インタビュー

たぶん世界初の“1200キロをロードバイク・90時間で駆ける腐女子”だと思います 『弱ペダ』で変わったあるオタクの人生(1/3 ページ)

「パリ・ブレスト・パリ(走行距離約1200キロ)」を完走した腐女子・PEKOさんにインタビューしました。

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 好きなマンガがあれば、その世界に近づきたいと思うのが人の心。グッズを買ったり、聖地巡礼したり……中には人生が変わるほど、深い影響を受ける人もいます。

 今回取材した、アラサーオタク女子だというPEKOさん(@ab_peko)がハマったのは、自転車競技の世界を描いた『弱虫ペダル』(秋田書店)。腐女子として二次創作をするかたわら、ロードバイクの“沼”にもハマり、2019年8月には80~90時間内に約1200キロを走る「パリ・ブレスト・パリ(以下PBP)」を完走。「ブルベ」という種類のサイクルイベントの最高峰とされ世界各地から参加者が集まる一方、人によっては走行中に幻覚を見るほどの極限状態のなかで、制限時間と戦う過酷なものだといいます。

 『弱ペダ』から始まったロードバイクの経験はプライベートばかりか、仕事にまで良い影響をもたらしており、「今の自分があるのは『弱ペダ』のおかげだと思います」と語るほど。同作は彼女の生活にどのような変化をもたらしたのか、話を伺いました。

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『弱虫ペダル』第1巻(amazon商品ページより

(たぶん)世界で初めて「『弱ペダ』からロードバイクにハマってPBPを完走した腐女子」

―― PBP完走おめでとうございます! ちなみ、これはどんなサイクルイベントなんでしょうか

PEKOさん

PEKOさん:ありがとうございます!

 まずブルベは「制限時間内に規定距離を完走すると、認定がもらえるサイクルイベント」のこと。1年間で200キロ、300キロ、400キロ、600キロのブルベを完走すると「シューペル・ランドヌール(SR)」の称号が与えられ、これが4年に1度開催されるPBPの参加資格になっています。同イベントではパリ~ブレスト間を往復するのですが、距離だけを国内に置き換えて例えると「3~4日間ぐらいかけて自転車をこいで、日本橋~姫路を往復する」みたいな感じです。

―― 参加のハードルが高いうえに、過酷そう……!

 地元では「路上で人がいっぱい寝てるイベント」というイメージがあるとか。

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 ヨーロッパは街と街の間が草原ばかりで「ドラクエ」みたいなんですけど、夜間に避難できる場所がないので、路上でエマージェンシーシートにくるまって寝てしまう参加者がいて、鮭のホイル焼きみたいな姿で横たわってるんですよ。

 仮眠できる場所も用意されてるんですけど、「受付がタイムロス」と適当な場所に倒れてしまったり。1分でもいいから寝たいんですよ。

―― それだけハードだと、やっぱり脱落される方も多いんでしょうか

 日本からのエントリーがおそらく380人前後。女性は約1割だったらしくて、制限時間内にゴールできたのが10人強くらい。たぶんですけど“『弱ペダ』きっかけでロードバイクを始めた腐女子”が完走したのは、私が世界初なんじゃないかと(笑)。

 ちなみに、PBPは確かに過酷なんですが、参加後しばらくすると気持ちが変わるものらしくて、私も「4年後にまた走りたい」と思うようになりました。一般の方々が補給所を作ってくれたり、何百人という人に応援してもらえたり、そういった“街の受け入れ感”も魅力的なんですよね。

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