昔のバイクはもっと軽かった……!?!? 「乾燥重量」と「装備重量」のよく分からん謎(1/2 ページ)
ひと昔前、「レーサーレプリカブーム」がありました。その頃バイク乗りだった人は……「軽かった」と言うのです。
1980年代から1990年代にかけて、レースマシンさながらの本気仕様のバイクが続々と登場した「レーサーレプリカブーム」がありました。
とにかく速く!! ……といっても、エンジン出力には、例えば250ccならば45馬力→40馬力(1992年)の自主規制があったことから、相対的に「軽さは正義」と軽量化が競争の1つになりました。
この頃のバイクに乗っていた知人が「リターンライダー」として戻ってこようとしてふと一言。今のバイクを選ぼうとスペックを眺めて「あれ、昔よりすごく重くなったんだね」と。同排気量のバイクでも、あの頃覚えていたマシンはもっと軽かった、というのです。
昔のバイクは「乾燥重量」でも競走していた
実は、この「最近のバイクは、昔のバイクより重く“感じる”問題」には2つの理由があります。
1つは、市場環境の変化によって文字通りに重量増が避けられなかったこと。厳しくなった排ガス環境規制に適合するための設計、触媒やマフラーなどのパーツで重くなったり、構造上軽いマシンを作りやすい2ストロークエンジンが消滅したり、ABS(アンチロックブレーキシステム)の装着が義務化されたり。また、そもそも設計が違いますし、「あの頃」ほど速く走ることだけを追求して装備を削ぎ落とした一般価格帯の市販車はほぼないので、安全装備や快適機能に振った分の重量増もあるでしょう。
もう1つは、「車両重量の書き方が変わった(統一された)」ことです。レーサーレプリカマシンは速さを追求したマシンであると同時に、誰にでも最新マシン、最速マシンのすごさが伝わりやすい「カタログスペックをより良く見せるためのテクニック」でも各メーカーがしのぎを削っていました。特にバイクにおいては、発生回転数は違えど出力値に上限がある(一定である)以上、「軽さ」の数字は速さや高性能を示す重要な値でした。この頃のカタログでは、重さの値は「乾燥重量」であることが一般的でした。
乾燥重量とは、ガソリンやエンジンオイルなどを空にした状態の車体重量のことです。少しでも軽い値とするためにこのやり方は次第にエスカレートしていき、ブレーキフルードやバッテリー液など、抜ける液体は何でも抜いて限界まで軽い状態で計測されるようになっていきました。
実際の「運転時」の車両重量とはどんどん懸け離れていきます。完全なウソではないでしょうが、こんな統一されていないあやふやな値ではむしろユーザーが困惑し、適性な判断を妨げることにもなります。というわけで、現在の国内メーカーの車両重量の表記は、実際に走り出せる状態で計測した車体重量である「装備重量」に統一されています(一部海外メーカーの車両にはいまだ乾燥重量で示す場合もあるようですが)。なお、この装備重量=車両重量に定員の乗員重量(1人55キロ換算)を足したものが「車両総重量」となります。
カタログ値では「20キロ以上」違うけれど、実は「あまり変わらない」
改めて「昔のバイクは軽かった!?」に戻りましょう。今回は、当時と現在で同じ車名が残っていたスポーツ系車種を一例として取り上げます。
1994年の250ccフルカウルスポーツバイク「ホンダ・CBR250RR(ダブルアール)」の“乾燥重量”は143キロでした。対して2017年に復活した現行「ホンダ・CBR250RR(アールアール)」(関連記事)の“装備重量(=車両重量)”は165キロです。カタログ値上では、20キロ以上も重くなったように感じてしまいます。150キロほどの中での20キロ差ですから、かなりの比率です。
しかし1994年のCBR250RRの重さを装備重量にすると、実は157キロです。その差は8キロほどに縮まります。現代のバイクが重くなったというよりは、昔のバイクは書き方が違っており、昔は昔、今は装備重量である、と考えるとあまり悩まずに済むのではないでしょうか。
ちなみに、新CBR250RRは4スト2気筒、旧CBR250RRは4スト4気筒。旧CBR250RRのエンジンはレッドゾーン1万9000rpm(!)なんていうウルトラ回るブッ飛んだ小排気量4気筒でした。伝説です。
当時はさらにとんがった2スト250ccレーサーレプリカの「NSR250R」もありました。こちらも、今や程度の良い中古車両はとんでもない価格で取引される、もはや伝説クラスのマシンです。
なお、近年人気の250ccスポーツバイクカテゴリーは単気筒あるいは2気筒が主流ですが、東京モーターショー2019でカワサキが「4気筒」の250ccモデル「Ninja ZX-25R」(関連記事)をドカンと発表。ニーハン4気筒の復活にバイクファンが「うぉぉ」と盛り上がりました。
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