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本当に痩せるサプリは「ほぼ毒」!? 専門家が語る「ダイエット商材の闇」とは

国内最大級のダイエット商品専門口コミサイト「ダイエットカフェ」を運営する福田尚広さんに聞きました。

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 去る3月4日、“青汁王子”こと三崎優太容疑者が法人税法違反などの疑いで起訴されました。三崎氏が代表取締役を務める「メディアハーツ」は、もともと「すっきりフルーツ青汁」という健康食品のヒットで急成長を遂げた会社。ニュースを聞いて「青汁って、そんなにもうかるの?」と思った方もいるのではないでしょうか。

 口コミサイトダイエットカフェは、さまざまなダイエット商品を専門に扱う、日本最大級のレビューサイト。約8000種類にも及ぶ取り扱い商品の中にはもちろん“青汁”も多数含まれています。

 しかし、同サイトを10年以上にわたって運営してきた、T.M.Communityの福田尚広(ふくだたかひろ)氏は「(青汁に限らず)ダイエット商材にはさまざまな闇がある」と指摘します。ダイエット商材は本当に効果があるのか、なぜ人はダイエット商材を買ってしまうのかなど、ダイエット商材にまつわるさまざまな疑問について福田氏に聞きました。

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「ダイエットカフェ」を10年以上にわたって運営してきた福田尚広氏

口コミを分析した結果、約7割は効果なし

――そもそもですが、ダイエット商材の効果ってどこまで信じてよいのでしょうか。

福田:ダイエットカフェでは現在、8000種類以上の商品を扱っています。そのうち口コミ数が一定以上あった834商品について調べたところ、およそ7割は「体重が減らない人のほうが多い」という結果になりました。口コミを投稿するときに「使用期間」と「使用前と使用後の体重」を任意で書いてもらっていて、1カ月以上使用した人を対象に、体重が減った人数と減らなかった人数を比較しています。

約7割は痩せない(ダイエットカフェ調査より)

――逆にいうと、3割は効果があるということですか。

福田:効果があった3割の内訳を見てみると、運動系DVDが一番効いていますね。あとはダイエット系のエステも入ってきています。ただ、エステの場合は汗をかいて体重が減っただけという印象もありますが……。

 それから置き換え商品の一部ですね。食事の代わりにその商品を摂ることで、1食分を置き換えるというものです。

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――青汁も置き換え商品の一種ですよね。ただ置き換え商品って、実際はほぼ1食抜いているのとあまり変わらず、体重が減って当たり前だろうといった声も見かけます。

福田:置き換え商品の中にも、体重が減っている人が多い商品とそうでない商品があるんです。口コミを分析すると、体重が減っている置き換え商品は総じて「味がおいしくて、腹持ちもいい」という傾向がありますね。青汁は一般的には、腹持ちはそれほど良くなく、ダイエットカフェでの評価はあまり高くありません。

――他にはどんなものがありますか。

福田:あとは強い副作用があるサプリですね。

――「痩せるサプリ」ってほとんどは効果がないものと思っていたのですが、本当に痩せるものもあるんですか。

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福田:口コミを分析したところ、75.4%のサプリは飲んでもほぼ痩せないようです。おそらくビタミン剤みたいなものなのでしょう。ただ、24.6%は実際に痩せたという結果が出ています。

――おお!

福田:ただ、こうしたサプリの多くは日本では販売を禁止されていたり、厚生労働省が注意を呼びかけたりしているもので、痩せる代わりにものすごい副作用があるんですよ。この副作用の中にはほぼ毒と言ってよいほど人体に有害なものもあります。当然、日本では買えませんから、海外のサイトから個人で輸入したりするケースが多いようです。

副作用が報告されている商材の多くは「サプリ」(ダイエットカフェ調査より)
本当に痩せるサプリの多くは「ほぼ毒」と警鐘を鳴らす

――副作用というのは、具体的にどんな……?

福田:飲んだら動悸が止まらなくなって、汗がめちゃくちゃ出て、のどがものすごく渇く。でも食欲がなくなるのは本当で、確かに体重は減るんですよ。毒みたいな成分が含まれてますから。中には数年前、実際に死者が出たものもあります。

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 健康的に痩せたいなら、ダイエットDVDで運動をするか、せめて摂取カロリーを少なくするような置き換え食品を摂るくらいにしておいたほうがいいなというのが私の印象です。

――副作用がすごいと、やはり評価も下がったりするのでしょうか。

福田:いえ、それが口コミを書いている人は満足しているんですよ。「このサプリは副作用がすごいです、だけど1カ月で5キロやせました、評価は5」とか。健康よりも痩せることのほうが重要になってしまっている。例えば過去にダイエットカフェでもっとも評価が高かったサプリは、5段階評価で平均4.1点をマークしていました。サイトの中央値が2.7くらいですから、これは相当な高評価です。

 ただ反面、「副作用」というタグがついた口コミもすさまじく多かった。一時期、この商品がランキング1位になってしまっていたことがあって、このままではダイエットカフェが原因で死亡事故が起きかねないと思い、今は「副作用」タグが一定数以上ついている商品はランキングから除外するようにしています。本当はなるべくユーザーの口コミを尊重したいと思っているのですが、これは例外中の例外で対応しました。

レビュー投稿時、「副作用」というタグを付けることができる
食品安全委員会は健康食品の健康被害について19項目のメッセージを発信している(食品安全委員会「いわゆる「健康食品」について」より)

――つらい副作用があれば当然口コミ評価も低くなるものと思っていましたが、意外です。

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福田:副作用は低評価にはつながっていないですね。まれに「死にかけました、評価1」という口コミもありますが、「のどがものすごく渇いて、動悸がするけど5キロ痩せたので評価5」といった人が大半です。

ダイエッターの心の闇が、ウソ広告を信じさせてしまう

――そこまでいくと、完全に危険な領域に足を踏み入れてしまっていると思うのですが、なぜこうした判断に至ってしまうのでしょうか。

福田:ダイエットカフェに書き込まれた口コミを見ていると、背景には大きく2つの消費者心理があると思っています。1つ目は「ダイエッターは必死だ」ということです。

 例えばもしも「あなたは不治の病です。半年で死にます。現代の医療では治りません」と医者から言われ、そんな矢先に「この健康食品を食べれば治る」という広告を見せられたらどうでしょう。これは極端な例ですが、中には「怪しいけれど信じてみたい」「ダメもとで試してみよう」と考える人がいてもおかしくないですよね。ダイエットに悩んでいる人にとっては、「痩せる」ということはそれくらい死活問題なんです。

――なるほど。もう1つは?

福田:2つ目は「ダイエット中は思考が鈍る」ということです。人間って何かを我慢しているときは思考能力が鈍るんですよ。眠いと頭が働かなくなるように、おなかがすいていると冷静な判断ができなくなってしまう。そういうときに「このサプリなら痩せる!」と言われるとうっかり買ってしまったりする。この2つですね。端的に言うと、「ダイエッターはだまされやすい」んです。

何かを我慢しているときは思考能力が鈍る、と福田氏は指摘します

昔から変わらない「悪質業者の三種の神器」

――ダイエットカフェを立ち上げた2008年当時と比べて、売り方や手口に変化はありますか?

福田:優良誤認有利誤認、それと芸能人を使ったステルスマーケティング(ステマ)を、私は「悪質業者の三種の神器」と呼んでいます。この3つは立ち上げ当初からずっと変わらず続いていますね。これだけずっと使われているということは、よほど効果的なのだろうと思います。

――書き方や売り文句なども変わっていませんか。

福田:一昔前は「これで痩せました」などの過激な表現もよく見ましたが、今はステマが問題視されていることもあって、どこも以前よりは気を付けるようになった印象はありますね。

――代わりに悪質なアフィリエイト記事が増えた印象もあるのですが、そこはどうでしょう。

福田:販売業者よりもアフィリエイターの方が過激なことを書きがちな傾向はあります。薬機法(旧薬事法)がありますから、広告主(商品の販売元)は自分で「痩せる」とは書けません。しかし、アフィリエイター個人の感想としてならそういう過激なことも言える、そういう認識で使っているんだろうなと感じます。アフィリエイター側も自分で商品を作っているわけではありませんし、匿名や偽名で書いている人も多いので、悪いことをしている感覚が薄くなってしまうのでしょう。

悪質業者の基本的なやり方は10年前から変わっていない、と福田氏
消費者庁もアフィリエイトサイトが規制の対象になりうるとしている(消費者庁「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」より)

――過激な広告というと、1月22日に放送されたNHK「クローズアップ現代+」で、マツコ・デラックスさんを使ったフェイク広告が報道されました。あそこまで行くともはや詐欺(※タレント画像の無断使用や、コメントの捏造など)だと思うのですが、ここまで悪質なものも昔からあったのでしょうか。

福田:明らかなウソというのはなかったと思います。そういう意味では、倫理観が鈍ってきているのかもしれません。ああいうのは誰かがやると「それはアリなんだ」と他もマネするようになり、たちまち広がってしまうんです。

 また別の問題もあって、逮捕されて罰金や懲役といったことになっても、結局、悪徳業者の手元には大金が残ってしまうんですよね。法的なところを飛び越えて、損得勘定だけで動いている人たちが増えている印象があります。ダイエット業界の中にも白から黒までグラデーションがありますが、ここまで黒いのはもう一線を踏み越えていますよね。

「マツコ会議」公式サイトでも、悪質広告への注意を呼びかける事態に(「マツコ会議」公式サイトより)
番組公式Twitterでも無関係であることを注意喚起している

急速に広がった「定期購入」商法

――販売方法の変化と言えば、2015年度からから健康食品の定期購入に関するトラブルが増えていると、国民生活センターが注意を促しています。メディアハーツの「すっきりフルーツ青汁」をはじめ、こうした“定期購入”の制度を取り入れているダイエット商材はかなり多いように見えますが、この方法も最近のトレンドなのでしょうか。

福田:私が初めて「定期購入」というシステムを認識したのが、まさに「すっきりフルーツ青汁」のケースでした。確か2015年だったと思いますが、ここから一気に広がっていったように感じます。

――念のため、定期購入の仕組みについて解説していただけますか。

福田:定期購入コースを選ぶと、初回は5000円の商品が500円くらいで買えるというのが一般的な仕組みです。ただ、安くなるのは1回目だけで、2回目以降はぐっと高くなる。加えて、4回目まで解約できない契約になっていたりするため、1回きりのお試しだと思って購入したら、実は1万円以上の注文が確定していた――といった誤認が起こりやすい。今はいろんな会社が取り入れていますが、縛りの回数が違うくらいで、基本的な仕組みはだいたい同じですね。

定期購入の一例。通常3980円のところ、定期購入を選ぶと初回630円に

――ダイエットカフェでも定期購入のトラブル報告はありますか?

福田:口コミで多いのはやはり「解約しにくい」という声ですね。解約できる日が1ヶ月のうち数日しかないとか、注文はネットでできるのに、解約は電話とFAXでしかできないとか。

――縛り回数や解約方法が分かりにくいといった声がよく聞かれますが、最近はどうなのでしょう。

福田:さすがに「書いてない」というケースはないと思いますが、「書いてある場所が分かりにくい」というケースは今でもあります。悪質なケースだと例えば「買います」というボタンを押すと、そのままスルスルっと画面がスクロールしていって、購入条件の部分を飛ばしてしまったりします。

 ただ、それでも最盛期に比べると今は多少マシになってきていて、以前は「解約の電話がそもそもつながらない」「全く解約に応じてもらえない」「解約しようとしたらひどい条件を提示された」といった声もありましたが、最近では「スムーズに解約できました」といった書き込みも増えています。あまりもめると消費生活センターに相談されたり、ネットに書き込まれたりするので、業者側も警戒するようになったのかもしれません。

国民生活センターの注意喚起(国民生活センター 子どもサポート情報より)

ダイエット商材のトラブルに遭わないために

――口コミサイトを運営していると、どうしてもステマ対策が必要になってくると思うのですが、ダイエットカフェではそのあたりはどう対応していますか。

福田:まず、特定の企業の純広告やアフィリエイトなどを入れないようにしています。広告はあくまでGoogleアドセンスだけで、特定の業者を優遇したりすることもありません。

 また、ステマと考えられる書き込みは随時非公開にしています。判別方法を書いてしまうと業者に対策されてしまうので詳しくは言えないのですが、かなりの精度だと自負しています。ここは命を懸けて対策しています。

「疑わしきは非表示」がダイエットカフェの方針。10年間のノウハウから、ステマと思われる書き込みはすぐに分かると言います

――普通の人がステマを見分ける場合、何かアドバイスはありますか。

福田:気になる商品があったら、ダイエットカフェと他の口コミサイトで評価を見比べてみてください。ダイエットカフェと他のサイトで評価が大きく異なっていた場合、もしかしたらステマが行われている可能性があるかもしれません。

――最後になりますが、ダイエット商材のトラブルに遭わないためにはどうしたらよいと思いますか。

福田:個別に対策しても結局はイタチごっこになってしまいます。インパクトがあるのは法律や業界ルールを整備することですが、これでさえ一時的には効果があっても、悪徳業者は必ずそれをすり抜ける方法を見つけてきます。

 私が考えているのは、真実の情報をみんなが発信していくことです。ダイエットカフェのような口コミサイトはその方法の1つですね。芸能人やモデルさんが「こういう商品はやめましょう」と言っていくことも大切です。

――個人レベルでできることはあるのでしょうか。

福田:ダイエッターであれば「身近な人に相談する」ことが第一だと思います。ダイエッター本人は必死ですから、どうしても周りが見えにくくなってしまう。友人や知人など、ニュートラルな立場の人が相談に乗ってあげることが効果的だと思います。

(了)

【3月20日15時30分追記】メディアハーツより修正依頼があり、タイトルと本文、画像の一部を修正いたしました。



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