電子戦や宇宙も視野に 令和初となった「総火演」写真100枚と映像で振り返る 「島の防衛」想定した作戦シナリオを展開(1/3 ページ)
令和初となった「富士総合火力演習」を写真と映像で振り返ります。
2019年8月25日、日本一の山「富士山」の麓にある東富士演習場(静岡県御殿場市、小山町、裾野市にまたがる一帯)で、陸上自衛隊による最大級の実弾演習「令和元年度富士総合火力演習」が開催されました。
今回の総火演は新元号「令和」に移ってから初の実施ということもあってか、事前に行われた観覧チケットの抽選には約14万通の応募があったそうです。倍率はなんと約27倍! 当日の会場には、狭き門をくぐり抜けて、プラチナチケットを手に入れた人が集まり、戦車などの砲弾が発砲される轟音や衝撃波にどよめきをあげ、迫力満点の実弾演習を観覧していました。
2019年の演習には、隊員約2400人が参加。戦車などの戦闘車輌およそ80両、火砲約60門、航空機約20機が使用され、それぞれの装備や機能などを紹介する「前段演習」と、仮想シナリオに基づいた模擬戦闘を披露する「後段演習」の2部構成で進められました。
前段演習では、榴弾砲や迫撃砲などの火砲から、ヘリコプターや装甲車、戦車などの装備の役割や性能を紹介。実弾演習ということで、本物の銃弾や砲弾を使ったデモンストレーションを披露しました。
2019年に制式採用したばかりの「19式装輪自走155ミリりゅう弾砲」も初公開。配備数が多く、運用するには隊員8人も必要だった牽引式りゅう弾砲「155ミリ榴弾砲FH70」に対して、19式はより少ない人員で運用できる点や大型トラックの免許で運転できるなどのメリットがあります。
いわゆる自走式のりゅう弾砲としては、「99式自走155ミリりゅう弾砲」もあります。自動装填式でデータリンクに接続して正確な照準ができるなど高性能ですが、それゆえに高いコストがネック。しかも履帯(無限軌道)なので運搬にはトレーラーが必要でした。少ない人員で、高い機動性を持って運用できる19式装輪自走155ミリりゅう弾砲には、有事の際に効率的な活躍が期待されています。
続いて披露された後段演習は「島しょ部における統合作戦」をテーマに進行。島しょ部とは大小さまざまな島が点在する地域という意味で、離島に侵攻して占領を目論む敵にどう対処するかという内容でした。第1段階は島しょ部に配備した部隊で迎撃して侵攻を食い止め、第2段階では水陸機動団などの増援部隊による情報収拾や車輌、人員の展開を進めます。
そして第3段階では、特定した敵陣地に戦車やヘリコプター、迫撃砲などで攻撃を加え、敵部隊を撃退するという、国土防衛を想定したシナリオで模擬戦闘が行われました。
例年にはみられない特徴としては、陸海空自衛隊の統合運用による連携場面の強化や、陸海空に加えて、宇宙、サイバー、電磁波などの多領域を横断する様子が見られました。
電子戦や電磁波攻撃への対処などは目に見えないので、状況をスクリーンに映して解説したほか、護衛艦による艦砲射撃や中距離ミサイルなど射程の長い装備を使用するシーンでもスクリーンと模擬射撃で代替するなど、広大な東富士演習場でも収まりきらないほどのスケールで展開されました。
また、戦車や装甲車などの動きにも変化が見られました。これまでも総火演では、戦闘車輌が走行しながら射撃する「行進間射撃」は行われてきましたが、今回は複数の車両が連携して援護する、攻撃を交互に行う、援護射撃の中を陣地転換のために移動するなど、より実践的な内容で披露されました。
それぞれの動きがとても複雑で、発砲のタイミングなど決定的瞬間を取り逃がしてしまいそうになる場面もありました。
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