コラム

「カタカナは20文字だけ」「没アイテムで宝箱がカラッポに」 ファミコンハードの限界に挑んだ制作者たち(2/3 ページ)

あの手この手で容量を節約。

advertisement

 メモリーにくわれて、イベントがトブよりイイんじゃないかなと思って、タイトル画面とタイトル曲をけずったんです。もし、けずらなかったら、ドラクエ3のロゴマークにアニメーション処理した画面がでてくるハズだったんです。

 でもこれを取ったおかげで、町3つ分とイベントを組み込むことが出来たんだ。

 今回も原稿は4メガ分あったのに、使えたのは2メガ分。

<出典:『ドラゴンクエスト3マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>

 海外版には収録されている、その幻のオープニングがこちら。ドラクエというよりも、別のアクションゲームのようなシュールな時間が流れる映像ですが、ついつい見入ってしまいます。

海外版には幻のオープニングシーンも流れる

「ドラクエ3」でカットされた幻のオープニング(YouTube

火山で魔物と戦うオルテガ

魔物ともみあって最後は火口の中に……

すぎやまこういち、秘技で「1音」を「3音」に見せる

 ファミコンの同時発音数は3(ノイズを含めば4)。それほどに手足を縛られた状態でもすぎやま氏はあの「序曲」をはじめ名曲を生み出しましたが、ドラクエ3になって使った秘技が「分散和音」でした。

 同時発音数の少ないファミコンでは、音の厚みがなくなりがち。そこで例えばサブメロディパートを使って、32分音符単位で「ドミソドミソ……」と素早く音階を変えて鳴らすと、ふしぎなことに、1音でドとミとソの和音感が生まれたのです。

advertisement

 この手法は通常戦闘曲「戦闘のテーマ」と、洞窟の曲「ダンジョン」で用いられ、音数の少なさを感じさせない、重厚なハーモニーが実現しました。

ドラクエ3にヨーデルが流れるスイスの村があったが、消滅!

 そんな軽やかなテクニックで音数の問題を乗り越えたすぎやま氏ですが、お蔵入りになった曲が多くありました。

 あれでも何曲かカットになってるんだから、できた曲が。たしか、3曲ばかりオクラ入りしてますよ。(中略)今だから言うけどね、スイスの楽しいヨーデルの曲があったの。でもスイスの村ごと音楽もなくなっちゃった(以下略)

<出典:『ドラゴンクエスト4マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>

ボスなのに「通常戦闘曲」だったバラモスの専用曲もカットされた

 この他、“ボスキャラなのに通常戦闘曲”になっている「バラモス」には、実は彼専用に作っていた曲がありましたが、こちらも容量の問題でお蔵入り。さらに、主人公の父親・オルテガの戦闘シーンも通常戦闘曲になってしまいましたが、すぎやま氏はここだけは「レクイエムを流すべきだった」と悔やんでいるそうです。

不遇のコマンド、「おいのりをする」

 ドラクエ2、3ともに一時は採用されながらも、けずられたコマンドがあります。それは教会で行う「おいのりをする」というもの。

 Q.開発途中の画面を見ると(教会に)「おいのりをする」とゆーのがあったのですけど、このコマンドを実行するとどんなことになるハズだったんですか?

 (前略)これも、メモリーの関係で、しかたなくけずられているんだ。おいのりをすると、ちょっとイイことがある、ハズだったんだ。具体的に何が起こるかまでは、ちょっと教えてあげられないんだけどね。

<出典:『ドラゴンクエスト3マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>


2でも3でも採用されなかった、悲劇のコマンド「おいのりをする」(『ファミコン通信』1987年7月10日号より)

 なおドラクエ4で「おいのりをする」はようやく採用されたものの、当時の役割とは違う「セーブ機能」として扱われています。

advertisement

「反転」を多用してメモリを稼いだ、スーパーマリオブラザーズ

 ドラクエと来れば、もう1つの国民的ゲーム、任天堂のマリオシリーズも忘れてはいけません。何せ「スーパーマリオブラザーズ」は40KB。こちらも相当な節約を強いられています。

 例えばクリボー。彼は2足歩行で自然に歩いているように見えますが……実はこれ、単なる1つの画像。アニメーションをさせるには最低でも2つは必要なのに……なんと「左右を交互に反転させる」ことで、歩いているように見せているのです。歩きを自然に見せるため、クリボーの体は少し斜めになっているとか。(参考:『ファミコンの驚くべき発想力 ―限界を突破する技術に学べ』/松浦健一郎・司ゆき/技術評論社)


画像を交互に反転させれば、歩いているように見える

 なんでもクリボーは最後に生まれた敵キャラだったため、使えるパーツがほとんど無く、苦肉の策としてこのようなチャレンジが行われました。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 近所の人に「毛布落ちてる」と言われ見てみると……まさかの正体に「コレはw」
  2. 足の甲に“謎の斑点”が出現→病名分からず悩んでいたら“まさかの原因”が判明 当時の状況について話を聞いてみた
  3. 工藤静香、ちょっと遅れた“木村家のクリスマスディナー”が超豪華! 家族おそろいのお皿で手作りメニューに“笑顔”
  4. 【福袋】約7万円のCOACH(コーチ)福袋の中身は? 驚きの内容に「大当たりですね」
  5. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 同じポーズで撮影した“現在の姿”が「素敵」「お似合いです」と話題
  6. セリアの糸4玉が、感動の大変身! たった700円で完成したとは思えないおしゃれアイテムに「編んでみたい」と称賛の声
  7. 「ずっと待ってた」【ユニクロ】“殿堂入り神アイテム”に、ついにレディース登場 「1年中着ます」「まさしく欲しかったやつ」
  8. “古い着物”を工芸作家がザクザク切っていくと…… 予想がつかない“大胆リメイク”に「ステキ」「カッコいい」の声
  9. 「すごい漢字!」 YouTuberゆたぼん、運転免許証公開 「本名の漢字」に衝撃の声続々
  10. ドイツ人妻が愛車のスバル車とポルシェを乗り比べたら…… 忖度無しの正直レビュー「評論家より信頼できる」「車は安全第一」