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「eスポーツで稼げることが分かれば人がついてくる」 プロゲーマー兼スクエニ社員が語る“兼業プロゲーマー”の実情(1/3 ページ)

ザンギエフが嫌いすぎるゲーマー。

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 ここ数年で認知度を上げ、テレビでもしばしば取り上げられるほどとなったプロゲーマー。高額の賞金がかかった大会も年々増えていき、実力次第ではゲームで大金を稼ぐことも夢ではなくなった。しかしその一方で、今のeスポーツブームが一時的なものであるという見方も根強く、今もなおその将来は不透明な状況が続いている。

 どんな競技でも安定して結果を残すことは難しいもの。しかも、プロゲーマーの場合は各タイトルの流行やバランス調整の影響も受けるため、他のプロスポーツ以上に不安定な職業と言えるだろう。そんな中、会社員として安定した収入を得ながらプロゲーマーとしても活動するハイブリッドな存在がいる。それが「兼業プロゲーマー」。スクウェア・エニックスの会社員として仕事をこなしながら、格闘ゲーム「ストリートファイターV」の世界でトッププロたちと戦うネモ氏も、そんな兼業プロゲーマーの一人だ。

 プロゲーマーともなると、1日の大半を練習時間に費やし、海外大会への出場は年間で十数回に及ぶこともある。そんな中、ネモ氏はどうやってプロゲーマーと会社員を両立させているのか。年齢は33歳、平日は会社員をしながらプロゲーマーとしても戦い続けるネモ氏に、どうしてプロゲーマーになったのか、ライフワークバランスはどうなっているのか、そして年収はどれくらいなのかなど、兼業プロゲーマーの実情を聞いてみた。

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インタビューは午前10時スタート。「インタビューが終わったら出社する」とのことだった

ネモ(根本直樹)

スクウェア・エニックスの社員であり、海外のプロゲーミングチーム・TEAM LIQUIDに所属する兼業プロ格闘ゲーマー。「ストリートファイターV」のトッププレイヤーとして知られ、2017年の公式世界大会では当日予選から勝ち上がり3位入賞を果たした。かつては「ザ・キング・オブ・ファイターズ」「ギルティギア」「MARVEL VS. CAPCOM」など多くのタイトルで活躍。スクウェア・エニックスでは「サーヴァント オブ スローンズ(SERVANT of THRONES)」などの宣伝を担当。

2018年1月24日、“リアルタイムカードバトル”をテーマとして配信が開始された「サーヴァント オブ スローンズ(SERVANT of THRONES)

会社員としてキャリアアップするためにプロゲーマーになった

―― 本日はお忙しいところありがとうございます。取材はよく受けられるんですか?

ネモ: 取材はあんまり受けてないです。取材を受けるとそれだけ拘束されちゃってゲームの練習時間がなくなりますし、メディアにたくさん出るのは引退してからで、今はとにかくゲームがしたい! って思ってます。

―― え、もう引退後のことを考えているんですね。

ネモ: もちろん。33歳でプロゲーマーをやっているわけですから、今現役なのも奇跡に近いですよ。それに、自分がプレイしている「ストリートファイターV」は国内のeスポーツを代表するタイトルになっていますけど、新しいタイトルに移り変わっていっても「今までと同じように勝てるの?」と思います。別なタイトルが出てきたらまた1から始めないといけないし、才能あるプレイヤーが出てきて勝てなくなるかもしれない。逆にそこで「勝てる」と言い切れるほうがすごいですよ。

―― 将来への不安から会社員とプロゲーマーを兼業するというのは、すごく現実的な考え方ですね。

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ネモ: それに、昔はこんなにメディアで注目されることはなかったですし、親の理解も得られなかったんです。「プロゲーマーになる」と言っても「お前何言ってんだ」と。もともと、父親に介護が必要な状態がずっと続いていて、母親も「何かあったときに困るから就職してほしい」と言われていたので、親にも心配させたくなくて。

―― そういう環境もあって現実的に考えていると。では、なぜプロゲーマーになったのでしょう。

ネモ: もともと、プロゲーマーになりたかったかというとそういう気持ちはなく、ただゲームが好きで続けてきたんですけど、格闘ゲームが「eスポーツ」に変わっていく中で、だんだん盛り上がりを見せてきた。海外の大会は賞金が高くなって、プロゲーマーになる人が出てきて、スポンサー収入も増えていった。EVOだってホテルの一室でやっていたのが、今やラスベガスのマンダレイ・ベイですよ。

※EVO:毎年夏に開催されている世界最大の格闘ゲームイベント。もともとはゲーマーコミュニティーの間で始まった小規模なイベントだったが、年々規模が拡大し現在はラスベガスで開催されるのが通例。ゲームメーカーが大きな発表を行うことも多い

―― eスポーツ周辺の環境はここ数年で大きく変わりましたね。

ネモ: これは日本でもブームが来るだろうと思って、スポンサーを付けたいと思ったんです。「プロになった方が得だな」と。

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―― プロとしての活動でいうと、スクウェア・エニックスに入社する以前に「ALIENWARE」(DELLのゲーミングPCブランド)さんと契約していましたよね。こことはどういうきっかけで契約したんでしょう。

ネモ: これ、結構ぶっちゃけトークですけど、転職したいという思いがまずあって、転職するときに有利だからプロゲーマーになったんです

―― えっ、そうなんですか。

ネモ: 前の職場(非ゲーム業界)は合併があって会社が大きくなって社員も増えていたけど、自分の今後のキャリアを考えたら「このままじゃたかが知れてるな」と。僕もいい年齢なんで結構立場も上になってくるし、任される仕事も多くなって好きなようにゲームができなくなる。それなら、自分が得意なゲームの業界に転職したほうがキャリアアップにつながるんじゃないかと思ったんです。

 そこで自分の強みを生かして転職活動しようとしたけど、面接に行った企業の人から「面白いけど、職務経験がないと採用されない」「仮に働いたとしても、家電量販店のイベントに出演させるような業務を与えて全国各地を巡らせて出張が多いけど、給料は新入社員と同じ20万円」「その状況で転職するよりは、話を聞く限り今の会社はゲームへの理解もあるので、就業規則を確認して副業としてプロゲーマーをやった方がいいんじゃないの? その方が稼げると思うよ」と言われたんですよ。まぁ説得力あるなって(笑)。

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―― 確かに、説得力ありますね。

ネモ: それに、今後転職するときに「プロゲーマーもやってます」と言えた方が武器になるとも思ったんですよね。実際それで前職のときに兼業プロゲーマーを始めたら稼げるようになったので「これは全然アリだな」と思いました。

―― プロゲーマーの肩書を転職の武器にするとは……。

朝7時に起きて、夜の1時には寝る

―― でも、会社員として働きながらプロゲーマーとしても活動するのってめちゃくちゃ忙しくないですか?

ネモ: あのー……めちゃくちゃ忙しいですよ(笑)。言ってしまえば、スクウェア・エニックスにはただ勤めているだけなので、特別な支援とかはないですから。ただゲームへの理解はあるので「別にネモくんがちゃんと仕事してくれるんだったら有給使って好き勝手すればいいんじゃない?」というスタンスなんです。もちろん応援はしてくれますし、業務も助けてもらってますけどね。

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―― 勤務時間はどうなっているんですか?

ネモ: 基本的には11時から19時までですけど、裁量労働制なので自分で好きにスケジュールを立てられるんです。大会前とかだったら、朝の9時に出社して早めに仕事を終わらせて練習しにいったりできます。普段は朝7時に起きて夜の0時から1時には寝てますね。休みも暦通りです。

―― すごい規則正しい……。

ネモ: 普通のサラリーマンですからね。体調管理も大事ですし。

―― プロゲーマーって浮世離れした人が多いイメージですけど、全然そんなことないですね。

ネモ: 前の会社で10年間鍛えられてますから。若いころにプロゲーマーになってたら大変でしたよ(笑)。

―― ところで、ネモさんのような立場だとSNSでの発言にも注意したりするんでしょうか。例えば会社の方から「この発言はマズイんじゃない?」とか言われたり。

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