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「EM菌でプール掃除」「花粉症が治った人も」山形県小学校ブログ、科学的根拠なく炎上 学校ではなく町単位での取り組み

小学校と町に聞きました。

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 山形県西置賜郡白鷹町の小学校がブログで「EM菌」を教材として使った授業風景を紹介し、炎上しています。

 EM(通称EM菌)とは琉球大学名誉教授の比嘉照夫氏が命名した微生物群のこと。比嘉氏は農業、リサイクル、水処理、医療、放射能無害化などの分野に効果があると主張していますが、科学的根拠がないとして教育現場への導入を問題視する声がたびたび上がっていました。

 ブログでは9月7日に投稿されたもの。「4年生が、EM菌について学ぶ機会がありました」として授業の様子を写真付きで掲載。米のとぎ汁を使ってEMを培養し、プールに入れることで翌年のプール掃除が楽になると紹介しています。ブログの最後は「EM菌で花粉症が治った人もいるとか 驚きました。 大切なEM菌 4年生の、みんな頼んだよ!」という一文で結ばれており、EMにより花粉症が改善するという根拠も不明なことから、コメント欄をはじめ、ネットの各所で批判意見が集中しました。

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花粉症は治らないのでは……

「学校単位ではなく、町単位での取り組み」

 EMの導入経緯について同校に問い合わせをしたところ、教頭は「町からの依頼があり、プール掃除の効果があるという声も聞いていたことから環境学習の一環として有効と認識し、取り入れていた」と説明。

学校で配られていたプリントの一部(環境学習ネットワーク公式サイトより

 白鷹町の町民課くらし環境係にも取材をしたところ、EMを使った取り組みは町民が参加する「白鷹町美しい郷づくり推進会議」が中心となり、町を主体として2009年から行われていたことが分かりました。例年町の小中学校・保育園に働きかけており、今年(2017年)は町立の小学校全4校で実施済み。今年の保育園と中学校での実施は検討中とのことでした。また、批判意見を受けて今後の方針を変更する可能性については「まだ組織的な話し合いができている段階ではないので未定」とのコメントでした。

町の広報紙 第10号(2009年11月24日発行)より。取材で得たコメントの通り、2009年からEMを使った活動が行われていた

学校教育でEMを取り上げるのは何が問題なのか

 教育現場でEMを扱う場合、どういった点が問題なのでしょうか。山形大学准教授の天羽優子氏はねとらぼ編集部の取材に対し、「EMは菌のあつまりで、どのような菌がどういった割合で含まれているか品質管理ができていません。そういったものを学校教育で使うのは、安全上の問題があるのでやめるべきです」と指摘。

 また天羽氏は、EMが学校教育において「補助教材」に該当するため、EMの効果を前提に指導することは、文部科学省が2015年に行った通知「学校における補助教材の適切な取扱いについて」に抵触する点も問題視しています。この点について、「教師や地方公共団体がEMの効果を信じ込んでしまっているために、通知の内容にあてはまるという判断ができていないのだろうと推測しています」とコメントしました。

※2015年3月4日に文部科学省が通知したもの。「多様な見方や考え方のできる事柄、未確定な事柄を取り上げる場合には、特定の事柄を強調し過ぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げたりするなど、特定の見方や考え方に偏った取扱いとならないこと」と通達している。

文部科学省的にEM菌ってどうなの?

 天羽氏によると、「EMが文科省の通知にいうところの『補助教材』に該当するということは問い合わせて確認済み」とのこと。ねとらぼ編集部でも文科省に対し、EMを学校教育で好意的に紹介することの是非や、学校教育においてどのような位置付けであるかについて取材中です。現時点では担当者不在のためコメントが得られていませんが、担当者に確認が取れ次第、こちらに追記予定です。

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【追記 9月25日】 文科省初等中等教育局教育課程課の担当者によると、EMは学習指導要領に含まれていないため、授業で取り上げる場合は補助教材にあたるとのこと。ただし文科省としてEMを補助教材として認めるというわけではなく、補助教材として適切であるかどうかの判断はあくまで学校や教育委員会の判断で行われるもの。またEMは商標名であり、文科省としてEMのような個別の商標・商品に対して取り上げて良い/悪いという通知は出していないとのコメントでした。

【追記】町の教育委員会はどう思ってるの?

 これまでの取材から、白鷹町役場が主導して行っていた取り組みであることが分かりました。では町の教育委員会としての認識はどうなのでしょうか。9月25日、ねとらぼ編集部の取材に対し委員会の担当者は、過去の取り組みが委員会として後押ししていたものではなかったと説明。まだ委員会内で正式な話し合いがまだできていないことから今後の対応については未定ながら、「各学校に対してお話していかなければならないと思っている」と、今回の騒ぎにより問題点を認識した様子でした。

(追記ここまで)


 ちなみに、町が授業用の資料として配布していたプリントは、EMを活用したプール清掃の情報提供を行うボランティア組織「環境学習ネットワーク」が作成したものでした。同団体は比嘉氏が過去に代表を務め、現在は同氏の親族が代表を務める「EM研究機構」内に属するもの。学校のブログでは、同社が販売する「EM1」が使用されていることも確認できます。

小学校のブログより。卓上の「EM1(500ml)」が確認できる

 同社公式サイトで配信されている資料によると、プール掃除用の水溶液に必要なEMは9.5リットルあたり200cc。この方法でのプール掃除には年間200~300リットルの溶液が必要になるそうなので、1校あたり「EM1」が約4.2~6.3リットル必要になります。

 本件で町がいくらで「EM1」を購入したかは不明ですが、通常同製品は500mlボトルが1本1131円で販売されています。これを先ほどの分量に当てはめると、1校あたりの費用は単純計算で9500~14250円になります。

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 一般的な「洗剤」などと異なり、「EM」はEM研究機構に商標登録されているもの。科学的根拠に不明点が多い上、導入がそのまま特定企業への利益に結びつくことを考慮すると、教育現場への導入には疑問が残ります。

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