発表から3年、ついにリリースされた「ラブライブ!」アプリ最新作はファンの期待に応えられたか?:モバクソ畑でつかまえて
ハードルの高さは「熱心なファン」をターゲットにしたからこそ?【※大幅な機能改善が発表されたので追記】
モバクソゲーサークル「それいゆ」発起人であり、ちょっと変わったゲーム(遠回しな表現)に詳しい「怪しい隣人」(@BlackHandMaiden)さんによる不定期コラム(連載一覧)。今回は「ラブライブ!」ファンが長らく待った、「ラブライブ!」シリーズの最新作「スクールアイドルフェスティバル ALL STARS(通称スクスタ)」を遊んでレポートしてもらいました。
思えば最初にタイトルが発表されたのは2016年11月のこと。約3年もの期間をかけてついにリリースされた「スクスタ」は、シリーズ初期からのファンである怪しい隣人さんの目にはどう写ったのでしょうか。
ライター:怪しい隣人
出来の良くないソーシャルゲームを勝手に「モバクソゲー」と名付けて収集、記録、紹介しています。モバクソ死亡リストは500件を超えました。年々ソーシャルゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。本業はインフラエンジニア。そのためソーシャルゲームの臨時メンテは祭り半分胃痛半分な気分です。
音ゲー部分は難易度低め、ただししっかりとした育成が必要
9月末から10月にかけて多くのアプリがリリースされました。マリオカート、東方、トロとどれもこれも有名な作品のアプリ化ばかり。そんな中リリースされた「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル ALL STARS(以下、スクスタ)」。プレ発表が2016年11月だったことを考えると、約3年弱待たされたことになります。それだけの期間を経てリリースされたスクスタですが、良くも悪くもヘビー級のゲームでした。
ゲーム部分ですが、音ゲーパートのプレイ難易度は低め。タップ、フリック、同時押し、押しっぱなしという音ゲーのお約束の操作系に加え、画面のどこをタッチしてもいいという作り。手の大きさやスマホのサイズに依存しない状態でプレイできるのは好印象です。
ですが、その音ゲー部分は独立して存在するだけではなく、ストーリーの合間に挟まっています。ストーリーを読んで音ゲーを繰り返すことになるので「続きはこのモンスターたちを倒してからだな!」みたいな気分になります。このゲームのジャンルが「リズムアクションRPG」であることを納得させられました。
この音ゲー部分の難易度は当然だんだん上昇するため、キャラクターの育成が必要になってきます。これは他の音ゲーでも当然ある要素なのですが、育成には特殊な素材が複数必要となります。
素材は音ゲーをクリアしても入手は可能です。ですが、それよりは1日3回実行が可能な「合宿」で集めたほうが遥かに効率的。キャラクターのレベルもプレイしていれば勝手に上がるというわけではなく、レベル上げ用のアイテムとゲーム内マネーを消費する必要があります。どこかの種火集めをほうふつとさせる作りですが、曜日によって取れるアイテムが違う、ということがないのだけは大変親切です。こういうとき苦痛の中にちょっと楽な部分があると「あっ優しい」と思ってしまうのはあまり良くない習慣ですね。
これらの素材を使ってキャラクターの能力値を上げ、キャラクターごとのストーリー解放、イラストの変更、3Dで踊る衣装の入手と段階的に進めていくことになります。成長システムのビジュアルが横長のツリー構造。複数画面に渡っているツリーを見るだけで「長!」となってやる気が減衰します。こういうものは「レベルが上がるたびに次の目標を表示する」という形式のほうが良いのではないでしょうか……。
このあたりの育成のハードルの高さには不満の声も多かったのか、10月2日の時点で運営から育成難易度の緩和についてアナウンスがありました。ここで「育成のハードルを下げる」と早急に判断した運営側の英断を高く評価したいと思います。
初期からのファンでも満足できるストーリー
これらもろもろのヘビーな部分を乗り越えて見られるストーリーですが、全体を通したメインストーリーと、キャラクターごとのカードに付随する固有ストーリーが存在しています。
メインストーリーは過去の「ラブライブ!」シリーズに出てきた2つの学校、2つのスクールアイドルグループが併存しているパラレルワールドのような世界。プレイヤーは虹ヶ咲学園という新たな学園でスクールアイドルの良さに目覚め、周りの人間をかき集めて新たなスクールアイドルグループを立ち上げます。過去の「ラブライブ!」シリーズではこういう話を引っ張る役どころは主人公だったのですが、それを裏方的なプレイヤーキャラクターがやっているというのは興味深いところ。元ネタありきのソーシャルゲームでは主人公の存在が薄くなりがちなのですが、それに逆行するような作りは興味深いところです。こちらは3Dのキャラクターではなく2Dのキャラクターで主に描かれるのですが、表現がいろいろと凝っていて楽しいです。
カードの方のストーリーは、カード育成や絆レベルを上げることによって開放されます。
実は筆者、実はCD2枚目がリリースされた辺りから「ラブライブ!」を追いかけているのですが、「サンシャイン!!」になってからはアニメを見た程度でほとんど触れていません。そんなわけで、思い入れはどうしてもμ'sの方に偏ってしまいます。最初に選んだSRは自動的に覚醒されるのですが、最初のキャラは西木野真姫を選んでいました。
このキャラクター、同じμ'sのメンバーである矢澤にこと妙に絡みが多く、その辺りの元ネタがアニメになる前の1stシングルのPVで「同じ部屋にいた」という薄いつながりに始まり、4thシングルのPVで「他のキャラは視聴者にチョコレートを差し出してくるのに真姫だけはにこにチョコを差し出している」とかアニメ前からいろいろと公式から妄想材料が提供されていた組み合わせであります。気がついたらアニメでもちょいちょい話題になり、同人誌がたくさん店頭に並んだりするようになったのは昔から見ていた人間としては大変感慨深いものでした。
……話が大きくそれました。とまあ、こんな人間が見ても満足できるストーリーをゲームの最初から見せていただいたことは感謝しております。
「熱心なファン」をターゲットにしたからこそ?
ここまで「ファンとしてコンテンツを楽しむために高いハードルを超えていかないといけない」という話をしてきました。これも一種「人気の高いコンテンツをゲームにしたゆえ」なのかなと考えてしまいます。
「ラブライブ!」は今年(2019年)で9周年。「ラブライブ!サンシャイン!!」の2期が終了したのが2017年12月なので、2年近く間が空いています。さらに言えば、無印「ラブライブ!」の方は2016年の4月に最後のワンマンライブを行って以来、大きな活動はありません。この状態で、「スクフェス(ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル)」を中心に「ラブライブ!」というコンテンツを支えてきたファンが待っていたのがこのゲームでもあり、提供側としても「多少難易度が高くても熱心なファンなら支えてくれる」あるいは「熱心なファンは多少ハードルを上げておかないとあっという間にコンテンツを消費し尽くしてしまう」という思いがあったのではないでしょうか?
他の音楽ゲームだと「イベント報酬をもらうぐらいならカジュアルにプレイしていれば問題なく、他人と競争したいひとは必死になる」という感じでした。これは「コンテンツを普及する役目がゲームに与えられているから」だと思います。しかし、「スクスタ」に求められているのは「既存ファン層へのサービス」であり「新しい層の開拓」は求められていないのでしょうか。最近ほぼ同時にリリースされた「既存のファンへの強いアピールがあるのにゲームの難易度は低め」という別の音ゲーを見て、余計にそう考えるようになりました。今後の改善で、この辺りのハードルの高さがどれくらいに下がるのか、それについてファンはどのように考えるのか、注目していきたいと思います。
10月12日追記
10月11日、「スクスタ」ゲーム内および公式サイトにて、「機能改善についてご報告」という告知が公開されました。当記事でも触れている育成難易度緩和について、具体的な例が記載されています。素材集めの合宿回数を倍にしたことに加え、育成に必要な素材が大幅に減少。これでキャラ育成はだいぶ楽になるのではないでしょうか。また、最初に解放されるのが衣装となることで、舞台衣装のスクールアイドルたちを今より気軽に鑑賞できるようになります。正直ここまで色々手を入れてくるとは思いませんでした。
ただ、今回の告知では育成には大胆に手を入れているものの、音ゲー部分の難易度についてはプレイ回数と体力消費量の調整に留まるのみ。ここももっと思い切って、ストーリーモードだけは難易度を大幅に下げても良いと思います。上級中級などの通常プレイ難易度まで下げろとは申しませんので、話を読みたいだけのカジュアルユーザーにも優しい作りになってくれると理想的です。後から手直ししていくのは大変でしょうが、まだユーザーは「未完成のコンテンツがお出しされた」とは思っていないはず。早いうちにどんどん改善してほしいものです。
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