時キッズステーションでヘビロテされており、子どもながら「ノワール」をキッズに見せてどうするつもりだ……と感じたものです

 キッズステーションの大きな利点として「名前から知育番組を連想させるので親に契約させやすい」事があります。恐らく僕のお母さんも家で暇している息子に「クレヨンしんちゃん」「名探偵コナン」くらい観せてやりたいと思ったのでしょう、実際に小5・6の僕が楽しみに視聴していたのは「ローゼンメイデン」「瓶詰妖精」「まじぽか」あたりです。さらにキッズステーションはガンダム過去作や機動戦艦ナデシコなどのスタチャ枠もガンガン流してくれるので、キッズステーションしか縋るモノがないために、どんどん好むアニメの年代がズレていく田舎オタクが生まれていきます。

ギャルゲーを手に入れろ!

小学生時代の僕がやたら好きだったギャルゲーです

 小5あたりから純粋だった男子小学生もに目覚め始めます。当然、オタク少年たちもアニメに「かわいいヒロイン」を求めだし、僕のようにえっちな人間はギャルゲーに興味津々。

 しかし、最新作のギャルゲーというものは小学生にとって高価であり、ましてや誕生日などに親にねだる訳にもいかない代物です。そこで、PS2全盛期の時代に300円以下で売られている初代PSやサターンのギャルゲーに狙いを定めます。

 これは田舎関係ないように思えますが、そもそもPS2やゲームキューブなんて最新ハードを持っている人のほうが少なく、子どもたちが新作ゲームに強く拘らない環境は田舎らしいのではないでしょうか。単にみんな貧乏なだけなんですけれども。

 そんな状況の中、クラスのヤンチャボーイが「近所の中古ゲーム屋のゴミ箱に古いゲームが大量に廃棄されているぞ!」という有益情報をもたらします。マジでどこで知ったんでしょうね。

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 100円ですら惜しい僕ら貧乏小学生にとって、この朗報を見逃す手はありません。早速、ゴミが捨てられそうな深夜に家を抜け出し、ゲーム屋の地下にあるゴミ捨て場に待機……。するとどうでしょう、本当に店員がゴミ袋一杯にサターンのソフトを詰めて捨てにきたではありませんか!

 恐らくPS2とゲームキューブ、セガならドリームキャストが一応ある時代において、セガサターンのゲームを置くスペースが邪魔だったのでしょう、こうして夜な夜な処分している様子。捨てるなら拾う、完全に流星街の住民と化す貧乏小学生たち。

 この時期のおかげで、僕らは大量の名作ギャルゲーを含むセガサターンソフトを手に入れました。もちろん、この日以降は毎日ゲーム三昧。まだ制服すら着たことがないガキが、次々と女子高生ヒロインとデートしまくり! オタク文化がない田舎故の飢えが、深夜アニメやギャルゲーへの強い執着心を生み出し、歪なオタクモンスターを産み出した瞬間です。

中学生時代編(00年代後半ごろ)~オタクとヤンキー文化の融合~

 中学生にあがると「他人と競い合っていく」面白さを知ってきます。通常なら、ここで部活やテスト結果などに精を出すはずなのですが、そんな健全な人生とは無縁なオタク少年たち。では何で競い合っていたかというと、ゲーセンにて一心不乱に格ゲーや麻雀に明け暮れていました。

 当時ハマっていた格ゲーは「KOF2002」や「ギルティギアXX SLASH」あたりでしょうか。沖縄らしく時代にとらわれない面もあり、国際通りなんかではスト2やヴァンパイアでの対戦も絶えません。

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 ここで面白いことに、格ゲーや麻雀などのアーケードゲームにハマるのは、オタクとヤンキーのどちらかに二極化されていく訳ですね。青春を謳歌する部活少年たちはそんな暇無いですし。教室では全く立場が違うカーストですが、このゲーセン内では交わります。

 つまり、オタクがヤンキーたちに格ゲーのコンボを教えたり、麻雀の牌効率をともに勉強したりと、学校とは違う独特のコミュニティーが生まれるのです。オタク文化にゲーセンがあるのも、上京した今思い返すと前時代的で田舎らしい。

 この交流が続いていくうちに、いつしか一部のオタクとヤンキーの境界線が薄くなり、歳相応らしく家出しては夜遊びを繰り返すオタクや、格ゲーから派生しギャルゲーにハマるヤンキーが誕生したりもします。闇属性同士の歪な融合ですね。

 特にヤンキーもオタクも入り乱れて、ゲームの腕という意味で実力主義の世界が形成されたのが、2対2での対戦が前提のVSシリーズ。今では「ガンダム動物園」なんてやゆされているシリーズです。

 チーム戦のため、いくら個人が強くても相方との連携ができないと、勝利するのは難しい。逆に言えば誰とチームを組むかでバランス調整も容易。ガンダム大好きオタクと初心者のヤンキーが組んで、互いに助け合いながらプレイする様はどこか感動的。クラス内カーストを越えた友情に近いモノを感じます。

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 と言っても、ゲーセン通いするタイプのオタクは元から不良寄りですので、ヤンキーと仲良くてもおかしくはないのですが、カードゲームやPSPでのモンハンを陰でプレイするタイプのオタクは、当然カツアゲされていたりしましたが……。

 ここからオタクもヤンキーも次はパチスロにハマっていく訳ですが、ここからはキリがないのでまた別の機会で。田舎というか、沖縄のゲームセンターは客と店員が身内になる率が高く、一度閉店時間になり店を閉めた後に、身内だけ中に入れて朝までガンダムや格ゲー三昧のお店も現存します。都内だとなかなか考えられないでしょう。

 狭いコミュニティーでの奇妙な友情、地方らしい暖かさがあるとは思いませんか?

祝、アニメイト開店!(08年)

この中の「アニメファン」と呼ばれている人間のどれかが僕です(那覇経済新聞より)

 沖縄にオタクショップがなかったのも過去の話。今では国際通り近くにアニメイトが存在しています。開店初日の長蛇の列は今でも印象強く、この狭い沖縄のどこに潜んでいたのかと不思議になる程のオタクの列。新聞に載った際にいち早くかけつけた僕の自転車が写真に映っていた事を誇りにしていました。今思うとだからなんだというか、アニメイトくらいで騒いでいるかわいらしさしか感じませんが。

 こうして沖縄の中高生オタクたちは、無事に都会のオタクグッズを享受できるようになり、ガラの悪い連中と中国人観光客で占められる国際通りの一角だけ、異様にオタクが集まるようになる訳ですが……。

ニコニコ動画で当時人気だった「ぱにぽにだっしゅ」黒板ネタに全員でツッコミを入れることで、インターネットの一体感を初めて覚えた方も多いのでは?

 この頃には既にニコニコ動画が台頭し、違法アップロードによる深夜アニメの視聴(まだ公式でのアニメ配信はありませんでした)や、ボーカロイドなどの流行により、ジャンプすら数日遅れの沖縄でも、都会のオタク文化から大して後れを取らなくなってきます。

 今では、まだ深夜アニメ自体は皆無に近い沖縄でも、ニコニコ動画などの公式配信によりアニメを楽しめますし、ソーシャルゲームなどは田舎だろうが話題に乗ることが可能です。半ば親をだましてキッズステーションと契約させたり、皆で1つのゲームをするためゴミ捨て場からセガサターンのソフトをあさる必要もありません。オタクグッズだって、アニメイトでそろいます。

 当然、今の環境のほうがオタクにとってはうれしいでしょう。しかし、田舎に生まれるというハンデがあったからこその、野生に近いハングリー精神を忘れないで欲しい。そう、沖縄生まれの元田舎オタク少年は思うのでした。

にゃるら

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