新プリキュア「キュアコスモ」に見る、追加プリキュアの“商業上の重要性”について:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
ネコ耳、ネコシッポ、ネコポーズ、舌をペロっと出す変身。子どもにも大人にも人気出そう!
追加プリキュアは商業上でも重要
さて、そんな「新プリキュア、キュアコスモ」の誕生にザワつくプリキュア界隈(かいわい)ですが、もちろん「新プリキュア」の登場は物語にも重要な影響を与えると同時に、「商業的にも重要な意味」を持つのです。6~7月に加入することの多い「新プリキュア」は、お父さんお母さんのボーナス時期を的確に狙ってくるのです。そしてその成功の有無は、その先のプリキュアシリーズにも大きな影響を与えることとなるのです。
追加プリキュアの存在がいかに「商業上でも重要な意味も持つのか?」が分かる2つのエピソードを紹介したいと思います。
追加戦士なし、後半に課題の残った「スマイルプリキュア!」
まず1つ目。2012年「スマイルプリキュア!」です。5人の個性的なプリキュアが繰り広げる明るく楽しい作風が特徴のシリーズです。僕もキュアビューティ、大好きです!!
このシリーズは「追加の新プリキュア」が登場せず、最後まで5人で戦った比較的めずらしいシリーズなのです(追加プリキュアの代わりに「プリンセスフォーム」という衣装を変えた強化フォームが採用されました)。
この「スマイルプリキュア!」は、開始当初は商業的には絶好調でした。玩具業界紙『トイジャーナル』(発行:東京玩具人形協同組合)によると、変身アイテム「カラフル変身!スマイルパクト」が前年の270%と爆発的に売れ、「シリーズ史上最高のスタートダッシュ」までと言及されます。その後も「一部では欠品も出ている」(同2012年5月号)や「プリキュア史上No1の年間売り上げも目指せる勢い」(同2012年6月号)と景気の良い言葉が飛び交っていました。
前作比で190%(販売5週累計販売額)、これまでのシリーズ9作品の中でも史上最高のスタートダッシュとなった「スマイルプリキュア!」
現在特に同作品の年間メインアイテムである「カラフル変身スマイルパクト」の絶好調ぷりが際立っており、前作のメインアイテム対比で270%
[月刊トイジャーナル]2012年5月 P27
お蔭様でプリキュア史上No.1の年間売り上げも目指せる勢い[月刊トイジャーナル]2012年6月号
スタートと同時に歴代最高レベルで絶好調だった「スマイルプリキュア!」。このまま歴代最高の売り上げ記録を更新するのか? と、思われていたのですが、そのニュアンスは夏以降から変化していきます。
夏以降は「伸び率は落ちたとはいえ~」「若干落ち着きつつも~」といった表現が見られるようになり、ややトーンダウン。最終的には業界紙『トイジャーナル』では「立ち上がりは良かったものの、夏以降に失速した印象」(月刊トイジャーナル2013年1月号)とまで表現されるようになりました。
本誌 一方で「プリキュア」は立ち上がりは非常に良かったものの、夏以降に失速した印象ですが。
上野「スマイルプリキュア!」に関してはメイン商材の「スマイルパクト」に人気が集中しすぎてしまいました。 メイン商材が良すぎて第2弾商品の購買に結びつかなかった。ですのでこちらに関しては商品ラインアップに課題が残りました。
[月刊トイジャーナル]2013年1月号 P35
前半は「シリーズ最高の売り上げを目指せる」勢いだった「スマイルプリキュア!」は、夏以降は(玩具的には)大きな盛り上がりを見せることができなかったのです(あくまで「玩具的には」ですよ)。
その要因として、バンダイでは「スマイルパクトに変わる新しいヒット商品が生まれなかった」「商品構成に問題があった」ために「年間を通した貢献が出来なかった」と分析しています。「商品構成に問題があった」というのはすなわち「追加プリキュア」を出さなかったことにより年間を通しての売り上げ貢献ができなかった、という意味が含まれるものと思われます。
追加プリキュアの有無がプリキュアの売り上げ的にも大きな意味合いを持つ1つの例だと思われます。1つの商品が売れただけではダメなのです。「年間を通して売り上げを上げること」が重要なのです。そのためにも、追加プリキュアは必要なのだと思います。
プリキュアシリーズ復活のきっかけとなった「キュアスカーレット」
2つ目は2015年「Go!プリンセスプリキュア」です。「Go!プリンセスプリキュア」の前年2014年「ハピネスチャージプリキュア!」は、「妖怪ウォッチ」「アナと雪の女王」などの大ブームにより、苦戦を強いられ、前年比66%と売り上げを大きく落としていました。
しかし実は、その「ハピネスチャージプリキュア!」よりも次作「Go!プリンセスプリキュア」の前半の方が商業的には大きな落ち込みを見せていたことはあまり知られていません。業界紙『トイジャーナル』の記述を見てみます。
1月末から商品が売り場に並び2月1日からTVアニメがスタートした「Go!プリンセスプリキュア」は年間を通して苦戦した前作のダウントレンドを引きずりスロースタートに。
[月刊トイジャーナル]2015年3月 P50
女児に関しては「プリキュア」の苦戦が鮮明。前作と比較しても半分しか取れていないという法人も。
[月刊トイジャーナル]2015年4月 P70
「Go!プリンセスプリキュア」の春先は、(数字が落ちていた前年の)さらに「半分程度」という最悪な状況でした。仮にこのままダウントレンドが続くようであれば、将来のプリキュアシリーズにも大きな影響を与えかねません。このまま「Go!プリンセスプリキュア」も大きく落ち込んでしまうのか………? そんな不安がよぎります。
しかしそんな中、新プリキュア「キュアスカーレット」の投入により市場の様子が一変するのです。「前年の半分程度」と言及されていたプリキュアは、夏以降「低迷していたプリキュアが新キャラクター商品の健闘により復調基調に転じる(2015年9月号)、「夏以降、スカーレットが登場して右肩上がりに伸び、年末商戦では前年比124%」(同2016年2月号)と、大きく復調へと向かっていることに言及されます。
プリキュアに関しては夏以降、新キャラのスカーレットが登場して右肩上がりに伸び今回の年末商戦では前年比124%となりました。
[月刊トイジャーナル]2016年2月号 P48~47
前作「Go!プリンセスプリキュア」は立ち上げ当初こそ低空飛行がつづいたものの、夏休み商戦をきっかけに復調基調に転じ、年間を通した売り上げでは前作を上回る結果に。
特に昨年末商戦での躍進は、流通にも未就学女児キャラクターナンバーワン復活を印象付けたのではないだろうか。
[月刊トイジャーナル]2016年2月号 P9
業界紙によるバンダイの「Go!プリンセスプリキュア」の最終的な総括としても、「立ち上げは低空飛行だったものの、キュアスカーレットの投入により夏休み商戦で復調基調に転じ、年末商戦で大躍進」「年間を通した売り上げは昨年を上回り、流通にも未就学児キャラナンバーワン復活を印象付けた」(月刊『トイジャーナル』2016年2月号)といったものとなりました。
もちろんこの時期には、「妖怪ウォッチ」のトレンドダウンなどもありましたが、追加プリキュア「キュアスカーレット」の投入により、プリキュア市場が一変し、回復傾向へと向かうようになったのもまた事実なのです。
そして、これ以降、プリキュアは「シリーズ全体」としても商業的に復調していくこととなるのです。
キュアコスモの重要性
追加プリキュアにより、商業的にも大きく潮目が変わった2例を紹介しました。それほどまでにプリキュアにおける新プリキュアというのは大きな意味を持つのです。
(しかし1人あたり数十億を稼ぐ、と考えるとスゴイですよね、プリキュア。僕の数百倍は稼いでいる……)。
もちろん物語的にも追加プリキュアはストーリーの根幹に関わり、物語全体の方向を決定づける役割を担っていますし、追加プリキュアはその強さから子どもたちの人気も高い傾向にあります。つまり追加プリキュアは、物語的にも商業的にも、プリキュアという作品自体をも左右するレベルで重要な意味を持っているのです。
プリキュアというアニメーションはいくら視聴率が高くても、Blu-rayが売れても、おもちゃなどの関連商品の売り上げが落ち込めば、シリーズ終了の危機が訪れてしまうのです。
だから、そこのお母さん! お父さん! プリキュアシリーズが続いていくように、お子様のお誕生日に、クリスマスプレゼントにはプリキュアのおもちゃをぜひ! 買ってあげてください! お子さまがいない方も、ぜひ「ぬり絵1つ」でも買えば、それは次のプリキュアシリーズへとつながっていくのです。
2019年のプリキュアは、前年の「プリキュア15周年記念」での躍進もあり、商業的には一時期の落ち込みから完全復活、右肩上がりの好調を維持しています。しかし歴史的に見ても当然その勢いがずっと続くわけではありません。
そんな中、登場した新しいプリキュア「キュアコスモ」はどんな活躍を子どもたちにみせてくれるのでしょうか? たくさんの子どもたちを笑顔にしてくれると良いですよね。おもちゃもたくさん売れると良いですよね。レインボーパフューム、なかなか面白そうな玩具ですよ。
とにかく、この先の「スター☆トゥインクルプリキュア」の展開がめちゃくちゃ、楽しみです。
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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