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「天才とはイっちゃってる人」「プロは思考を言語化しない」 『アオアシ』小林有吾×棋士・広瀬章人が語る、自分の世界を広げる方法(2/6 ページ)

将棋とサッカーと漫画、ジャンルを飛び越えて「世界を広げる方法」を探る。

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広瀬:普段は本当におだやかで、知識が豊富な方。何にでも詳しいです。

 それで、盤を前にすると鬼ですね(笑)。自分は最近は慣れましたけど、初めて対戦したときは緊張しました。棋士から見ても、羽生さんだけは別格で、雲の上の存在と思ってることが――特に若手時代は多くて。盤を挟んで対峙する機会があるだけでも珍しいことなので。

小林:その話で思い出したんですけど、将棋とサッカーの共通するところっていろいろあると思ってて、その中でも(相手に対する)「目に見えない“圧力”」というのがあるんじゃないかと思っています。

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 無機質な壁というか、そういうのを感じるときがあって。「ここから先は進めない……!」みたいな。将棋の場合、不思議とネット将棋だと感じないんですけど、対面で人と指すと感じるんですよね。

広瀬:盤を前にしてみないと分からないことっていうのは確かにたくさんありますね。羽生さんもそうですし、他のタイトルホルダーの棋士もそうですし。

小林:圧倒的に力の差がある相手だとありますよね。サッカーでも、今年のW杯の日本対ベルギー戦の途中からとか、見てるだけでも感じるものが。アオアシでいうと、13巻の栗林(※)。

栗林晴久

主人公と同じユースチームの先輩で、高校2年生ながら既にトップチームでもデビューしている作中屈指の天才プレイヤー。ユースの最高傑作、クラブの至宝と呼ばれている。天才過ぎてたまにちょっと怖い。

 あの栗林の「ボールどころか身体にも触れられない」っていうシーンは、フランスのエースだったジダンのプレイ動画を見て描いたものです。「こわっ」と思って。あの栗林は“圧”出してます。唯一無二の存在として描いてますね。

――ただそれだけ、エゴも強いのではないですか。

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小林:栗林はエゴの塊っていうか、“イっちゃってる”と思うんですよね。これは実際のサッカー選手を取材して思ったことでもありますが、「本当にサッカーにしか興味がない人」って世の中にいるんですよ。

 そういう“怖さ”の表現みたいなものは、自分の漫画家としての経験からも来ていて、すごい漫画家さんに会ったときに、やっぱり言葉では表せない圧みたいなものを感じたんです。それが作品の中にも入っていますね。

――羽生さんや、作中でいう栗林のような“天才”を描くときに、小林さんが意識していることは?

小林:自分の場合は、才能を描くときに、エゴの強さ。天才の裏にエゴの強さがあると思ってます。エゴの強さイコール(天才性)、みたいなところがある。自分自身がガツガツしてる人間なので、漫画にするときにもそこが強く出てると思う。

 他の漫画家さんと話してみても、みんなすごくエゴが強いですね。気弱そうな人も多いのに、ちょっと話してみたら芯が強くて。最後はそこの勝負になると思うんですよ。

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広瀬:羽生さんも、若手のころはエゴ……と言っていいのかな、があったと思うんですよ。でも、今は本当に穏やかで立派な方。将棋界には「地位は人を作る」という言葉があるんですが、だからタイトルを取っているような人で、あんまりエゴを前面に出すような人は少ないですね。

 あとは昔からの風習ですね。勝っても大げさに喜ばないとか。みんな芯では負けず嫌いの人が多いでしょうけど、あんまり傍目にはそうは見えない。スポーツはエゴがある人のほうが残るのかもしれませんが。

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