子ダヌキが拾ったのは美しい若武者の”生首” 不思議な黄泉がえりの物語が耽美で引き込まれる
かわいすぎ、せつなすぎ。
化けだぬきの女の子が釣り上げたのは、見目麗しい若武者の生首だったーー。そんな不思議な出会いから始まる漫画がTwitterで話題です。単なる主従関係を越えそうで越えないふたりのやりとりがなんとも微笑ましく、そのぶん切ない結末が胸を締め付けます。
作者は紗久楽さわ(@climnon)さん。古き日本を耽美に描く漫画家・イラストレーターです。現在はon BLUE紙にて「百と卍」を連載中。
時は鎌倉、合戦の世。ある夜、化けだぬきの女の子が釣り上げたのは美しい若武者の生首でした。そのイケメンっぷりは動物たちをも魅了するほどで、当の子だぬきも喜びのあまりしっぽをポフンポフン。十二支の生き物たちの助力のもと若武者を蘇生させることに成功した彼女は、彼に自分の家来となることを命じます。
若武者は生前の記憶を失っていました。なればこそ、命を与えてくれた子だぬきに対して「今生一生あなたの為に」と忠誠を誓います。子だぬきは人間の娘に化けると、顔を赤らめて嬉しそうに喜ぶのでした。
恩返しにと武芸を披露する若武者と、「褒美をつかわす」ともふもふの体で首に巻きつく子だぬき。ふたりの笑顔はなんとも幸せそう。血なまぐさい俗世とは違う時間が流れているのではないかと錯覚してしまいます。
ですが、黄泉がえりの物語には切ない結末が待っているもの。幸せな時間はそう長く続きません。連れ立って釣りにでかけた若武者が見たのは、水面に映った死にゆく瞬間の自分。蘇生した死者は100日経つまで水鏡に姿を映してはいけない決まりだったのです。全てを思い出した若武者の生首は真っ逆さまに池へと落ちていきます。そんな彼を追うように、子だぬきの涙も池へと吸い込まれていくのでした。
作者の紗久楽さわさんによれば、若武者に特定のモデルはいませんが、強いて挙げるなら歌舞伎「熊谷陣屋」に登場する美少年・小次郎に想いを馳せながら描いたのだとか。小次郎は平敦盛と瓜二つの顔を持って生まれ、敦盛の代わりに首を斬られる運命をたどります。真偽のほどは「若武者も忘れてしまっていることなのでお好きに想像していただけましたら嬉しいです」とのこと。
儚い一瞬を切り取った物語に、Twitterでは「尊い……」という感想が続出しています。
画像提供:紗久楽さわ(@climnon)さん
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