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漫画海賊サイトの「海外サーバだから合法」はどこまで通る? 政府の対策について文化庁著作権課に聞いた(1/2 ページ)

2018年に入りますます議論が盛り上がっている漫画の海賊版サイト問題。サイトの違法性、対抗策について文化庁に取材した。

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 漫画の海賊版サイトについての議論が、2018年に入ってますます熱を帯びている。

 2月13日にはちばてつや氏が理事長を務める日本漫画家協会が海賊版サイトについて見解を発表し、「全く創作の努力に加わっていない海賊版サイトなどが、利益をむさぼっている現実があります」「このままの状態が続けば、日本のいろいろな文化が体力を削られてしまい、ついには滅びてしまうことでしょう」と訴え、注目を集めた(関連記事)。

昨秋あたりから急速に国内で利用者数を集めている海賊版サイトのトップページ。人気漫画・雑誌を無断で掲載し、表示している広告から収益を得ているとみられる(モザイクは編集部によるもの)

 海賊版サイトは、人気漫画や雑誌の最新号を著作権者に無断で掲載し、PCやスマホから誰でも無料で閲覧できる状態にしている。著作権者には一切収益が入らない一方で、運営者はサイトの広告から巨額の収益を得ているとみられ、ネットでは以前からその違法性や悪質性について意見が交わされてきた。

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 その際に多くの人で食い違いが生まれているのが、「漫画の海賊版サイトを利用することそのものは違法なのか否か」という点だ。

 結論からいうと、「閲覧するだけなら合法」「ダウンロードも私的利用のみなら合法」。違法性があるのは基本的に運営側のみで、著作物(漫画)を著作権利者に無断で公衆送信(サイトで公開)している行為などが、著作権法に抵触する。

 漫画家たちの著作権が侵害され、さらには漫画文化の衰退を招くおそれがある以上、法律で利用を取り締まるべきのように思えるが、なぜ合法のままなのか。現状が致し方ないなら、解決に向けどのような対策が考えられるのか。文化庁著作権課に取材した上でこの点について解説していきたい。

なぜ「閲覧」は違法にならないのか

 漫画の海賊版サイトで利用側に違法性はあるのか。まず著作権法における「複製」について基本的なことを押さえておきたい。

 著作権法では著作物をコピーしたりダウンロードしたり「複製」する行為は原則として著作権者の許可を得なくてはいけない。得ずに「無断複製」すると著作権侵害となり、「10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金」が課せられる。また、無断の複製物をそうだと知りながら複製する行為も、同じく著作権侵害に当たる。

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 ただし、同じ複製行為であっても「私的使用のための複製」なら例外として法に触れない(著作権法第30条)。例えば漫画や雑誌を個人的にスクラップするためにコピーをとるなど、自分自身や家族など限られた範囲で利用する場合だ。

 では、どうして漫画の海賊版サイトの「閲覧」は合法なのか。違法アップロード作品をブラウザで開くと、キャッシュ機能によりデータ(無断複製物)をPCやスマホに一時保存することがあるが、そこに違法性はないのか。文化庁著作権課は次のように説明する。

 「まず違法アップロードされた著作物であっても、PCやスマホ等の『画面に表示する行為』そのものは複製には当たらず、本屋での立ち読みと同じ扱いとなるので合法となります」

 「またキャッシュで一時保存している場合も、行為としては『著作物の複製』にはなりますが、違法には当たりません。著作権法第47条の8『電子計算機における著作物の利用に伴う複製』によって、著作物が端末機器に一時保存される場合は、著作権侵害行為にならないと定められているからです」

 よって違法アップロードされた著作物を「閲覧」する行為は、現行法では違法とならない。

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「違法ダウンロードの刑罰化」の対象は音楽と映像 漫画が入る見込みは

 2010年1月から施行された「著作権法の一部を改正する法律」と、2012年10月に施行された修正案「違法ダウンロードの刑事罰化」によって、「違法にアップロードされている有償の著作物は、そうだと知りながらダウンロードすることは違法」というイメージが漫画にも広がっている。

STOP!違法ダウンロード広報委員会の公式サイト

 実はこれは誤解で、違法ダウンロードの対象となっている著作物は「音楽」「映像」だけ。漫画や小説といった画像やテキストは盛り込まれておらず、違法にアップロードされたものであっても“私的使用のための複製”ならばダウンロードしても合法となっている。

 この改正・修正案は端的にいうと、「海賊版サイトによって音楽・映像界の正規ビジネスが甚大な被害を受けているので、違法にインターネット配信された音楽・映像の複製行為(ダウンロード)を、これまでは“私的使用のための複製”として合法だったけれども、著作権侵害とし、罰則化します」というものだった。

 一応、音楽・映像以外にも“私的使用のための複製”の見直しが必要な著作物の分野はあるのではないかと検討する機会は、改正案が成立する前にもあった。しかしゲームソフト以外は特に要望や複製実態についての報告が寄せられなかったため、漫画を含む他ジャンルは“立法事案がない”として先送りになった(ゲームは改正後“映像”に含むと解釈されている)。報告書には次のようにある。

 「引き続き複製の実態を勘案しながら、また利用者に混乱を生じさせないとの観点にも配意して、検討の熟度に応じて段階的に取扱いを判断していくことを視野に入れつつ、引き続き、検討を行っていくことが適当と考える」(2009年1月、文化審議会著作権分科会報告書、114ページより)

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 しかし今現在これほど漫画の海賊版サイトが問題視されている以上、漫画も違法ダウンロードの対象とすれば問題ないように思えるが、それもなかなか難しいと著作権課担当者は話す。

 「いざ法律で明文化しようとすると、テキスト入りのイラストはどうするのかなど、どこからを漫画とするのか定義付けが困難な問題点があります。また自由度の高さがメリットであるネットにおいて法律で定義付けに失敗すると、摘発する意図がなかった悪質性のない行為までも法律でしばってしまい、社会に大きな混乱をもたらしかねないのです。見直しには慎重にならざるを得ません」

 今現在、違法アップロードされた漫画の「閲覧」「私的利用の複製」を違法化する検討は文化庁では行っておらず、今後検討していく可能性もないとも言い切れないのが現状だという。どちらかというと政府において漫画の海賊版サイト問題へのアプローチは、閲覧者側にではなく運営者側へと矛先が向いているそうだ。

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