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大学の“猫サークル”ってどんなとこ? エサやりだけじゃない猫助け、京大ねこサークルのメンバーに聞いてみた

近隣住民や職員と一緒に、エサやりや避妊・去勢手術などに取り組んでいます。

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 大学の敷地内で生きる「大学猫」。「かわいい」と話題になる一方、キャンパスを汚すやっかいもの扱いをされることも。そんな猫たちを保護するサークルが、各地の大学で立ちあがっている。「京都大学ねこサークルCat-Ch(キャッチ)」(以下、Cat-Ch)の学生に、どのような活動をしているか聞いた。

お腹を見せているのは、少しずつメンバーに懐きはじめた「かたまる」

講義の後は猫の世話

必ず複数の種類のエサを盛りつけている

 Cat-Chでは、京都市左京区にある京都大学吉田キャンパスの近隣の住民、京都大学職員、学生が協力して大学猫を保護する「大学猫活動」を行っている。参加している学生の数は現在80人。「医学部医学科以外の、ほぼ全ての学部の学生がいます。大学院生の人もいるし、留学生もいます。他大学から来てる人もいるんです」と所属学生。なかなかの大所帯のようだ。

 活動は週に1~2回のシフト制で、毎回10人程度の生徒が集まる。「最終の講義の5限目は18時に終わるから、無理なく参加できます。キツくないサークルなんで、兼部の人が多いです」(所属学生)

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 学生たちは18時30分に構内の一角に集まり、職員が用意したエサを、晴れの日は屋外、雨の日は屋内で容器に盛りつける。ドライは1種類、ウェットタイプ2種類。数種類のエサを用意するのは、エサのタイプによっては食べられない猫がいたり、エサのロットによって品質にばらつきがあったりするので、どんな猫でもどれかは食べられるようにするためだという。エサ入りの容器はキャンパスの5カ所に置き、1時間後に片づける。

最近さわれるようになった「くりくりもどき」

 猫は全部で約40匹。全ての猫に名前がついていて、所属してしばらくすると、同じような大きさや模様の猫でも見分けがつくようになるという。触れる猫は5匹程度。ほとんどは人に馴れていない。「でも、なるべく人馴れするように、エサを置きっぱなしにせず、食べ終わるまで見守ることにしています。エサを食べに来たか、具合が悪そうではないかを確認します」

 どうして人馴れさせようとするのか。その問いに所属学生は「人が近づくことに慣れていると、ケガや毛並みの確認がしやすくなります。また、サークル以外の人からも受け入れられ、見守ってもらいやすくなると考えています」と答えた。

冬場の「ねこハウス」など、季節限定の活動も

寒い冬の京都を「ねこハウス」でしのぐ

 2週間に1度、回収しきれなかった容器を片付けるために、敷地内の掃除をする。猫と関係のないゴミも拾う。掃除という意味合いもあるが、誤飲を防ぐためでもあるという。

 さらに、大学猫活動では欠かせない猫の避妊・去勢手術も行っている。処置が終わってない猫を見つけたら、その都度捕獲し、手術を受けさせている。キャンパス内の猫の多くは手術済で、そうでない猫は周辺から入り込んできた猫であることが多い。そのことから、メンバーは活動の効果を感じているようだ。

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避妊・去勢手術が終わった猫はオスが右耳をカット、メスが左耳をカットしている

 季節限定の活動もある。冬場は非常に寒くなるため、段ボールと毛布で『ねこハウス』を作る。近隣住民からもらったカイロも入れる。大学ねこの保護の他には、京都大学の学園祭「11月祭」での展示を行っている。活動の紹介や「大学ねこ総選挙」(人気投票)などのPRからCat-Chを知る学生も多いという。

 エサをやるだけでなく、キャンパス内を清潔に保つための片づけ、増え過ぎを防ぐために避妊・去勢手術も行い、人と猫との関係や、猫が暮らす環境を改善しようとするなどCat-Chの活動の内容は幅広い。「最初は単に猫にエサをやる活動だと思っている学生がほとんどです。私もそうでした。新入生歓迎行事で人と猫との関わりについて説明を受け、環境作りも含めた大学猫の保護について学びます」と取材に応えてくれた学生は話す。

たくさんの人による大学猫活動、しかし反対意見も

 京都大学吉田キャンパスの敷地は、自然豊かな吉田山や吉田神社と重なり、住宅地とも近いので、もともと野良猫が多かったという。近隣住民、大学職員が別々に野良猫の世話をしていたが、学生の団体が協力するようになり、2013年秋に三者が力を合わせて猫へのエサやりや掃除、避妊・去勢手術を行うCat-Chが設立された

 大学猫活動は分業されていて、エサは近隣住民など協力者が提供、エサやりや片付けなど日々の活動は学生の役割。近隣住民には高齢の人が多く、毎日のエサやりなどは難しい場合が多いそうだ。

おしゃれな名前の猫も。左から「ローズマリー」「シンデレラ」「ゼブラ」

 個人的に寄付をしてくれる教員もいる一方で、敷地内で猫にエサをやらないでほしいという大学関係者もいて、反応はさまざま。「私たち、エサだけやっていると思われているんでしょう。だから、ちゃんと説明の場を持ちたいと思っています」(所属学生)

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全国のねこサークルをつなぐネットワークが!?

仲良しの「さび」(手前)と「あげ」(奥)

 Cat-Chは他大学のねこサークルとも交流があり、立命館と同志社との3大学の猫サークルで「KASP」(kyoto Ani-love Student Party)という連盟を結成。京都動物愛護センターによるイベント「Kyoto Ani-love Festival」にブースを出したり、定期的に情報交換をしあったり、地域での人と猫との関わり方についての勉強会をしたりしているそうだ。また、全国の大学のねこサークルの連盟「大学ねこ連盟U-Cats」にも加盟しており、今年の12月は京都大学がシンポジウムを主催する予定という。

キャンパス内での保護の先へ。これからのCat-Ch

今年の新歓ビラ

 現在、Cat-Chはキャンパス内にいる猫を保護するという活動内容から、さらに一歩踏み込んだことを始めようとしている。「昨年、猫が車にひかれるなどして死んでしまうことが続き、メンバーはすごくショックを受けました。いくら私たちが世話や見守りをしていても、やっぱり外で生活するのは危険。本当は家のなかで暮らす方が幸せなのではないかという意見が出て、譲渡に向けて動いています」(所属学生)。現在Webサイトで里親を募集しており、エサを食べているときの見守りも、猫が人に馴れ、スムーズに譲渡するためには必要だととらえているという。避妊・去勢手術や譲渡で猫が減ってしまうとしたら寂しいが、猫の幸せを思うとそのままにしておくことはできないとのこと。

2017年大学ねこ総選挙グランプリの「ちび」。小顔の女の子。白い胸毛がチャームポイント

 猫を思い、地道に行動するCat-Chのメンバー。大学猫活動について、1人でも多くの人に関心を持ってもらえるとうれしいと語った。

画像提供:京都大学ねこサークルCat-Ch Twitter:@KUCatCh/Facebook

谷町邦子

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