ジェンダーギャップ指数2019で集計ミス? 日本は本当は何位だったのか
「教育」の項目が不自然に下がっているという指摘が。
12月17日に世界経済フォーラム(WEF)が発表した2019年の「ジェンダーギャップ指数」。世界各国の男女格差を測りランキングにしたもので、日本は前年の110位から後退し、過去最低の121位となりました。政治参画の遅れが大きな課題になっています。
一方で、このジェンダーギャップ指数について「集計ミス」を指摘する声がSNSで上がっています。前年と比較して、不自然に大きく変化している項目があるのです。
指数は「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの大項目の男女平等をそれぞれスコアにしています(1に近いほど男女の格差がない/0に近いほど男性優位に、1を超えると女性優位に格差が大きくなっている)。4つの項目にはそれぞれ小項目が設定されています。
集計ミスが疑われているのが、「教育」のカテゴリー。日本は前年は0.994点で65位でしたが、今年は0.983点で91位と後退しています。小項目をみていくと、中等教育への就学率(Enrolment in secondary education)のスコアが下がっていることがわかります。2018年の就学率は女性100%、男性98.8%(1.000点)で1位が、2019年では女性48.8%、男性51.2%(0.953点)で128位と大きく順位を落としています。
中等教育はいわゆる中学校・高校を指しています。1年間で男女ともに中等教育の就学率がここまで大きく下がることは考えづらく(実感とも反していると思います)、おそらく集計ミスであると考えられるでしょう。
注
この項目の指標は、「中等教育の就学率」が取得できない場合、中等教育における女性比率が利用されます。今回、女性/男性の項目が足して100になることから、今回調査では女性比率を出して算出している可能性があります。その場合、「集計ミス」ではありませんが、例年基準とは違った数字をもとに算出しており、例年との単純比較ができない部分があるといえます。
では、日本は何位だったのか
ここで気になるのは、「集計ミスがなかった場合、日本のジェンダーギャップ指数は何位だったのか」という点です。ジェンダーギャップ指数は、小項目のスコアをウェイトをかけて集計し、大項目4つのスコアを算出。その4分野のスコアを単純平均した数字から順位を出しています。
2019年は、経済0.598点、教育0.983点、健康0.979点、政治0.049点の平均を出して0.652点でした。ここで、誤りであろうと思われる教育のスコアを修正して算出しなおしてみます。
教育のスコアは2018年で0.994点(ちなみに2017年で0.991点)。他の小項目(識字率、初等教育、高等教育)を見ると2018年と2019年で大きく変わっていないため、便宜的にこのスコアを使用したいと思います。
そうすると、2019年のスコア(想定)は経済0.598点、教育0.994点、健康0.979点、政治0.049点。これらを単純平均すると、0.655点に。実際に発表されたスコアは0.652点なので、0.003ポイント上がりました。0.655点は、アラブ首長国連邦と同点。順位は同率120位となりました。
一部メディアでは、「教育分野の後退も全体の順位の引き下げ要因となっている」と報じられていますが、教育分野はおそらく集計ミス(あるいは例年と別基準での算定)で順位こそ落としたものの、スコア自体は大きく下がっていません(順位が大きく変動しているのは、各国の教育分野のスコアも高水準のため)。全体順位と全体スコアに大きな影響は与えていないと考えられます。
それよりもずっと大きな影響を与えているのが政治です。4項目を単純平均するため、教育と健康の高スコアを政治がぐっと引き下げる形になっています。
「日本は政治参画と経済参画の遅れが課題になっており、順位は過去最低、G7でも最低」という主題は、集計ミスがあっても変わりはないようです。しかし、単純な検討でわかる集計ミスや不自然な点が発見されれば調査自体の信頼性が揺らぐのも事実。ミスだった場合、修正対応がされるべきでしょう。
※本記事での計算ミスがあった場合、コメント欄などでお知らせいただけますと大変ありがたいです
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