神社にパンダのかぶり物した宮司、シュールな光景が話題に 中の人「神社の優しい心を知ってほしい」
なぜこんな奇妙なことに……有鹿神社の担当者に取材しました。
神社をより多くの人に知ってもらおうと、パンダのかぶり物をかぶって境内に立つ。そんな健気かつシュールな宮司さんが、ここ数日Twitterで注目を集めています。飛鳥時代から記録が残っている、相模国最古の神社・有鹿神社(神奈川・海老名)です。
本殿前で白い装束で凛(りん)と佇んでいるのに、顔はまんまるふっくらのパンダ。お堅いイメージの神社に紛れ込んだ動物園の人気者、違和感とかわいさがシュールな笑いを誘います。
Twitterユーザーの@bomberuneuneさんが「神奈川で一番古い神社なのに、あまり知られていないから頑張っているみたいなのです」と写真を投稿したところ、「なぜ鹿じゃなくてパンダ」「健気……!」と戸惑いと衝撃をもって9万回以上リツイートされました。
なぜこんなことになってしまったのか、神社ってここまではっちゃけていいのか、疑問が沸いて止まらないパンダの宮司。中の人を務める禰宜(ねぎ)、有鹿神社の小島実和子さんに話をうかがいました。
――いつからパンダのかぶり物を始めたんでしょうか。
小島さん: 6月末に神奈川テレビさんから取材されたのがきっかけです。5月くらいからTwitter(@arukajinja)で神社の情報を発信するとき、形式張った堅苦しいイメージを和らげたいなということで、パンダのパペットが神社を紹介する写真を投稿していたんです。
その試みを面白がったテレビスタッフさんが取材を依頼してくれたところ、打ち合わせのときにパンダの小ささに驚かれて。どうもパンダの中に人が入っていると勘違いされていたみたいなんです。残念がられていたんで、こちらから「当日までにかぶり物を用意します」と申し出て、パンダのかぶり物をした宮司が誕生した、という感じですね。
――サービス精神がすごい。それからいつもかぶっているんでしょうか。
小島さん: いえいえ、神事のときはかぶりません。そもそも小さな神社である上に事務所が離れているので、神社にいつも宮司がいるわけではなく、ご祈祷や朱印の依頼があったときにこちらから出向くのが日常です。そこでご祈祷後にお願いされたり、見学に来た団体客をお見送りしたりするときにかぶっていますね。
――しかし、なぜパンダなんでしょう? 有鹿神社なら“鹿”と考えてしまいますけど。
小島さん: 宮司である父がパンダに似ていることから“パンダ宮司”と呼んでいたのがきっかけです。「思いやりや優しい心がある神社だと感じてほしい」と考えていたので、優しそうでかわいいパンダはぴったりですし。一応設定としてパンダのパペットやかぶり物は、パンダ宮司(父)がいないときに神社を紹介する「パンダ宮司代理」というキャラになっています。
SNSで「なぜ鹿じゃないの」って聞かれることが多いのですが、鹿のかぶり物だと細身の神職さんじゃないと似合わないんですよね……。パンダだと自分の体型でも似合いますし(笑)。
――ちなみになかなかのはっちゃけ具合だと思うのですが、神様には失礼には当たらないのかでしょうか?
小島さん: 神社には神様を楽しませる「神賑行事」というのがあります。面をつけて舞って楽しむ神楽や、お神輿(みこし)や山車(だし)もそうです。パンダ宮司もその位置付けで、神様に楽しんでもらえたらなと。
――地域や参拝客の反応はいかがでしょう。
小島さん: 交通の便も悪い場所にあるので近場の人が来る程度なのですが、「なんで鹿じゃないの?」「パンダ?」とつっこみながら笑ってくださいますね。子どもには「でも体は人間じゃん」と受けが悪いですが(笑)。最近では「パンダ宮司いらっしゃいますかー?」と訪ねに来てくださる人もたまにいますね。
――ネットではかなりの反響がありましたね。
小島さん: 善意ある方が広めてくださって本当に感謝しています。「知名度のない神社ががんばっている」と応援のツイートも見かけて、みなさん優しくてありがたいです……。必ずパンダ宮司代理に出会えるわけじゃないのですが、神社にはいつも神様はいらっしゃいます。実は灯籠の中にも小さいパンダがいるので、よかったら探して「何だこれは」と笑って元気を出してください。その元気を神様に受け取ってほしいです。
(黒木貴啓)
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