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あのころ、電話線の向こうには“未来”があった―― 「パソコン通信」がくれた出会いと記憶連載「わが青春のインターネット」(1/3 ページ)

インターネットが一般に普及するよりもっと前、「パソコン通信」の時代を経験者に聞きながら振り返ります。

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 今では“ネット”といえば、ほとんどの人がインターネットを思い浮かべるでしょう。しかし、まだインターネットが一般的でなかったころ、“ネット”といえば「パソコン通信」が主流でした。

当時出版されていたパソコン通信関連書籍(コグレさん提供

 「パソコン通信」とは、主に1980年代半ば~1990年代ごろに流行していた、いわばインターネットの前身のようなサービス。今と比べると回線速度も遅く、あくまで文字によるやりとりが中心でしたが、それでもネットを通じて別の世界・別のユーザーと「つながる」体験は新鮮で、多くのユーザーがその虜になりました。

 果たして“インターネット前夜”のネットとはどのような場所だったのか。パソコン通信を通じて「プログラミングの師匠」と出会ったという人、チャットがきっかけで遠距離恋愛に発展して結婚し、今では孫がいるという人――。当時リアルタイムで熱中していたユーザーに取材しつつ、懐かしきパソコン通信の時代を振り返りました。

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草の根BBS「デゾリスネット」のログイン画面(ごろまんさん提供/写真は当時のログを今のPCで表示したもの)

パソコン通信って、インターネットとは違うの?

 真っ黒な画面に、文字だけで構成されたメニュー画面。BBS(掲示板)を見たい時は「B」、チャットを使いたい時は「C」など、各機能にアクセスするにはキーボードでコマンドを打ち込みます。当時は時間に応じて接続料金が発生する仕組みだったため、一通り巡回したらすぐに回線を切断。あらゆるサイトが1つの網(Web)でつながっているインターネットと違い、パソコン通信の時代には個々のホストはまだ独立していて、新しいホストにアクセスする場合には、毎回回線を切ってつなぎ直す必要がありました。

 代表的なホストといえば、特に利用者が多かったのが「NIFTY-Serve」「PC-VAN」といった企業運営のもの(NIFTY-Serveは現在のニフティ、PC-VANはBIGLOBEのそれぞれ前身)。また、個人が運営する「草の根BBS」も無数にあり、全国の草の根BBSをまとめた『BBS電話帳』などを見ながら、自宅と距離が近く(接続するには電話代がかかるため)自分と趣味が合ったホストを探すのも楽しみの1つでした。

今も稼働するパソコン通信ホストの1つ「はんぞーBBS」のメニュー画面。掲示板やチャットのほか、すごろくゲームで遊んだりもできます
パソコン通信に必要なもの。解説ではMSXを使用していますが、もちろんパソコンや、さらには一部のワープロなどもパソコン通信に対応していました(コグレさん提供/「すがやみつるのすぐできるパソコン通信」11ページ)
25周年を記念し、2011年には期間限定で(体験コーナーとして)復活していた「NIFTY-Serve」(ニフティ25周年:懐かしくて泣ける? 新鮮? 「NIFTY-Serve」復活を見つめる目)より
電波新聞社から出版されていた『BBS電話帳』(20009さん提供

 今のインターネットに比べると回線速度も遅く、画面構成は驚くほどシンプル。インタフェースも決して使いやすいとはいえません。県外にあるホストについ長時間アクセスしてしまい、高額な電話代を請求された――といったことも。しかし、「パソコンと電話回線を使って誰かと通信する」という概念がまだなかった時代、「画面の向こうの誰かとつながっている」という感覚は新鮮でした。

当時雑誌に掲載されていたモデムの広告(めんそPさん提供/ネットワーカー昭和62年6~7号巻末)
回線が遅く、画像のやりとりが困難だったことから発達したアスキーアート「デゾリスネット」のログイン画面(ごろまんさん提供

チャットがきっかけで遠距離恋愛、そして結婚へ

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