レビュー

「4分間のマリーゴールド」前髪で大きく変わった菜々緒の印象 美男美女ばかりのホームドラマにやがて訪れる悲劇(1/2 ページ)

横浜流星のお辞儀が美しかった。

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 福士蒼汰主演の金曜ドラマ「4分間のマリーゴールド」(TBS系金曜よる10時~)がスタートした(原作レビュー)。すでに2話まで放送されている。福士蒼汰が静かに立っているドラマだけど「Heaven?」じゃないよ(諦観)、今回の役どころは救急救命士。

4分間のマリーゴールド 福士蒼汰と菜々緒の禁断の恋 イラスト/まつもとりえこ

 救急救命士の花巻みこと(福士蒼汰)には、手を重ねるとその人の「死の運命」が見えるという特殊な能力があった。そんな彼が、同居する義理の姉・沙羅(菜々緒)と禁断の恋に落ちる。しかし、みことだけは知っていた。沙羅の余命があと1年だということを――。

 「救急救命士」「特殊な能力」「義姉との禁断の恋」「余命1年」という「詰め込みすぎじゃね?」という設定を、意外なほど余白&余韻たっぷりに描いてわずか3巻で完結させた原作をどのようにドラマ化するのか? 注目していたところ、「なるほど!」というドラマオリジナルの展開が待っていた。それが「ホームドラマ化」である。鍵はみことと沙羅の弟・横浜流星にあった。

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意外と大丈夫だった菜々緒

 1話は、ほぼ原作どおりの展開で、みことの救急救命士としての仕事と「死の運命」が見える特殊能力が描かれていた。みことは手を重ねた相手の臨終の様子を知ることができるが、その運命を変えることはできない。なんとか患者を助けたいと思って必死に努力をするが、そもそも救急救命士にできることは限られている。

 彼はなぜそんなに焦っているのか。それは、彼が同居する義理の姉、沙羅の「死の運命」を偶然知ってしまったからだ。自分が運命を変えなければ、愛する沙羅の命は助からない。どうやって沙羅の運命を変えるのか、あるいは死を受け入れるのかが、物語の大きな縦軸になる。

 で、薄幸のヒロイン役を演じる菜々緒である。原作の沙羅は、飾り気がなく、絵を愛し、屈託なく大きな口で笑い、すぐに誰かに感情移入して泣く。ひとことで言えば、ナチュラルビューティ。これまでサイコパスな悪女やハイキックで男をなぎ倒す役柄が多かった菜々緒に務まるのか? と心配していたのだが、これが意外と大丈夫だった。ちゃんと「素朴できれいなお姉さん」になっていたのだ。

 色白で、手足が長く、細い首がまた長い。これまで必ず見せていた額を隠し、前髪を作っているのも印象を大きく変えた一因だろう。声はいつも通り低かったが、2話では少しトーンを上げていた。徐々に役柄にフィットしていくと思う。

 作中、沙羅とみことの距離は非常に近い。悩んで落ち込んでいるみことに、密着するように慰める場面もあった。一部の視聴者からは「義理とはいえ姉弟なのに」という批判もあったようだが、これは沙羅とみことが完全に相思相愛だからである。そのあたりは徐々にわかってくるはずなので、腹を立てるのは少々待ってほしい。

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4分間のマリーゴールド ひとめでわかる人物相関図 イラスト/まつもとりえこ

幸せそうな家族ほど悲劇が際立つ

 「血はつながらなくても、俺たちは家族」

 花巻家は、みこと、沙羅、警備員として働く熱血漢の長兄・廉(桐谷健太)、高校生で食事を担当するクールな末弟・藍(横浜流星)の4人暮らし。あ、忘れちゃいけないのが犬のシロ(ちゃんとメインビジュアルにも登場している)。きょうだいの中では、みことだけ血がつながっていないが、みことが1話のモノローグで語っていたように彼らは「家族」だ。

 それにしても美男美女ぞろいの一家だこと……。何気に戦闘力も高そうだ。なんなら、この4人が殺人ブラザーズとして活躍するアクションドラマが見てみたい(横浜は無口な殺人マシーン役)。

 冗談はさておき、2話でフィーチャーされたのが末弟の藍だった。藍は日村和江(松金よね子)という老女と交流があった。藍が高校に馴染めず、周囲から暴力をふるわれていたとき、惣菜を振る舞う彼女とのやりとりで救われていたのだ。

 いつもはクールな藍も「和江ちゃん」と呼んでなついていたが、ある日、和江が急性硬膜外血腫で倒れてしまう。みことは弟を救ってくれた和江をなんとか助けようとするも、和江はそのまま亡くなる。彼はまたしても運命を変えられなかった

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 藍は専門医でも判断できなかった急性硬膜外血腫だと、とっさに診断を下したみことを疑う。最初はごまかしていたみことだが、藍に真実を告げる。自分は「死の運命」が見えるのだ、と。

 「それ、もし本当なら、ありがとう。和江ちゃんのために、ありがとう」

 横浜流星のまっすぐなお辞儀が美しい。かなりとんでもない秘密を告白されたと思うのだが、藍はあっさり受け入れる。帰宅後、藍は和江に教わったさば味噌を作り、家族4人で和やかに食卓を囲む。

 食事シーンが多いのは、このドラマが「ホームドラマ」に舵を切ったからだ。かつてホームドラマは「めし食いドラマ」とも呼ばれていた。2話で藍に焦点をあてて彼の優しい人間性をクローズアップしたのも、ホームドラマの側面を強調するためだろう(彼が一家の食事を担っているという設定も役に立っている)。端々には、家長としてきょうだいを守ろうとする廉の描写も織り込まれていた。 脚本の櫻井剛と演出の河野圭太は、血のつながらないものが集まったホームドラマ「マルモのおきて」をヒットさせたコンビ

横浜流星と菜々緒、美しかった イラスト/まつもとりえこ
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