映画館は真ん中の席は避けた方が音が良い? 音が反響する「鳴き龍現象(フラッターエコー)」が話題に
音響設計や工事を手掛ける会社に聞いてみました。
映画館で座席を選ぶ際、ど真ん中は避けたほうが良いと説明するツイートが注目を集めています。
ツイートを投稿したのは、アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」「ガールズ&パンツァー」などの音響監督で知られる岩浪美和さん。岩浪さんは、劇場の真ん中では「フラッターエコー」という現象が発生しやすく、音の定位が悪くなると主張しています。
フラッターエコーとは壁、天井、床などの並面間で音が反射を繰り返すことで起こる音響障害。日光東照宮・薬師堂で手を叩くと、反響した音で天井に描かれた龍が鳴いているように聞こえることから、「鳴き龍」という呼び名でも知られる現象です。
Twitterでは「真ん中はすぐ埋まるから、そのくらいの席になってしまう事が多いけど、それが正解でしたか」「映画見るなら、やっぱりど真中だろと思ってたのに……」と、驚きを隠せない声や、「そもそも映画館って防音壁じゃないか? 反響してるイメージない」「エコー気にしたこと全く無いからこれからもど真ん中の一番自分がストレス溜めない席で見る」といった、気にしすぎる必要はないのではないかという意見が目立ちました。
実際のところ、映画館でフラッターエコーはどの程度発生するものなのでしょうか? 映画館や音楽ホールなどで音響設計や工事を手掛ける会社に聞いてみました。
基本的にフラッターエコーは起こりにくい
――映画館でフラッターエコーは発生するのでしょうか?
担当者:最近のシネコンでは壁に吸音性の材料を使っている上、場内に設置される椅子もふかふかで音を反射しにくいので、基本的にフラッターエコーは起こりにくいです。また通路や座席の配列が左右非対称で、座席の中央が部屋の中央になっていないことも多いです。
――「起こりにくい」ということは、起こることもあるということですか?
担当者:誰もいない無人の状態で、場内の真ん中あたりで手をたたくと発生することはあります。また、通常スクリーンは吸音のため小さな穴があいたものになっていますが、表面はツルツルで反射がゼロではありません。部屋の状況にもよりますが、わずかに反響が聞こえることはあります。ですがそれも、シーンとした環境で調整のため入った技師が気付くかどうかの微妙なものがほとんどかと思います。演劇用の劇場を改装して作った映画館などでは起こりやすいかもしれませんね。
結論から言うと、シネコンで映画を鑑賞する場合は、座席をど真ん中にするかどうかで悩む必要はあまりなさそうです。ただし古い劇場の場合はフラッターエコーが発生しやすい可能性も。
岩浪さんもTwitterで、壁面の処理が丁寧な映画館ではフラッターエコーが発生しにくいことに触れた上で、「劇場が古めの施工で背面がつるっとした固い素材、客席の傾斜が少なくスクリーンと平行な面が大きいと定在波やフラッターが発生してる場合が多いです。ただこれも静かなシーンで気になるかな? というレベルです」と補足しています。
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