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ねとらぼ編集部員の怪談「しゃんしゃろ」――怖い話とは一体なんなのか(1/3 ページ)

奇妙な夢から始まる謎の事件について聞き書きを行いました。

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 夏真っ盛りの8月。梅雨も明けて本格的に暑くなってきた今日この頃ですが、ねとらぼGirlsSideでは『ねとらぼ夏の怖い話特集』と題し、6日間にわたって背筋の冷える記事を連載します。

 最初のお話は、ねとらぼの若手編集部員が実際に体験した奇妙な体験についてのインタビューです。ある日突然見た奇妙な夢が、「しゃんしゃろ」という謎の単語によって家の秘密とリンクしていきます……。

 なお、個人情報保護のために改変している箇所、伏字がありますが、ご了承ください。

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巨大な老婆の夢

 ことの発端は今から12年ぐらい前なんですけど、Aさん(仮名)っていう親戚がちょっと遠いところで暮らしてたんですね。そのAさんがたまたま失業して、行くところがなくてうちに居候していた時期が半年ぐらいあったんですよ。

 それからAさんは仕事が見つかって、この家を出たんだけど、まあ生活能力の低い人で、ラーメンとか牛丼とかばっかり食べてる人だったんですよ。それじゃあかわいそうだということで、しばらくうちからクール宅急便でおかずとか炊いたごはんとかを送ってたんですね。

 で、そういうことが半年続いたんだけど、あるとき夜寝てたら急に自分が巨大な洞穴みたいなところにいたんですよ。かがり火がぶわーーっと焚いてあって。

 奥にめちゃくちゃでかい何かがあるんだけど、(それが何かは)わかんないのよ。で見た瞬間「やばい」「ここどこだ」って思って、外に出たいとは思ったんだけど、それより奥に何があるのか気になるほうが勝っちゃって、行っちゃったの。

 で、とりあえず入ったんですよ。そしたらこんなでっかいおばあちゃんが正座してたの。奥に。

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本人が描いてくれた図です

 座ってて、着物着てるんですよ。私は普通にジーパンとポロシャツ。「ええ~、誰?」と思って。見たことないし、なんか険しい顔してたの。あと、ここ(おばあさんの足元)に何かいたのよ。動物が2匹。最初そこで目が覚めたの。

 で、翌朝起きたら、足がすりむいたみたいに、ひっかき傷みたいな傷が脛から膝にかけてできてて。なんでだろう、やばい夢を見てかきむしったんだろうな、と思って、最初はそれで納得しようとしたら、次の日また同じ夢が出てきて、そのときはもうこの状態(洞窟のおばあさんの前にいる状態)からスタートしてたの。完全に昨日の続きなの。

 それで、その(おばあさんの足元にいた)動物がね、しっぽがすごく太かったんですよ。狐だと思った。しっぽが極太だったから。もう意味わからんと思って、私この人(洞窟のおばあさん)に話しかけたの。「誰ですか?」って。

 そしたらね、「座れ!」って言われて正座させられて。正座したんですよ。そしたらね、何か言ってんだけど、すっごいなまっててほぼわからないの。

 で、唯一「しゃんしゃろ(※)」っていうキーワードを聞き取ったんですよ。しゃんしゃろがどうとかってずっと言ってる。

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※プライバシー保護のため架空の単語に置き換えています。

 「しゃんしゃろとは!?」って思って、私はそこで逆ギレして、「なんでこんな目に合わないといけないんですか? 誰ですか?」ってキレ倒したの。それで翌朝起きたら、ひざがもう(あざで)真っ青。両足。

 さすがに親に「やばい」って話をしたの。そしたら「君はものすごく寝相が悪くて、寝てる間に玄関まで行って寝たり、また勝手に戻ってきて寝たりしているから、どこかでぶつけたのでは?」って言われたので、「そういうことなのかな」って思って納得したんですよ。

 そしたらね、また3夜連続なんですよ。今度はね、箱に入れられてんだな、私が。めちゃくちゃ揺れてて、あ、これ殺されるんじゃないかと思って。夢かどうかわかんなかった。周りは真っ暗でなんも見えない。で、ぐらぐら揺れてんのよ。揺れてて、それですっごく寒いの。

 そのあと「どん!」っていきなり箱が落ちて、上のガムテープがばりばりばりばりって開いて、ぱかって開いたら、Aさんがいたのよ。

 で、「え、Aさん?」と思ったら、私の身体の横からさ、狐が100匹ぐらいぶわーーー! って出てくるんですよ、箱の中から。

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 Aさんは全然私にも狐にも気づいてなくて、どうやらこれはうちが送ってる宅急便の荷物(の中にいるん)だって気づいたんです。だから寒いんだと思って。

 とりあえず出たら、Aさんが冷凍のご飯とかをチンして食べてるのよね。よく見ると横から(Aさんが)食べてるものを狐が食ってて、Aさんは何も食べてないの。エアーなんですよ。狐が全部ごはんとか食べちゃってるんですよ。そこでAさんに何かあるんじゃないかと思ったの。

 で、私はそのときAさんがどういう家に住んでるのか全く知らなかったんだけど、あまりに気持ち悪いからAさんに電話して、「今住んでる家ってこういう間取り?」って聞いたら、「あ、何不動産情報か何かで見たの?」って言われて。見た光景とほとんど一致してたの。

 で、「気持ち悪いこと言うけどさ~」って断って、夢の内容を説明して。「疲れてるんじゃない?」って言ったの。で、(Aさんも)うーんそうだと思うけどねーって言って電話切ったら、その日の夜、Aさん階段から落ちて足骨折。右足折って左足ねんざして、歩けなかったの。で、(Aさんが)入院しちゃったもんだから、どうしようかって言ってたら、Aさんのお父さんが亡くなったんです。

時系列

 それで、うちの家族も機転を利かせて、もうしょうがないから病院から××まで(Aさんを)車で連れていくかってなって。葬式は待てないじゃん。

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 その時初めてAさんのルーツを聞いたんだけど、××出身(プライバシー保護のため伏字にさせていただきます)なんですよ。で××って方言でしゃんしゃろっていうらしい。(夢の中で)しゃんしゃろ、しゃんしゃろってずっと言われてたのは、××に帰れって多分言いに来てたんだと思う。

 それでAさんのお父さんの家に初めて着いたんだけど、着いた瞬間めちゃくちゃ気持ち悪くて、吐き気がして。ずっと地面が地震で揺れてるような感じなんですよ。「気持ち悪!」って思ったけど、お父さんの遺品の関係とかをちゃんとやっとかないと困るって言われて、家入ったんですよ。

 それがすごい変な家で、家入ってからだいぶ土間。小上がりがあってそこから畳で、お父さんは大工さんだったから大工さんの作業スペースとかいろいろあんだけど、その土間が、もうどうもおかしいんですよ。

 今考えたらおかしいんだけど、鍵開けて入ったら女の人がいたのよ。普通に。土間で野菜か何かを洗ってて、でももうこっちも移動が多くて疲れてるし、女の人いる、ってだけ思って。

 で、葬式で使う写真だなんだって作業してたんだけど、気持ち悪すぎて(その場に)いられなくて。申し訳ないんだけどめちゃくちゃ具合悪いから私車で待ってるわ、って言って私がまず車に戻ったのよ。

 したら5分もしないうちにうちの親も帰ってきて、「めっちゃ気分悪いよね」「アスベストとかそういうやつなのかな?」って話してたんですね。で、Aさんは1時間ぐらいで帰ってきたんですよ。私が帰ってきたAさんに、「さっきの女の人誰?」って言ったら、「え? 誰もいないよ」と言われて。「え? いたでしょ? 白い服着ててさあ……」って言ったら「あ、お袋だ」って言われました。

 で、聞いたら、のちのち発覚するんだけど、あの人(最初に出てきた巨大なおばあちゃん)、結局Aさんのおばあちゃん。Aさんのお父さんのお母さんで、その人がめちゃくちゃ嫁いびりしてたらしくて、(Aさんの)お母さん蒸発してるんですよね。その当時は存命だったんですけど、ずっと怒られてて、「野菜の洗い方が悪い」って言われ続けたせいで、ずっとあの家で野菜を洗わなきゃいけない気がしてたって言ってて。

 というか、生霊みたいなものかもしれないんですけど、気持ち悪いから「あ、そうなんだ」って言って……雰囲気的にもさ、人死んでんのにお化けがどうとか、言えないじゃないですか。

 Aさんの家ってぽつーんって一軒だけあるんですよ。周り、家がないの。集落はあるのにその家だけ(離れて建っている)。それでよーーく見たら、普通ここ(家が建っている場所の真ん中)って地面じゃない? じゃなくて、ここに水路が通ってるんですよ。家のど真ん中に水があるの。

 下、水なんすよ。川なの。これがなんか農業用水らしくて、こっち(家の下にあった用水路の上流)が畑で、こっち(用水路)に捨てるんですよね。泥とかを。で、その泥の上に立ってんの、この家。

 で、風水とかでは、水の上に家建てちゃいけないとか、井戸の上にもの建てちゃいけないっていうのに、大工のお父さんがそこに建ててるんですよね。

 おかしいんですよ、明らかに。

 それからお寺に(Aさんの)お父さんの遺体があるのでそっちへ行ったんだけど、車走り出してすぐ、「ちょっと待って」って言って。偶然看板が目に入って、「なんかあそこの神社にすごい行きたい」って思って。

 私全く神を信じてないんですよ。神様お願いしますとか言える権利ないんだけど。で、賽銭を投げたことのない人間が急に神社に行きたいって言いだしたわけだよ。そしたらその車に乗ってた全員が「あ、神社行っといたほうがいいね」って。うち全然信心深くないんだけどね。

 寺がこっち(左)、神社がこっち(右)の分かれ道で、「じゃあ神社に行きましょう」って言って(右に)行ったの。そしたら駐車場のところに、なんか、立ってて。宮司さんが。仁王立ちで。で、私が車降りた瞬間に「やっと来ましたね」って言われて。

 で、やばいからとりあえず行きましょう、って(宮司に)言われて、私と両手松葉づえのAさんが降りて。

 母が駐車場に車止めてたんですよ。そしたら母がめちゃくちゃすごい形相で上がってきて、「やばい」って言うので、「どうしたの?」って聞いたら、私たちが入った後からめちゃくちゃ旧式のセダンが来たんだって。信じられないくらいカクカクの、めっちゃ古いセダン。で、(うちの車の)真横にぴっとつけたんだって。それが、見たら誰も乗ってないんだって。

 「セダン、今も止まってんだけど!」って言ったら「追いかけてきましたね」って宮司さんに言われて。「早くやりましょう」って言うから、「ちょっと待ってください。私は本当に全く神は信じていなくて、お布施などをいっさいできないので大丈夫です」って言ったら、「お金はいらないからとりあえず座ってください」って言われたんですよ。

 それで(神社の建物の扉を)開けたら、もう儀式の準備が整ってるのね。火もついてるし祭壇もあって、なんか宮司さんもすごい帽子かぶってて。

 「何も言わなくていいから正座しててください」って言われたから私とAさんが座ったんですよ。そしたら祝詞みたいなの言いだしたのね。一応こうやって(手を合わせて)くださいって言われてたから、そうしてたんです。

 そうしたらある節に来た瞬間に、後ろから思いっきり蹴り飛ばされたぐらい私が前に飛んで。1メートル半ぐらい飛んだのよ、体が。で、見たら、私のほうの火だけめちゃくちゃ燃えてるんですよ、びびるぐらい。「やばい」と思って。Aさんはなんともないの。

 それが終わって、「これで祓えましたから」って言われて。私が車乗った瞬間に、宮司が私に手招きするんですよ。それで私だけ呼ばれて行ったら、「またあの人来ますからね」って言われて。

 今のところは来てないけど、またいつか来るのかな、と思ってます。

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