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ゲームの主人公は本当に「絶対的な正義」なのか? 「MOTHER2/3」のポーキーが問う”善悪の彼岸”(1/3 ページ)

最高に意地悪で、最高に優しいRPG。

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 先日、何十周目かになるMOTHER2をクリアした。24年前、スーファミのソフトとして発売されたMOTHER2に魅入られて以来、私は定期的にMOTHER2をプレイしたくなる発作に見舞われている。

 発作が起こるとゲーム機の電源を入れ、オネットの街を旅立って、粛々とギーグを倒す。興が乗ったら続けてMOTHER3もプレイする。24年来、そんな生活を続けている。


(C)1994 Nintendo/APE inc. Scenario:(C)1994 SHIGESATO ITOI

 そして今回、繰り返しMOTHER2/3をプレイすることで、ある一つの仮説が浮かんだため、筆を執った次第である。先に断っておくと、この記事では一切ネタバレに配慮することなく、MOTHER2及びMOTHER3についての考察をしたためていこうと思っている。未プレイの人にとっては何が何だかわからない記事になることを申し訳なく思いながら、このまま強い気持ちで書き進めてゆきたい。

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朝井麻由美(@moyomoyomoyo

フリーライター・編集者・コラムニスト。近著に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。一人行動が好き過ぎて、一人でバーベキューやスイカ割りをする日々。

※以下、MOTHER2、MOTHER3のネタバレの内容を含みます

あの世界で唯一「感情をむき出しにしている」人物

 さて、MOTHER2における登場人物のセリフを繰り返し読み込んでいく過程で、一つ気づきがあった。MOTHER2は淡々とした、感情的ではないキャラクターが大多数を占めているのだ。

 「ほのぼの」や「ハートフル」としばしば形容されるMOTHER2のイメージからすると意外に思えるが、キャラクターのかわいらしいグラフィックや、全体の優しい味付けが「ほのぼの」させているのだろう。実際はセリフや看板などの文字だけを読むと、「シュール」かつ「クール」なテキストが多い。たとえその人が焦っていたり、悲しんでいたり、怒っていたりしても、どこかその感情を客観的に見つめているような言い回しばかりなのだ。

 その中で唯一、物語の最初から最後まで、セリフで、行動で、あらゆる手段を使って感情をむき出しにしている人物がいる。ポーキーである。


MOTHER2/3に登場するポーキーとその家族(引用元:Legends of Localization Book 2: EarthBound)

 MOTHER2とMOTHER3には、ポーキーという悪役が登場する。MOTHER2の主人公であるネスの隣の家に住むポーキー。ゲーム開始直後のポーキーは、少し生意気で乱暴で意地悪なところがあるだけの、本当にごく普通の少年だった。

 ある晩、ネスの家の裏山に隕石が落ちたことからMOTHER2の物語は始まる。隕石の近くまで一緒に行ったネスとポーキー。そこで出会った“未来からの使者”ブンブーンによると、未来の世界ではギーグという“宇宙最大の破壊主”が、地球を滅ぼさんとしているらしい。ブンブーンはネスに、「言い伝えでは 3人の少年と1人の少女がギーグを倒すという」と語る。

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 それを聞いたポーキーは、「ネス! ずいぶん厄介なことに巻き込まれたみたいだな。3人の少年って、おれもはいってるのかなぁ。…いやだなぁ。ドキドキ」と胸を躍らせる。しかし実際は、ギーグの手下としてポーキーはめきめきと頭角を現していくのだった。


「ごく普通の少年」だった頃のポーキー (C)1994 Nintendo/APE inc. Scenario:(C)1994 SHIGESATO ITOI

悪役であり、悪役ではないポーキー

 MOTHER2ではラスボス(ギーグ)の手下、そして、MOTHER3ではラスボスそのものであるポーキー。私は、MOTHER2もMOTHER3も、実はポーキーの物語なのではないかと思うのである。セリフをそらで言えるほど繰り返しプレイした結果、淡々としたセリフばかりで構成される中、ポーキーの言葉だけが異質なもののように感じたのだ。

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