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平手友梨奈はなぜ渾身の「僕は嫌だ」を披露できたのか 紅白リハーサル取材で見えた欅坂46の謙虚・優しさ・絆第70回NHK紅白歌合戦(3/3 ページ)

【画像57枚】欅坂46の伝説がまた1つ生まれた。

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 パフォーマンスではまず、クレーンカメラを使って床に伏せたメンバーたちの姿が映し出されました。イントロに合わせてゆっくりと立ち上がった平手さんは、音楽に合わせてステージ前方に張り巡らされたタータンチェック柄のレーザー光線を右手のこぶしで突き破り、2019年の活動の集大成ともいえる「不協和音」のパフォーマンスがスタートしました。

 メンバー全員で陣形を整えた後は、胸を大きく前に突き出すアイソレーションを行いながら、前進。“撃たれる”動きでは小林さんの鬼気迫る表情と小池さんの無機質な表情が映し出されたほか、前回は“葵やぐら”を披露した原田葵さんの大人びた表情には2年という確かな歳月が流れたことを感じさせられます。

 また左右のメンバーがそれぞれブロックごとにダンスを披露するパートでは尾関梨香さん、土生瑞穂さん、石森虹花さんがダイナミックな動きで魅せる一方、表現力に定評のある佐藤詩織さん、齋藤冬優花さんがしなやかな動きで会場を魅了していきます。「見て見ぬ振りしなきゃ仲間外れか」の場面では中列の井上梨名さん、武元唯衣さん、梨加さん、守屋さん、理佐さん、小林さん、藤吉さんが息の合った腕の動きを見せ、1期生、2期生の垣根を超えた“団結力”が光りました。

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 そして「Oh! Oh!」とメンバー全員でサビに向かって盛り上げる場面では、平手さんが天を見上げて大きく咆哮。左耳からイヤーモニターが脱落してしまうほどの激しさで“苦しみ”の感情を表現し、田村さんが渾身の「僕は嫌だ」を放って、平手さんの腕を大きく振り払いました。続く平手さんを中心にサークル状になって踊りながら移動していく振り付けでは、尾関さんが左足をくじいて転倒するも、瞬時に立ち上がってジャンプする動きにつなぐなど、プロ根性を見せ、激しく踊り続けました。

 そしてリハーサルで何度もタイミングを計っていた“倒れこみ”では、しなやかな動きで倒れこんだメンバーたちが“新しい世界”へ向かって立ち上がり始め、真っ赤に染まったNHKホールには、平手さんの泣き声交じりの「僕は嫌だ」が響きました

 これを契機にメンバーたちは完全に覚醒。歯を食いしばりながら全身全霊で楽曲のメッセージを伝えようと踊り続ければ、終盤に向けての間奏では、平手さんがまっすぐに前を見据えながら口角を上げ、天を見上げながら不敵な笑み。

 最後の逆三角フォーメーションは、右後ろにいる田村さんが平手さんの肩を掴み、田村さんの手を平手さんが両手で包み込むという新たな振り付けで締めくくられました。

 パフォーマンス終了後、内村さんは間髪入れずに「よくやった! 素晴らしかった! “新不協和音”だ!」と絶賛。会場からは惜しみない拍手がわき上がりました。

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菅井・守屋・田村が平手に向けた見えない優しさと気遣い

 欅坂46にとっては4度目の出場となるNHK紅白歌合戦。パフォーマンス直後にはTwitterのトレンドに「欅坂46」「不協和音」などのキーワードがトレンド入りを果たし、日本中に大きな衝撃と感動を与えました。

 そしてこのパフォーマンスに至るまでには、音合わせ、リハーサルで謙虚なメンバーそれぞれが少しずつ小さな優しさと気遣いを持ち寄る姿が垣間見えました。取材で印象に残った部分を抜粋して紹介します。

 両日の取材を通してパフォーマンスのリハーサルでは移動を完璧にこなすものの、少し歩きにくそうなしぐさを見せていた平手さん。一部メディアで「よろめいて右手をついた」と報じられた30日のリハーサルに関しても、筆者には実際には痛めていたことのある腰やひざなどに負担をかけないよう、あえて右手をついてそーっとしゃがみこんだように見えました。

 そうした様子をもっとも気にかけていたのは、キャプテンの菅井さんで、リハーサルの合間にスタッフが平手さんのヘッドセットを調整する様子を後ろから静かに見守ったり、リハーサル終了時にパフォーマンスの余韻から5秒ほど立ち上がるのが遅れた平手さんの背中をさすって立ち上がりやすいように促したりと、静かに思いやる姿が見られました。

キャプテンとしてメンバーを思いやっていた菅井さん

 副キャプテンの守屋さんも菅井さんと同じく平手さんを含めて周りのメンバーの様子をよく見ており、30日のリハーサル終了時には一旦ステージから退場しようとしたものの、平手さんが立ち上がっていないことに気づくと、Uターン。平手さんがしっかりと立ち上がる様子を見守ってから舞台を降りました。

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 また菅井さん、守屋さんはともに、スタッフや報道陣にも積極的に笑顔で会釈をしたり、話しかけてくださったり、リハーサル終わりにも改めて深くお辞儀をしたりと、メンバー以外への気配りも完璧で、こうした対応からも4年間の活動での成長が見えました。

不協和音でこの表情が出せるのは守屋さんならでは

 トークの面ではキャプテンの菅井さんに助け舟を出した小林さんと土生さんの対応が印象的でした。小林さんは答えやすいとは言いにくい質問にも落ち着いて笑顔で回答をしたほか、土生さんは乃木坂46の「シンクロニシティ」のパフォーマンスに参加することについて問われると、“ハモれ”というキーワードを用いてユニークな回答。日々のブログ更新や冠番組での積極的な姿勢が着実に実を結んでいると感じました。

 そして今回の紅白歌合戦で最も話題になったであろう、田村さんと平手さんの活躍について。

 田村さんは2期生ながら、「僕は嫌だ」の大役を任された21歳。現在高校3年生(18歳)の平手さんとは、お互いに敬語は使わないようにするなど、仲の良さが知られています。そんな田村さんは30日のリハーサル、31日の本番ともに、パフォーマンス終了後、平手さんの頭をぽんぽんっとなでるしぐさを見せました。筆者にはその動きが平手さんにとって“不協和音の僕”から“平手友梨奈”に戻るきっかけになっているのではないかと感じられたほか、本番では平手さんの手をギュッと包み込んでいる様子が感動を誘いました。

 そんな田村さんは紅白の本番終了後も立ち上がりづらかった平手さんを気遣って、菅井さん、理佐さんと共に支えながら退場したと報じられており、紅白歌合戦という非常に緊張と重責がのしかかる場面でも、人を思いやれる優しさを持ったメンバーであることが伝わった気がします。またこうしたメンバーそれぞれの支えが、紅白本番での欅坂46渾身のパフォーマンスを引き出せた要因の一つになっていることは言うまでもありません。

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平手さんを抱きしめる田村さん

 平手さんについては、本番のパフォーマンスが何よりも雄弁だと思うので、それを見ていただくのが一番いいと思いますが、リハーサル時に関して言えば、音響スタッフから声をかけられると「はい、大丈夫です」としっかりと目を見てうなずいたり、リハーサル終了後にはスタッフや報道陣に向けてしっかり深いお辞儀をしてから退場するなど礼儀正しい姿が印象的でした。

田村さんと菅井さんに促されたあと、立ち上がり
スタッフと報道陣に向かって深くお辞儀

 どこか身体を痛めている雰囲気ではあっても、パフォーマンスではそれを感じさせないこと、移動等で報道陣の横を通る際にはあらためて深くお辞儀することをやめないなど、いじらしさを感じる部分もありました。また心配されていた本番後の体調についても、大きな問題はないようで欅坂46公式Twitterにて1月1日深夜に投稿された画像には田村さんの頭にクラッカーのテープを乗せておどける平手さんの姿が写っており、ファンからは安堵とパフォーマンスへの称賛の声が上がっています。

 平手さんは“センター”という立ち位置から、何かと注目される立場でもあり、今回の「不協和音」のパフォーマンスについては誰よりも緊張していたと思いますし、色々な意見を言う人も居たことでしょう。

 ただ本番での「私たち、絶対に負けないんで」というような強い目力、限界を超えた先から“楽曲のメッセージを伝えよう”とする姿勢には多くの人が胸を打たれ、“不協和音の僕”の強さ、楽曲の真の意味を広く伝えられたことと思います。本当に素晴らしいパフォーマンスだったので、きちんと自分をほめてあげてほしいと思います。

現場にはTAKAHIROさんをはじめ、SOLでもおなじみのマネージャーさん、運営の今野さんなどチーム欅坂が集結し、欅坂46のパフォーマンスを支えました。スタッフの皆さまも本当におつかれさまでした……!

取材を通して

 今回が2回目の「NHK紅白歌合戦」取材となった筆者。日が昇る前から長い取材待機列を作る報道陣の中には欅坂46の話題に触れる人が少なくなく、リハーサル開始前から注目度の高さが伝わってきました。

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 中には音合わせ、リハーサル時のパフォーマンスのクオリティーに言及する記事も存在しましたが、個人的な見解としては、この4年の活動を通して欅坂46のメンバーが「大切なのは本番で全力でやり切ること」だと学んだのではないかと感じました。

 欅坂46は“2019年末最も忙しいアイドル”と言われるほどスケジュールが詰まっていることに加え、リハーサルでは番組演出の確認のために何度も同じ動きを繰り返す可能性があることから、運動量の多い「不協和音」のパフォーマンスを毎回全力でやり切るのは難しいと思うのです。またそもそもフルスロットルでリハーサルに臨むアーティストというのはかなりまれな存在です。

 そして紅白のリハーサルは全ての演出が公開されているわけではなく、「完全非公開」「撮影禁止」というアーティストも珍しくないため、欅坂46のリハーサル取材・撮影が許されていたこと、囲み取材に応じてもらえることは大変ありがたいと感じていましたし、本番では見る者全てに「すごい」と言わしめるような爆発的なパフォーマンスを披露して、不安感を煽る声も一蹴したのではないかと感じます。

 欅坂46の活動に注目し、取材し、勝手に見守っているつもりでいる筆者ですが、パフォーマンスを見るたびに解釈が変わったり、「こういうメッセージもあるのだろうか」と考えさせられるグループはそうそういません。

 例えば今回の紅白では最後の逆三角形のポージングについて。2017年の楽曲初披露から2019年9月の東京ドーム公演までは、平手さんの右手と左手は離す構図でエンディングを迎えていたのですが、今回の紅白では平手さんが田村さんの手を握り締めることにより“完全につながった三角形”となりました。

欅坂46、初の東京ドーム公演での「不協和音」(関連記事より)
てちほのの頭ぽんぽん

 この陣形の意味は何なのか。濃紺から深紅に染まった衣装は何を意味しているのか――。2020年の欅坂46の活躍に思いをはせながら、まだまだ紅白歌合戦のパフォーマンスを楽しめそうな気がします。

チーム欅坂の皆さまの関連ツイート

第70回NHK紅白歌合戦

 総合司会はウッチャンナンチャンの内村光良さんと、NHKの和久田麻由子アナウンサーで、紅組司会は綾瀬はるかさん、白組司会は嵐の櫻井翔さんが務めました。番組のテーマは「夢を歌おう」で、本番は12月31日19時15分から23時45分まで放送されました。

(Kikka)

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