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人体切断や空中浮遊で「戦う」! “ヤバい人たち”が集うマジックの世界大会では何が起こっているのか?(4/4 ページ)

「ステージで蝶を出したマジシャンがいたんですよ。そしたら……」

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競技マジシャンの日常

――大会マジシャンは普段は何をしているんでしょう?

 出場するコンテストを決めたら、それに合わせて手順を作り練習をします。僕の場合はひと月前までに手順を決めて、あとはひたすら同じ演技を通して練習します。

 平日は会社で働いているので時間が夜しか取れませんが、その分、毎週金曜は23時から翌朝7時までスタジオ練習を入れてますね。同じコンテスタント仲間とペアを組んで、お互いの演技をチェックし合うことも多いです。

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――一体どんな練習をしているんですか?

 基本的には、演技を正確に最後まで通せるか、角度的にタネが見えていないかといったチェックがベースになります。それに時折、特殊な練習を加えます。例えば観客の声援に応える練習ですね。

 「このマジシャンは誰が観客でも決まったことを機械的にやってるな」と思われると、ライブ感が生まれず萎えられてしまいます。そこで、観客が盛り上がったときに反応できるようにする練習をします。3人の観客役にバラバラな場所に座ってもらい、演技中の好きなタイミングで声援を送ってもらうんです。

 そうした観客に必ずアイコンタクトをとったりとか、アピールをしたりという練習をしています。面白いところだと、夢の中で練習している人もいますね。

――夢の中!?

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 明晰夢で練習している後輩マジシャンがいました。モノを空中に浮かせるマジックを演じていたのですが、なんでもできる明晰夢の中で「実際にモノを浮かせる」感覚を習得して、それを実際の演技で再現していましたね。

――夢の中で練習するんですね……。

 夢の中だと突拍子もないアイデアが出るから、マジックを考える上では役に立つんですよ。あと役立ったのは、トラブルへの対応力をつける練習ですね。

――トラブルというと?

 普通は準備を完璧にしてから練習するんですが、友達にセッティングをこっそり崩してもらうんです。その不完全の状態のまま、何が問題なのかを知らないで演技をします。

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 もちろん、糸を引きちぎるとか「完璧に演技続行不能なレベル」までは崩しません。ギリギリ頭を使えば最後まで演技ができるくらいまで、セッティングを何箇所か崩してもらって進めるんです。

 僕の場合は演技中に紙コップから水を飲むシーンがあるのですが、練習中に紙コップを持ち上げたら、なぜか100円玉が入っていて頭を抱えたことがあります。

――もしかして、マジシャン同士は仲悪いんですか?

 そんなことないです(即答)。でも交流がないマジシャンは大勢いますし、交流したい気持ちはあります。

――マジシャンって、同業者にもタネを隠しているんですか?

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 人によって違います。同業者に聞かれたら何でも教える人もいれば、ショーが終わったら道具を即座に片付けてそそくさと帰る秘密主義の人もいる。

 もちろん、同業者以外には基本的に隠しますね。それはタネに限ったことではありません。競技マジシャンは、自分の演技の動画を宣伝以外では出さない人が多いんですよ。もし自分のコンテスト映像がYouTubeなどに上がったりしたら大問題です。

 大会の演技は初見の驚きの反応がポイントになりますし、ライバルにまねされるのも怖い。たまに客席から違法にとられた動画が流出することがあるのですが、大体は即座に消えますよ。

 僕の場合、YouTubeにマジックの動画があがったら通知がくるように設定しており、レアそうなものがあったら消される前に保存しています。もちろん、自分の演技が上がっていたら、すぐ削除依頼を出します。

――そういう大会の手順を普通の人が見ようと思ったら、どこに行けばいいんですか?

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 大会以外では、マジックバーなどで大会出場者が働いていることはよくあります。有名なところだと、ハリウッドのマジックキャッスルに行けば見られますよ。

日本代表の演技に驚いた学生時代

――菰原さんが競技マジックを目指したきっかけを教えてください。

 マジック自体は小学校高学年くらいから趣味でやっていました。大学ではマジックサークルに所属し、年に何度かステージマジックを披露していました。

 コンテストに興味を持ったのは大学3年の頃です。大学のマジックサークルでは大抵、サークル外部の人にマジックを披露する学外発表会を開催します。この学外発表会が終わると引退する人が多いのですが、その後もステージマジックを続けたい人は、社会人サークルに所属したり、大会へ出たりするようになります。

 ある時、関東で行われている「学生マジック選手権」という大会を見に行ったら、普段のサークルでは見られないような日本全国のトップクラスの人の演技に驚いたんです。さらにラッキーだったのがその頃、FISMの日本代表を決める選考会が関東であって、日本代表の演技を見ることができたんですね。それはさらに凄かった。

 マジックの大会は見に行くだけでも面白いですが、自分でも参加してみたい。そう思って、2014年に学生マジック選手権に出場したのが最初のコンテスト経験でした。

 その時は演技の出来もひどくて、何の賞も取れなかった。それが悔しくて、以来繰り返しコンテストに出場してきました。


数々のステージに立ってきた菰原さん

――最後に、競技マジックについて伝えたいことをお願いします。

 マジシャンばかりが集まるコンテストというと、マニアックな人だけが集まっていると思いがちです。もちろんそういうマニアもいますが、本当に勝って成果を出している人たちは、そんなこと関係なしに、誰が見てもすごい。マニアも初めてマジックを見る人も、等しく驚けると保証します。だから、一度は観客として観に行ってほしいですね。

――大会はマジシャン以外でも見に行けるものなんですか?

 基本、誰でも観に行けます。参加費も安いものは5000円くらいからですし、世界最大のFISMでも8万円。1週間、世界トップクラスのマジシャンを見放題です。ショーとしてもコストパフォーマンスが最高にいいので、マジシャン以外の人にもおすすめです。

 次のFISMは2021年、カナダのケベックであります。僕も今からケベックを目指して練習をしています。みなさんとケベックでお会いできることを楽しみにしています。

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