“賛否両論”というかほぼ“否” バチェラー・ジャパンシーズン3、なぜファンは悲鳴を上げたのか(1/2 ページ)
俺たちは「バチェラー」に夢を見ていた……。
この週末、何回「バチェラー見た!?」という会話を交わしたことだろう。10月24日、25日と2晩続けて深夜に配信された「バチェラー・ジャパン」シーズン3最終エピソードは、賛否両論……というか正確にはほぼ“否”の反応を呼んだ。
「バチェラー・ジャパン」(以下「バチェラー」)は、アマゾンジャパン制作、独占配信の恋愛リアリティーショーだ。“バチェラー”と呼ばれるハイスペックの独身男性のもとに、結婚を意識する20人の女性が集まる。バチェラーと女性たちはデートを重ね、回ごとに何人かが脱落する。最後に残った女性に“真実の愛”を渡す――というのが基本骨子。2017年にシーズン1、2018年にシーズン2が配信、そして2019年9月13日からシーズン3の配信が始まった。
シーズン3のバチェラーは友永真也。神戸生まれ、父と兄は医者、フランスに長期の留学経験があり、現在は実業家。フランスの時計の輸入代行などを行う会社「エターナルフレンズ」を営んでいる。車と動物が好き。シーズン1とも2ともまた違うバチェラーがやってきたと、当初は期待半分、“お手並み拝見”的視点半分だった。
今思えばあのころは幸せだった……。ここからはシーズン3のラストの展開のネタバレになる(まだネタバレを踏んでいない人は注意)。
ハイスぺ男性VS.20人の女性……の、はずだった (C)2019 Warner Bros. International Television Production Limited. All rights reserved.
「バチェラー」の根幹を揺るがすラスト
「バチェラー」では、毎話バチェラーが女性にローズを渡す。このバラを受け取ったものは次のステージ(エピソード)に進み、渡されなかったもの、拒んだものは退場する。……というのが番組の基本ルール。渡せるバラは回を重ねるごとに減って行き、最後は1本だけになる。20人の中からたったひとりを選び抜く選択のゲームだ。
しかしデートを重ねていく中で、バチェラーは視聴者の目から見てもあからさまなほど、女性の中のひとり・岩間恵に恋に落ちてしまった。そもそも初対面からずっと好印象だった岩間に対し、中盤から完全にマジ惚れモードに突入した。
岩間、水田あゆみ、野原遥ら3人を残したエピソード10の友永家実家訪問回。父母兄にそれぞれ3人を引き合わせ、「正直、誰が俺に(結婚相手として)合ってると思う?」と家族に質問したバチェラーは、全員が「水田」と答えたことに「人を比較するってどうかと思う」と憤慨。「俺は恵がいいのに!」とカメラの前で不満を漏らしていた。
家族も視聴者も「いや、お前が聞いたんだろうが!」と突っ込んだ瞬間だ。本来、「複数人の中から誰を選ぶか」という選択のゲームだったはずが、もはや彼の中では「岩間をどう選ぶか」というゲームに変わってしまっていた。
あまりにも順当に岩間エンドでまとまりそうなところに、番狂わせが起こる。ついに岩間と水田の残り2人となった最終話(エピソード11)で、岩間がバチェラーに対し「恋愛的な意味で好きかわからない」と打ち明けるのだ。最終話にして振られた形になったバチェラーは、悩みぬいた末、水田にラストローズを渡す。恋する相手ではなく、愛してくれる相手。恋ではなく愛をバチェラーは選んだ――よかったよかったシーズン3完!
とは終わらなかった。エピソード11のラスト、不穏な予告が流れる。11月1日配信予定だった「特別編その2」(エピソード12)の公開が急きょ10月25日に早まる。そして明くる25日に配信されたエピソードで、バチェラーは衝撃の告白をする。ラストローズを渡した水田と1カ月で別れ、さらに「今、岩間さんとお付き合いしている」というのだ。
えっ?
なぜファンは衝撃を受けたのか
ラストローズを渡したあとも、バチェラーは岩間のことを忘れられなかった。水田と付き合って1カ月、バチェラーは「ケジメをつけるために」岩間に連絡を取り、結局やはり岩間のことが好きだと確認し、猛アタックを開始。渋っていた岩間も折れ、今では「放送中は考えすぎてしまってわからなかったけど、真也さんを愛している」のだという。
このファイナルエピソードが公開されて、SNSは荒れに荒れた。Twitterのトレンドには「水田さん」が瞬時に入った。友永と岩間のInstagramアカウントには批判コメントが殺到し、水田には励ましのコメントが押し寄せた。
なぜ視聴者はこれほどまでに衝撃を受けたのか。撮影後すぐに別れたこと自体はそこまで大きな問題ではない。残念ながら、これまでのシリーズで結ばれたカップルは、いずれも配信終了後間もなく破局を発表している。それから、好きだった相手に未練を残すことや、愛ではなく恋を追いかけたくなることがあるのは、人間の気持ちとして当たり前だろう。
ただバチェラー友永の行動は、「バチェラー」の根幹を覆すものだった。1本1本のバラが重く感じるのは、そこに「引き返せない」選択があるからだった。ラストローズの相手は、それ以外の19人との可能性を全て断った上で選ぶ相手だった。少なくともこれまでは。
でも撮影後に、「やっぱり違う人がいい!」とLINEしてやり直せるのであれば、もうなんでもありじゃないか。最初期に落とした女性とくっつきなおすことだってできてしまうかもしれない。いつの間にか抱いていた番組への信用が、完全に茶番になってしまった。
オーディション番組に例えるとわかりやすい(構造は似ているので)。オーディション番組の優勝者のデビューが決まるが、番組終了後に大人の事情で取り消しになり、代わりに番組の他出演者がデビューすることになったら「あの番組ってなんだったんだ?」となるのではないだろうか。
いま、「バチェラー」ファンは、「この数カ月、なんだったんだ?」という裏切られたような気持ちを抱えている。我々は「バチェラー」を見ていると思っていたが、「人間・友永真也の恋物語」を見せられていたのだ。
「テラスハウス」を超えた「バチェラー」
アマゾンジャパンはかなり初期からこの展開をちらつかせていた。キャッチコピーで「人間むきだし。」「前代未聞」「賛否両論」とあおる。MCをつとめる指原莉乃が叫んだ「私だったら訴えます」を予告で流す。駅広告では、バチェラーと女性たちが並ぶビジュアルが張り出されているが、その中に岩間と水田だけがいない。かなりネタバレ気味だった。
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