インタビュー

「学校はタダ」だと思う保護者、その裏側で自腹を切る先生 現役中学教員に聞く「労働時間だけではない教育現場のブラックさ」(2/3 ページ)

「『自腹切りたくないです』『報われない努力はしたくないです』と言うようになったら、教育現場は終わると思う」。

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教員の自腹で「何とかなってしまうから学校のキーボードは壊れたまんま」

―― そもそもの話になっちゃうんだけど、「キーボードは使えないのに、合唱コンクールをやる」っておかしくない?

A:そこは「体育館にピアノがあるから大丈夫」という発想なんだよ。

―― でもあれ、回数少なかったよね。「体育館での練習は、貴重な機会。本番と同じ環境で歌えるんだぞ」と、メインの練習ではなかった覚えがある

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A:うん。全学年10~20くらいのクラスで利用時間を割り振って、順番で使うことになるからね。当然、それだと十分に練習できない。だから、自腹でキーボードを購入して、教室に置く教員が現れるわけ。

 そうしないと「生徒たちに必要なモノなのに、用意してないとはどういうことだ」と言ってくる保護者もいるし、合唱が完成していかないと「あのクラスの担任は指導が悪いな」みたいに、周囲の風当たりも強くなる。

B:それから、やっぱり「生徒を持ったら、その子たちにいい思いをさせてあげたい」と思うのが、人の心なんじゃないかな。例えば「隣のクラスはキーボードがあって合唱の練習ができるけど、自分のクラスは……」というのは心苦しい。自腹を切るのが良い解決方法だとは思わないけど、手っ取り早い。

A:逆に言うと、それで何とかなってしまうから学校のキーボードは壊れたまんま、というね。

教員の給与が、教育コストを“見えない形で消化”している

A:行事や部活だけじゃなくて、授業で使う教材も教員の持ち出しだったり。

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B:そうそう。最近はデジタル教材を使った授業が求められていて、「やってほしい」と言われるのだけど、機材がない。

 だから、自腹で数万円のプロジェクターを買って授業に使ったことがあるよ。自分で言うのもアレだけど、生徒からの反応は良かった。そういうことをする先生が他にいないし、黒板と違ってボタンで切り替わるからテンポもいいし。

 まあ、職員室内では全く評価されなかったんだけどね。「学校全体に関わる仕事の方が大事」という考え方が強くて、授業を頑張っても「自分のことをしただけ」みたいな。年功序列で、給与も上がらないし。

A:その反面、生徒から徴収するお金に関してはかなりシビアで、教材費の使い方も難しい。学校の教材って200~300円とかなんだけど、500~600円になると良い教材だとしても「高過ぎる」と言われてしまう。

 「学校はタダ」だと思ってる人はいまだにいるみたいで、お金を払うことにかなり抵抗を示すんだよ。その裏側では教員が自腹を切ってる。

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―― 教員の給与が、教育にかかるコストを見えない形で消化してるわけか

B:今は教員個人の努力に頼っているというか。サービス精神あり過ぎ、ボランティア精神あり過ぎで、それなりに協調性もあるから、成り立ってるんだと思う。

 もしもドライになって「自腹切りたくないです」「報われない努力はしたくないです」と言うようになったら、教育現場は終わると思う。良くも悪くもそうならず、ブラック化することでギリギリ回ってる。

A:でも、それはパンクした自転車で走ってるみたいなものだから。すでに無理やり回してるだけだということに気付いてほしい。

(続く)

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※本企画は、現役教員の声をそのまま記事化したものです。実際の労働環境などは自治体、学校などによって異なる可能性があります。

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