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「善悪はグラデーションで描く」 スター☆トゥインクルプリキュアが切り開く“新しいプリキュア観”サラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)

スター☆トゥインクルプリキュア、新しいエンディングが最高にカッコイイのでおすすめですよ。

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本作を象徴する異星人プリキュア、キュアミルキー

 ごめんなさい。先に謝っておきます。

 正直、自分は「スター☆トゥインクルプリキュア」がここまで「ものすごい」作品になるとは思っていませんでした。

 2018年がプリキュア15周年ということもあり大盛況で終えた反動で、2019年は「無難な作品」になるのだろうな、なんて思っていた自分を今は恥じています。「スター☆トゥインクルプリキュア」。このアニメ、本当にすごいのですよ。

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 「プリキュアの伝統」を踏襲しながらも、そこからさらに1歩踏み込んだ「現代的な価値観」をポップな作風に込めて子どもたちに分かりやすく伝えていくスタイルがお見事なのです。放送開始から半年を経て分かった、「スター☆トゥインクルプリキュア」は何がすごいのか? 何が新しいのか? をちょっと見ていきたいと思います。


キュアスター(左)とキュアミルキー(右)

kasumi プロフィール

プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。

 2019年2月に始まった「スター☆トゥインクルプリキュア」も折り返し地点。もう半分が終わりました。早いですよね。つい先日、キュアミルキーに出会ったばかりのような気がしています。

 プリキュアシリーズが開始から15年で培った「笑顔を守る」「諦めない心」「人はみんな違う」といった、いわばトラディショナルなプリキュア観にプラスして、「多様性が当たり前にある世界」や「イマジネーションの力は無限大」「決めつけることをしない」といった「スター☆トゥインクルプリキュア」の特徴的な表現をちりばめ、ますますガッチリ子ども(と僕たちのような大人)の心をつかんでいます。

 その中でも2点、自分がすごいと感じたのは「1人でいることを否定しない」ことと「善と悪をグラデーションで描く」ことです。

1人でいることを否定しない

 プリキュアというアニメーションではこの16年間、とにかく「仲間を大事」にしてきました。1人では強大な敵に立ち向かえなくても、仲間がいれば立ち向かえる。友達がいるから頑張れる。かつて敵だったキャラクターがプリキュアになる際でも「友達になろう」とずっと訴えてきました。

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プリキュアシリーズ恒例のパジャマ回ではそれぞれの家庭環境が語られました

 しかし、令和時代のプリキュア「スター☆トゥインクルプリキュア」は違います。それをさらに推し進め、仲間がいれば世界は広がるけど、「1人でいることも否定しない」のです。

 新しくプリキュアとなった「キュアコスモ」は、今のところ他の4人のプリキュアとなれ合うことはなく、惑星レインボーを救うという自分の目的のためだけに行動しています。独自行動をとることも多く、また他の4人のプリキュアたちもそれを決して否定しません。個々の事情を尊重し「みんなが同じ考え」になるのではなく、皆が違った考えを持ちながらお互いを思い合いプリキュアとして活動しているのです。


単独行動も多かったキュアコスモ

 もちろんキュアコスモだけではなく、他の4人のプリキュアたちもそれぞれの家庭の事情や出生が異なりながらも、決して同一の思想になろうとはせずお互いの事情を考慮しながら行動しています。

 そこには「みんなが同じ思い」ではなく「自分は自分」をベースとした「個々の尊重」があるのです。

 プリキュアが15年かけて描いてきた「友達は大事」「仲間と一緒に」は確かに素晴らしい考えです。子ども向けアニメーションが伝えるメッセージとしては最上級に位置するものだと思います。

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 ただ自分は「仲間がいればどんな困難にも立ち向かえる」を描いていくことはすなわち、「一人では未来に進めない」につながっていかないか? という疑問をずっと持ち続けていました。

 コミュニケーションが苦手だったり、家庭環境などさまざまな事情で「お友達を作ることが出来ない子どもたち」をプリキュアはいかに救っていくのか?

 1人での努力を否定しない「キュアコスモ」の存在ひいては「スター☆トゥインクルプリキュア」はそういった子どもたちをも救える可能性があるのではないのか、と思うのです。


第16話まどか弓道回でもライバル少女の「1人の努力」を否定しませんでした

友達と一緒にいる意味


友達は大事を描きつつ、1人でいることも否定しない

 もちろん「1人でいる」ことは決して「友達」を否定するものでもありません。星名ひかる(キュアスター)は言います。「1人でいるのも楽しいけど、皆とこうしているのもすっごく楽しいんだって」。

 「1人でいることのみが正しい」とも「友達を作ることのみが正しい」とも強制するのではなく「両方とも楽しいよ」と子どもたちに訴えかけているのです。

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 また、「友達と一緒にいる」というのを「同じ価値観で集まり、それ以外の価値観を認めない」という内に向けた世界ではなく、「友達は、違う価値観を持つ者同士が集まり、お互いの世界を広げていく」という外に向けた世界として描いていることも良い点だと思います。

 この「個々を尊重しながらも、友達としてつながる」という概念を「スター☆トゥインクルプリキュア」の前半では常に描いてきました。

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