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なにここ天国? “国宝級”のレア筐体も並ぶ、大阪・新世界の謎ゲーセン「ザリガニ」を君は知っているか

オープンの裏には「ゲーム好きだった父の思い」がありました。

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 インバウンド需要により連日にぎわいを見せる大阪・新世界。そこで、とあるゲームセンターが人気を集めています。

 そのお店の名は「レトロゲーセン ザリガニ」と言いまして、そこでは普通のゲームセンターでは見ることのできないレアなゲーム筐体が多数稼働しており、それ目当てにはるばる海外から飛行機でやってくる旅行者もいるのだとか。

 公式HPも存在せず、これまでは誰が運営しているのか一切が謎に包まれていましたが、2018年冬に突如公式Twitterアカウント(@RETROZARIGANI)を開設。これはチャンスと取材を申し込んだところ、2019年3月の本店リニューアルに合わせてインタビューの機会をゲット、オーナーにお話を伺い、今まで謎に包まれていたザリガニの内部に迫ることができました。

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Osaka Metro堺筋線恵美須町駅3番出口から徒歩3分程度のところにある本店(3月にリニューアル)、入り口前でポーズをとっているのは店長の西辻さん

店内には“国宝級”のレア筐体がずらり

 ザリガニ人気の理由は、なんといっても珍しいゲームの筐体がたくさん遊べるということでしょう。オーナー曰く、日本ではここでしか遊ぶことのできないような激レア筐体もあるそうです。

店の中には筐体がズラリ

 中でも自慢の品は「アウトラン」や「アフターバーナーII」といった可動式筐体が特徴の「セガ体感ゲームシリーズ」。これらのゲーム自体はニンテンドー3DSなどの家庭用ゲーム機でも発売されていますが、稼働当時の“完全な楽しさ”を文字通り体感できるのは関西でもここだけ(※取材時点)という、きわめて希少価値が高いものとなっています。

「セガ体感ゲームシリーズ」第4弾として1986年に登場した「アウトラン」のデラックス筺体。ゲーム内のコースに合わせて筐体が動き、高い臨場感を味わうことができる。現在稼働しているのは、ザリガニを入れて日本でわずか3台とのこと
「アフターバーナーII」はまさかのダブルクレイドル筐体!(左右だけでなく前後にも可動するタイプ) 複数存在した筐体タイプの中でも特にレアな逸品で、セガ公式が保管しているものを除けば現役で稼働しているのはこの1台のみ
その近くに置かれていたのはタイトーの「ナイトストライカー」。これも流通数が非常に少ないことで有名で、完全オリジナルフル稼働筐体は日本でこの1台のみ!

 もちろん、ザリガニのすごさはこれだけにとどまりません。今では希少となり、せいぜいネットでプレイ動画を見ることしかできないようなレアゲーが1カ所に集い、気軽に遊べてしまうのです。

深海をモチーフとした独自の世界観が人気の「ダライアス」も大型筐体でプレイ可能
ナムコより発売されたデコトラレーシングゲーム「トラック狂走曲」。その後ろにはアーケード版「スパルタンX」も
さまざまなタイプの「グラディウス」が揃った「あいらぶグラディウス」コーナー。その中のひとつ「VSグラディウス」はファミコン仕様で遊ぶことができ、オークションサイトでその基板が120万を超えたこともあるのだとか
1997年に登場した“3D版グラディウス”ともいうべき異色作「ソーラーアサルト」
ウルトラマン好きならぜひ一度プレイしたい「ウルトラ警備隊」。各作品の防衛チームの戦闘機を操作し、円盤部隊や怪獣と戦うシューティングゲーム

 それだけでなく、「パックマン」や「マリオブラザーズ」といったような、懐かしのゲームも楽しめます。店内では140台以上のゲームが稼働しており、設置規模は大手ゲームセンターにも劣りません。

ゲームセンターの定番的存在「ファイナルファイト」
81年にコナミから発売された「スーパーコブラ」。80年代初期のレトロなゲームは若い層から人気なのだとか
知る人ぞ知る海賊版ゲーム「ストリートファイター2 レインボー」。そのメチャクチャなバランスは語り草
初代「ストリートファイター」も
「元祖ケンカゲーム」こと「熱血硬派くにおくん」。その難易度も硬派仕様
変わり種の狙撃型筐体「ゴルゴ13」。スコープをのぞきながら、原作マンガさながらにターゲットを狙撃していく
「R-TYPE」や「ファンタジーゾーン」など、シューティングゲームも充実

 また、店舗の2階および3階は「対戦の塔」となっており、「ストリートファイター」や「バーチャファイター」などさまざまな格闘ゲームで思う存分対戦が楽しめるようになっています。ズラリと並べられた対戦台を見て、格闘ゲーム全盛期を思い出す方もいるかもしれませんね。

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修羅への入り口
入口付近には「スーパーストリートファイター2X」がズラリ。もちろん対戦台仕様です
「全員が壊れているので逆にバランスがとれている」というゲームバランスで一部に愛好家の多い「北斗の拳」も
カプコン発の格闘ゲーム「ヴァンパイア セイヴァー」。現在でも高い人気がある
まさかのアーケード版「いっき」
こちらもかなりレアなゲーム「与作とどん兵衛」(※当初「与作」と書いていましたが、「与作とどん兵衛」の誤りでした。お詫びして訂正いたします)
今でもファンが多い「ストリートファイターIII」も
別のフロアには「バーチャファイターシリーズ」もズラリ
「サムライスピリッツ」や「KOF」といったSNK発のゲームももちろん完備
「鉄拳」や「ジョジョの奇妙な冒険」なども

ゲーム好きだった父親の思いを叶えるために

 レア筐体を遊ぶため、飛行機からはるばる訪れる人もいるというこのザリガニ、いったいどのようなきっかけで生まれたのかというと、オーナーのお父さんが関係しているとのこと。

 病気によって早くに亡くなってしまったお父さんは、自分でテーブル型ゲーム筐体を購入するほどの数寄者。新世界の空き店舗を譲り受けた際、そんなお父さんの「ゲームがしたい」という思いを叶えるため、2016年12月にこのお店は誕生しました。

 最初はゲームセンター経営の知識がなく、ほとんど「ガレージゲーセンの延長」だったそうですが、そうした中で「昔遊んでいたゲームをもう一度楽しんでもらおう」という考えが芽生え、興味はなかなか手に入らないレア筐体へ。問屋から購入するだけでなく、マニアから譲ってもらうなどして希少なゲームを店内で稼働させるようになったのです。

伝説の奇ゲーとされる「トリオ・ザ・パンチ」。その不可思議な内容は語り草となっている
伝説のカンフースター、ジャッキー・チェンが登場する実写風格闘ゲームで、その名も「ジャッキー・チェン 」。最後に待ち受けるジャッキーを倒すことができるか
お地蔵さんやカッパが血みどろの戦いを繰り広げる「大江戸ファイト」。ザリガニ店内はこのような他では見られない希少ゲームであふれている

 もちろん、レアなゲーム筐体の稼働には、メンテナンスの問題がつきまといます。珍しいゲームというのは交換部品が入手しづらく、場合によっては一からそれらを製造し直す必要もあるのだとか。そのような状況なので、維持費がインカムを上回ってしまうこともしばしばあるそうです。

独自のループレバーが採用されている「怒号層圏」。レトロゲーの中にはこうしたユニークな仕様の筺体も少なくないため、メンテナンスの苦労がしのばれる
同名の時代劇マンガを原作とした「子連れ狼」。この店舗に置かれているゲームはリリースから30年以上を経過しているものも多い

 しかし、それでもこのザリガニが運営され続けている理由は、オーナーや店長がゲームセンター経営を「趣味と維持の延長」とある意味割り切っていること、そして「珍しいゲームを末永く遊んでもらいたい」という理念を持っているところにあるようです。

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 国内に一つしかないような超レアゲームをただ保管しておくだけでなく、たくさんの人に楽しんでもらう、とにかく「遊ばせたい」という意気込みを、今回の取材では強く感じることができました。

SNKの「餓狼伝説」シリーズのひとつ「餓狼伝説 SPECIAL」。『コミックボンボン』で連載されていたマンガもネット上では人気がある
その難易度の高さがマニアをうならせる「バトルガレッガ」。隣には弾幕シューティングの草分け的な存在として知られる「怒首領蜂」も
セガの「スーパーロコモーティブ」。知っている人はかなりのセガマニア
81年リリースの「リバーパトロール」。これも日本国内で稼働しているのはこの1台のみとのこと

 そうした熱意が伝わったのか、最近はゲーマーだけでなく、これまでそうしたものに興味がなかった若い女性層が、「ユニークな雰囲気の場所」としてインスタ映えを狙い、訪れるようになったのだとか。

 そんなザリガニは、本店を中心に新世界内で複数店舗を展開し、新世界の裏名所とも言える存在となっています。どこのゲームセンターにもないレア筐体を多くのお客さんに遊ばせるためにこれからも「趣味と維持の延長」で運営を続けていくとのことで、これからが期待できそうですね。

別店舗のひとつ。ガチャガチャも取り扱っている
最後に店長さんたちと記念写真。中央はザリガニのオーナー(亡くなったお父さんの奥さん)で、両脇が「現在売り出し中」という店長の西辻さん(左)とスタッフの仁さん(右)。Twitterアカウントの設立はこの2人の提案による広報戦略の一環なのだとか(オーナーの顔部分は本人のご希望によりぼかしています)

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