「カタカナは20文字だけ」「没アイテムで宝箱がカラッポに」 ファミコンハードの限界に挑んだ制作者たち(2/3 ページ)
あの手この手で容量を節約。
メモリーにくわれて、イベントがトブよりイイんじゃないかなと思って、タイトル画面とタイトル曲をけずったんです。もし、けずらなかったら、ドラクエ3のロゴマークにアニメーション処理した画面がでてくるハズだったんです。
でもこれを取ったおかげで、町3つ分とイベントを組み込むことが出来たんだ。
今回も原稿は4メガ分あったのに、使えたのは2メガ分。
<出典:『ドラゴンクエスト3マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>
海外版には収録されている、その幻のオープニングがこちら。ドラクエというよりも、別のアクションゲームのようなシュールな時間が流れる映像ですが、ついつい見入ってしまいます。
すぎやまこういち、秘技で「1音」を「3音」に見せる
ファミコンの同時発音数は3(ノイズを含めば4)。それほどに手足を縛られた状態でもすぎやま氏はあの「序曲」をはじめ名曲を生み出しましたが、ドラクエ3になって使った秘技が「分散和音」でした。
同時発音数の少ないファミコンでは、音の厚みがなくなりがち。そこで例えばサブメロディパートを使って、32分音符単位で「ドミソドミソ……」と素早く音階を変えて鳴らすと、ふしぎなことに、1音でドとミとソの和音感が生まれたのです。
この手法は通常戦闘曲「戦闘のテーマ」と、洞窟の曲「ダンジョン」で用いられ、音数の少なさを感じさせない、重厚なハーモニーが実現しました。
ドラクエ3にヨーデルが流れるスイスの村があったが、消滅!
そんな軽やかなテクニックで音数の問題を乗り越えたすぎやま氏ですが、お蔵入りになった曲が多くありました。
あれでも何曲かカットになってるんだから、できた曲が。たしか、3曲ばかりオクラ入りしてますよ。(中略)今だから言うけどね、スイスの楽しいヨーデルの曲があったの。でもスイスの村ごと音楽もなくなっちゃった(以下略)
<出典:『ドラゴンクエスト4マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>
この他、“ボスキャラなのに通常戦闘曲”になっている「バラモス」には、実は彼専用に作っていた曲がありましたが、こちらも容量の問題でお蔵入り。さらに、主人公の父親・オルテガの戦闘シーンも通常戦闘曲になってしまいましたが、すぎやま氏はここだけは「レクイエムを流すべきだった」と悔やんでいるそうです。
不遇のコマンド、「おいのりをする」
ドラクエ2、3ともに一時は採用されながらも、けずられたコマンドがあります。それは教会で行う「おいのりをする」というもの。
Q.開発途中の画面を見ると(教会に)「おいのりをする」とゆーのがあったのですけど、このコマンドを実行するとどんなことになるハズだったんですか?
(前略)これも、メモリーの関係で、しかたなくけずられているんだ。おいのりをすると、ちょっとイイことがある、ハズだったんだ。具体的に何が起こるかまでは、ちょっと教えてあげられないんだけどね。
<出典:『ドラゴンクエスト3マスターズクラブ』(ファミコン必勝本編集部)>
なおドラクエ4で「おいのりをする」はようやく採用されたものの、当時の役割とは違う「セーブ機能」として扱われています。
「反転」を多用してメモリを稼いだ、スーパーマリオブラザーズ
ドラクエと来れば、もう1つの国民的ゲーム、任天堂のマリオシリーズも忘れてはいけません。何せ「スーパーマリオブラザーズ」は40KB。こちらも相当な節約を強いられています。
例えばクリボー。彼は2足歩行で自然に歩いているように見えますが……実はこれ、単なる1つの画像。アニメーションをさせるには最低でも2つは必要なのに……なんと「左右を交互に反転させる」ことで、歩いているように見せているのです。歩きを自然に見せるため、クリボーの体は少し斜めになっているとか。(参考:『ファミコンの驚くべき発想力 ―限界を突破する技術に学べ』/松浦健一郎・司ゆき/技術評論社)
なんでもクリボーは最後に生まれた敵キャラだったため、使えるパーツがほとんど無く、苦肉の策としてこのようなチャレンジが行われました。
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